情報 謎の龍神1
「実は……」
蛭子は咳払いをすると、小声で栄次に話しかけてきた。周りも竜宮の謎を知ってしまい、やや動揺しているのがわかる。
「近々、あの龍神を外に出す予定なのだ。ずっと話し合いをしてきて、龍雷が決断をした。戦闘が予想されるので、栄次殿の力を貸してほしい」
「なんだと……」
「いままでの貴方達の動きはわかっている。オーナー天津彦根も黙認してきた。龍雷が貴方達の動きを見て、自分に決着をつけたいと言ってきた」
蛭子の発言に栄次だけでなく、ヤモリもおはぎも驚いた。
「ま、待って! 全部知っていたの?」
ヤモリが焦りながら尋ねた。
「ああ。天津が知らないわけがないだろう。神力が途上な亀神がいたら気づく」
「お、おおお……」
おはぎはそれを聞いて固まった。
「あの邪龍らしき龍神を外に出してどうするのか知らないけど、ヒメちゃんは……どうするの?」
ヤモリは蛭子に尋ね、蛭子はかぶっていた帽子を直すと前を向いた。
「剣王タケミカヅチとは話がついている。あの少女にすべてを話し、協力してもらうつもりだ。今……タケミカヅチと話しているはずだ」
「ヒメちゃんが業務の理由ってそれだったんだ……」
おはぎが小さくつぶやき、不安げな顔を見せる。
「詳細はまた……」
蛭子はアレやヤスマロに目配せをすると、集まってきた龍神達、お客さんを避けながら去っていった。
「歴史の記録をまたとるんですかね?」
ヤスマロが蛭子が去ってからアレに目を向けた。
「どうなるんでしょうね……」
「……スクープになりそう! ちょっと準備しに帰ろう! あ、そういえばクリスマスじゃん! パパにレストラン連れていってもらおう! 竜宮のスペシャルメニューを毎年食べに来てるの! 準備はその後に」
エビスがヤモリ達に笑みを向け、目を輝かせた。
周りも徐々に元に戻って行き、クリスマスのBGMも鳴り始める。
「エビスお嬢、今日は海外の神様も竜宮のクリスマスを楽しみにいらしているようです。そちらの取材を本来任されているのでは……」
アレがそう言い、エビスは思い出したように慌て始めた。
「そうだ! そうだ! ノルン姉妹と遊ぶんだった!」
「忘れていたのですか! 自分から遊ぶ連絡していたのに?」
アレに突っ込まれ、エビスは苦笑いを向けつつ、おはぎ達に手を振るとすごい早さで駆け抜けていった。
「あー……その、では、私達はこれで……」
ヤスマロが困った顔のまま、頭を下げてきたので、おはぎ達はとりあえず挨拶をして別れた。
「エビスお嬢! 待ってください!」
アレとヤスマロはおはぎ達が何か言う前に去っていった。
「……なんというか……アレとヤスマロ、大変だなあ……」
ヤモリがあきれた声を上げ、一同は頷きながら本題の話を始めた。




