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大鳳は救いたい  作者: 敵機直上急降下


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大鳳が伝えた物③

大鳳が伝えた物③


1933年3月。三陸地震によって起きた津波により、各地に大きな被害が出ており、本州最東端の地にも大きな船が打ち上げられていた。

打ち上げられていた大きな船は、船首に菊の御紋がある事から海軍の船と分かり、すぐに海軍へと知らせがいった。


すぐに駆けつけた海軍であったが、そこにあった船は確かに日本海軍の艦艇の空母のようではあったが、所属不明であり建造した事もない空母であった。

その空母の側面には、多数の魚雷を受けたような生々しい痕跡があり、この空母が戦闘の末に一度沈没したであろう事が窺えた。


内部を調査すると海水に塗れており、やはり沈没していた事が判った。

遺体も発見され、あまり日数が経っていない事も判明した。


資料室という水密性の高い部屋を見つけ、その中に海水に塗れていない膨大な資料を発見した。

資料は系統立てて分類されており、最初に見るように記されている物があり、そこには1944年6月の海戦でこの空母が沈んだ場合、1933年3月にそちらへ行くであろう事が書かれていた。


この空母の名前は大鳳であり、既に二度過去に戻っており、この艦はその鋼材を鋳潰し建造に用いた三代目の大鳳であるというのだ。


俄かには信じられない事なのだが、膨大な資料の中にはこれからの国内外で起こる事が記されており、艦自体も重要なのだが資料の重要性が極めて高く、最優先で運び出され精査された。


結果、海軍だけでは手に余ると判断され、内閣及び国の重鎮達にも共有される事になった。


大鳳の艦内で発見された遺体は手厚く葬られ、大鳳は隠蔽され、艦を覆う調査解体が可能な建屋が建設される事が決定した。

その工事は大規模であったため、津波の被災地の復興に一役買う事になった。


資料室にあった膨大な資料の中には様々な技術情報があり、日本の技術力を飛躍的に伸ばす事が期待された。

各種兵器の設計図もあり、現状の技術力でも再現可能な物も含まれていた。


差し迫った問題として国際連盟脱退があったが、これは避けようがなく日本は正式に脱退したのだった。


また、満州事変などで独断専行が許された事から、今後起こるであろう支那事変が制御できない物になるとして、改めて独断専行を行った者達が処分される事になった。

処分とはいえ高位の者もいたため、軍高官は十分な説得がなされ、戒告処分の上で予備役編入となった。


大鳳がもたらした情報によると、今後は電子戦が主流になる事が分かり、三代目大鳳の世界で成功したとされる、ラジオの普及による安定した真空管の製造が目指される事になった。設備投資が盛んに行われるようになるのだった。

また、さらなる真空管需要を高めるため、テレビへの投資も行い、テレビ放送の実現へ向け動き出した。


資料によると、対米戦争の後半に潜水艦による通商破壊の被害が深刻になるとあり、対潜戦闘の研究を始める事になった。

効果があったとされる、航空機搭載の磁気探知機の研究開発にも取り掛かり、さらなる性能向上が目指された。


対潜哨戒任務には水上機の活躍もあったとされており、大鳳がもたらした設計図を基に水上機開発が進められ、それを搭載する水上機母艦が建造される事になった。

大鳳がもたらした情報を基に、より洗練された千歳型水上機母艦が計画され、通商路防衛の観点から複数建造が計画された。


相沢事件や二・二・六事件は発生を未然に防ぐ措置が取られ、要人警護の重要性が認識され、警察に新たに要人警護の部署が創設された。

今後、五・一五事件のような事件が起きても要人を護れるよう対策されていった。


打ち上げられていた大鳳は解体調査が行われ、その戦闘の痕跡から装甲空母としての役目を十分果たした事が判った。

詳細な大鳳の設計図もあった事から解体作業は順調に進み、鋼材は鋳潰され四代目大鳳建造に用いられる事が決定した。


もちろん電装品や兵装、損傷していた航空機は運び出され、設計図はあったものの貴重な現物の資料として調査研究が行われた。


ロンドン海軍軍縮条約からはやはり脱退し、今後来るであろう戦乱の時代に備える事になった。

大鳳がもたらした技術情報や設計図は造艦の分野もあり、軍縮条約開けに建造する予定の艦艇に影響を与えた。


四代目大鳳は、軍縮開けに建造される事が決定した。

本来なら翔鶴型空母2隻を建造するはずであったのだが、大鳳型装甲空母が建造されていく事になった。


大鳳がもたらした情報により、支那事変へ至るであろう事件を未然に防ぐよう日本は動いていたが、情報に無い事件が起こっていき、結局は支那事変へと至ってしまうのだった。

新聞報道や一部議員が支那事変を煽り立て、対支一撃論が語られており、政府はこれらに冷や水を浴びせるべく、大鳳のもたらした情報から捜査の進んでいたゾルゲ諜報団を逮捕させた。


ゾルゲ事件でソ連の諜報活動が明るみになり、ソ連の思惑で国民党と戦わされていたと日本国民の知るところとなった。

また、首相候補にもなった貴族院議員の側近に、ソ連の諜報員が入り込んでいた事が判り、支那事変を煽り立てていた者達はおとなしくなっていったのだった。


しかし、支那事変は既に始まってしまっており、国民党と講和するにもある程度のところまで戦わなければならなかった。

大鳳のもたらした資料にあった、南京占領と国民党政府の撤退の情報から、南京を包囲し講和交渉を行う事になった。


ゾルゲ事件で日本は譲歩しやすい国民感情となっており、ドイツも仲介を申し出ていた事から、日本と国民党政府は講和が成立したのだった。

日本は譲歩しながらも支那事変を解決し、ソ連に備え軍備を整えていくのだった。


日本は大鳳がもたらした情報から、今後の方針を米英との戦争回避と定めていった。

資料によると、ナチスドイツは信用ならない政権である事が分かった。現に日本と防共協定を結んでいるにもかかわらず、国民党に支援を行っていたのだ。


さらには、防共協定の対象であるはずのソ連と独ソ不可侵条約を結び、共にポーランドへ侵攻し、後にはドイツ自らそれを破りソ連へ進攻するのだから信用できるはずがなかった。

友好関係を築くなら、民主主義国家である米英が望ましいとなった。


満州の防衛力を高めソ連に備え、南樺太も同様に防衛力強化を行い、戦闘車両の配備を進めると共に、大鳳がもたらした資料から研究開発した携帯式対戦車擲弾発射器を大量生産し配備していった。

航空隊も少数精鋭から、一定水準の操縦者や搭乗員を十分に確保する方針へ変更していった。


支那事変を解決し、ある程度利権を得た日本は好景気になっていた。

欧米との関係も改善しつつあり、特にイギリスとの関係改善に努めた。


大鳳がもたらした資料により、航空機や戦車の開発も進んでいた。

さしあたって、満州とソ連の国境紛争に向け整備が進んでおり、1939年に正式採用される航空機が揃い始めた。


戦車は、大鳳がもたらした資料には設計図はなかったものの、今後の戦車がどう進化していくのかが記されており、独ソの戦車の情報がある程度分かった。

それに対抗する戦車を研究開発しているのだが、まだ実現していなかった。


航空機は、エンジンや機体の開発元に情報が提供され、既に創意工夫された資料がある事から各種エンジンの開発が進み、高性能な航空機の開発に繋がっていた。

九九式戦闘機、九九式襲撃機、九九式艦上戦闘機、九九式艦上爆撃機、九九式艦上攻撃機、九九式艦上偵察機などなど満州での国境紛争を見据え整備が進んでいった。


九九式戦闘機・九九式艦上爆撃機・九九式艦上偵察機はアツタエンジン、九九式艦上戦闘機・九九式襲撃機は金星エンジン、九九式艦上攻撃機は火星エンジンをそれぞれ搭載している。

九九式襲撃機は、ソ連のIl-2を参考にした襲撃機の設計図を基に開発生産された機体で、非常に高い防弾性を備えていた。


アツタエンジンの資料は愛知と川崎に提供され、共同で研究開発改良を行っており、安定生産に漕ぎ着けていた。

ジェットエンジンは陸海軍で共同研究開発が進んでおり、さらなる性能向上が目指された。


大鳳がもたらした資料にあった鍾馗や雷電は、共に高速な迎撃戦闘機であったため、どちらか一方に絞る案が出たのだが陸海軍で意見が分かれ、どちらも開発される事になった。

鍾馗も雷電もさらなる火力を求められ、大鳳がもたらした資料にあったエリコンFFL20mmを基に作られた、30mm機銃を高初速に改良して採用する事になった。


鍾馗も雷電も30mm×2か20mm×4を選択できたが、20mmは陸軍が軽量なホ5を開発採用し、海軍はエリコンFFLのライセンス生産品を採用していた。

鍾馗は誉エンジン搭載で30mm機関砲2門を搭載できるよう開発し、防弾性能が高かった。雷電はアツタエンジン搭載で同様に30mm機関銃2挺搭載できるよう開発し、高高度性能が高かった。


鍾馗も雷電も正式採用は1940年になる予定であった。

重防御の爆撃機迎撃での活躍が期待された。


日本は大鳳がもたらした情報を基に、ソ連との戦争に備えつつ、米英との戦争回避を目指し行動していった。

満州での国境紛争、独ソのポーランド進攻、独ソ戦。これらは確実に起こる事として想定し、戦略を立てていくのだった。

お読みいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
>>結果、海軍だけでは手に余ると判断され、内閣及び国の重鎮達にも共有される事になった。 ここまで長かったなぁ 三周目はそこそこいい感じなのにまだ大鳳は満足しないのか
やはり巻き戻ったのね。 今回はうまくいくのかな
興味深く読んでます。 今回は翔鶴型がキャンセルされて大鳳型が量産されるのか。 いっそ大和か武蔵か信濃もキャンセルして六万トンクラスの超大型装甲空母にならないかな?
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