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急いで隣の部屋まで行き、ドアをノックする。
「玲!いるー?」
そう言うと、少し慌てている様な足跡が聞こえ、ガシャっと鍵を回す音が聞こえ、ドアが開く。
「ふ、斧剛さん!?ノックでは無くインターホンを押していただければすぐに出ますので次からはそれでお願いします!」
「ありゃ?………あ、コレ?」
ドアのすぐ近くに備え付けてあったボタンを押す。
ピンポーンと音が鳴った…おぉ、凄え。
「あの…今では無く、……まぁいいです、それで私に何か御用でしょうか?用があったのなら電話で連絡していただけたら私から向かいますよ?」
「あ、そうそう!玲!今から出掛けようぜ!」
そう言うと、玲は少しの間ポカンとしていた。まるで俺の言ったことが理解できず耳から反対の耳まで通り過ぎて行ったかの様。
「……ハッ!、すみません、少しぼーっとしてしまいました…それで何処に行くんですか?」
どうやら俺が何処かに行きたいと思っているらしい……あ、そうだ!何処に行けばいいんだろう…。
玲の好きな物を作ると言っても、いきなりその場で好きな物はなんだ?と聞くのは話の流れ的におかしいのは俺にも分かる。きっと戸惑ってしまうだろう。
自然に玲の好きな何かを聞くためにはどうすればいいんだろう…。
「………あー、えっとー…」
「?どうしたんですか?…あ!ずっと家に居るから息苦しくなったんですね!斧剛さんは元々自然豊かな場所に住んでいたって言いますし…そういう所に行きたいんですか?」
「へ?あ!そうそう!ハハハ、流石玲!俺の事分かってるなぁ」
なんだか少し勘違いしている様だが、俺になんの案もない以上乗っからせて貰う。
「はい!私は斧剛さんの護衛官ですので…んー、そうですね…ここの近くに自然公園があるのでそこに行きますか?恐らくですけど元々斧剛さんが住んでいた環境に少しは近いと思いますが…」
「そうなの?じゃあ行こうぜ!」
「はい、徒歩で十分程で着くと思いますよ。…あ、すみません…少し格好を変えるので数分ほどお待ちしていただけると嬉しいのですが…大丈夫ですか?」
そう言われ、改めて玲の格好を確認する。
恐らく部屋着であろうその姿は、いつものキッチリとした制服とは違い、少しもこもこしている格好をしている。
そういえばなんだかんだ玲の服は初日のスーツか、制服以外見たことなかったからなぁ…私服が見れてある意味新鮮だ。
「へぇ、あんまり服のことは分かんないけど似合ってると思う。もこもこであったかそうだな」
「あ、ありがとうございます…実はこういう服を着るのが趣味でして…あ、申し訳ありません!外で待たせてしまう所でしたね、中に入って下さい」
ん?今から着替えるのにいいのか?………もしかしてテンパってる?
「いや、玲、今から着替えるんだから…」
「ハッ!そうなるとお茶をお出ししなければ!あ、中に入ってもらって大丈夫です!ソファがありますのでそこで座って待っていただいてもよろしいでしょうか?」
「あ、うん」
なるほど…また違う一面を見てしまったな…。
──────
「お邪魔しまーす…」
ドアを開けるとそこにはキチンと家具やら物やらが整えられていた……玲はそういうのしっかり整理してそうだからな、納得である。
「斧剛さん!すみません、粗茶ですが…」
「あ、大丈夫っす…」
さてさて変な語尾になってしまったが…今思ったがこれはもしや友人の家に遊びに来ている!…という状況ではないか?
そう思うと少し緊張してしまう…ウ゛なんか心臓がうるさい…。
ズズッと玲が用意してくれたお茶を啜る…玲はお茶を出した後、恐らく洗面所に行った。今着替えているんだろう。あ、このお茶美味い。
そのままお茶を啜っている時にふと思い付く。
「あ、この部屋を見て玲の好きそうな物見つければいいじゃん!俺あったま良い!」
会話の中で聞き出せれば良いが、それに失敗したらどうしようもない…今ここで玲の好きそうな物を見つければ、後々失敗しても挽回できるはず!
キョロキョロと周りを見る。するととあるキャラクターのぬいぐるみやら、グッズなどが複数あるという事に気づいた。
……あれは確か最近人気のキャラクターだった筈…名前は覚えていないけど、テレビでそのキャラクターが出てきた時、綾姉も可愛い!と言っていたのを覚えている。
ん?そう言えば玲遅いな?着替えるなら多分もう着替え終えている筈……。
そう思い、後ろを見ると、先程までのもこもことした格好ではなく、動きやすそうな服を着ている玲が口を少し開け、ぴくぴく震えていた…顔が真っ赤にして。
その時脳裏に綾姉の言葉が過ぎる!
『剛君!あんまり女の子の部屋を見ちゃダメだよ?恥ずかしいんだから!』
『いや、綾姉、もう女の子ってと………』
『それ以上言葉を続けると、明日の宿題を百倍増やすよ?なんならもう十倍に増やします』
『あ、ごめんなさい、勘弁してください………』
その後の宿題大変だったなぁ…本当に山の様に積んであったし。
「あぁぁ!あの!斧剛さん?その、そんなジロジロと部屋を見られると…そのぅ…少し恥ずかしいです…」
玲が本当に恥ずかしがっているところを見て、意識が戻った…いかんいかん。
「ハッ!ご、ごめん!確かにキョロキョロ見渡すのはマナー違反だよな、すまん…」
「い、いえ…その…急な来客でしたのであまり部屋を掃除してないので…」
「え?いやいや、めっちゃ綺麗だと思うぜ、俺の部屋の十倍は片付いてる、あとお茶が美味い」
「そ、そうですか?お目を汚されてない様でしたなら良かったです…あ、私の準備は完了したので、あの剛さんが良かったら出発しましょう!」
あ、そうだ、元々の話だと公園に散歩に行こうという事だった…なんでこんな脱線したんだ?」
「ん、そうだな…このお茶を飲み終えたら出発するか…あ、玲はお茶飲まないの?美味いよ?…って出したの玲か…」
何を馬鹿な事を言ってるんだ?俺…、はぁ……友人という関係の距離感が掴めない。
「いえ、私はそこまで喉が渇いていませんので」
なるほど、つまり俺待ち…なるべく速く飲もうとするが、お茶が熱くてそこまでペースを速くできない…俺は猫舌なのだ。
結局、玲の家を出たのはそこから五分経った後であった…。




