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掃除が終わり廊下に出る、今日は園芸部に初めて行く…つまり!初めての部活動…楽しみだ…。
るんるん!とした気持ちで廊下を歩いていると、女の人…多分上級生?にぶつかりそうになる…。
というか俺の勘違いじゃなければむしろぶつかりに来ているように思える…まぁ俺はここから避けれるんだけど。
スイッ!と横に避けるとその女の人は転ぶ…えぇ…。
「いたーい!!…あぁ、足を汚しちゃったわ!ちょっと!そこの貴方?責任とってくれる?」
「いや、俺避けたじゃん、勝手に転んだのになんで俺の責任になるんだ?」
いや…都会だとそうなのだろうか…少し心配になり玲の方を見る。
玲は目をスッと細くし周囲を警戒している…おっと?何やら不穏な雰囲気。
「いーや!貴方が原因で転んだのだから貴方の責任よ…でもそうねぇ…私達にちょーっと付き合ってくれるのだったら許してあげるわよ?」
そう言うと周囲からどんどん人が集まり、俺達を囲う。ひぇ!?怖すぎる…。
俺が情報量の多さにおどおどしていると…。
「いえ、斧剛さんはぶつかりそうになったのを避けただけです。むしろ私の目からは貴方がぶつかりに来たように見えました…無理矢理因縁をつけるのを止めていただけないでしょうか?」
「チッ!あんたはお呼びじゃないんだよ!私達はそこの転入生がいればいいんだから!」
「私は斧剛さんの護衛官です…斧剛さんの危険は全て防ぎます…さっさと道を開けてもらえないでしょうか?でなければ強引に通らせていただきますけど」
玲があの人の相手をしているうちに少し冷静になった。
今俺達は周囲を囲まれており、逃げ場がない状況だ…後ろには窓しかないし、他の通路も人がいっぱいで通れない。
どうするかと頭を悩ませていると…なんだろう?奥の方から走る音が聞こえる、今は人の壁で見えないがこちらに向かっている様に思える。
「この人数に勝てるわけないだろ?怪我したくなかったらさっさと消えな!」
「退いては貰えませんか…それでは強引に………」
「……………ごらあぁぁぁ!!!」
「ゲッ!ヤバっ!」
人の壁を無理矢理押し退け、鬼の様な怒声をあげてこの場所に来たのは……なんとビックリ!担任の都築先生だった。
「はぁ……はぁ…おい?佐藤、お前言ったよな?次強引に迫ったらどうなるか…」
「い、いやぁー?うん、無理矢理迫ってないよ?ちょーっと誘っただけで……」
さっきまで強気だった先輩も萎縮してしまっている…うん、あんなドス利いた声で言われたらビビっちゃうよなぁ。
「こんな大人数で囲って?誘う?はっ!惚けるのいい加減にしろよ?佐藤…それと他の奴も、取り敢えず他の奴は解散させてやるからもうすんなよーって主任!何やってるんですか!?こんな所で!」
どうやら集団には幾らか教師が混じっていたらしい…大丈夫か?ここの教師。
「い、いえ!都築先生私達は彼女らを止めようと…」
「いや!大丈夫です言い訳は後で聞くんで、あーあ!私は悲しいですよ、生徒もダメですけど、教師もたった一人の男の子に向かって…あぁ!もう恥ずかしい!本当に恥ずかしい!」
そう言われ他の先生達は顔を赤くして黙る、そら何も言い返せないよな。
「はぁー…取り敢えず佐藤以外の生徒は解散、先生方は転々後で職員室に全員集合してください…佐藤は生徒指導室に来い、逃げたらわかるよな?」
「はぃ……」
さっきまであんなに強気だった先輩も都築先生には弱いらしい…あれよこれよと話が進み人だからはほとんど消えた。
「大丈夫だったか?怪我はしてない?」
「う、うっす!」
先程のドスが効いた声を思い出して少し萎縮してしまう…いや、俺を助けてくれたって事は分かってるけどね?
「ん?そんな怖がんなくてもいいよ、何も悪いことしてないんだし…それにしても佐藤が悪かったね、あいつ常習犯なんだわ」
「そんな人が何故退学にならないのですか?普通男性を襲ったら警察が黙っていないですよ、それにあの先生方もなんで佐藤って人に従っていたのですか?」
玲が立て続けに都築先生に聞いていく。
「佐藤の家は所謂名家って奴でな、普通あいつの家に意見なんて言えないんだよ。学校もあいつの家から結構援助貰ってるらしいし」
「………それで警察も機能しないという事ですか…」
「そ、それで誰も止めないもんだから佐藤も助長しちゃってさ…こんな風に大人数で囲ったりするようになった。で!それを私がこらっ!て叱って少しずつだけど自分を変えるようになったってわけ…まぁ、まだ子供だからね間違えるのも仕方ないかもしれないかなぁ…あ、他の教師陣は除くけど」
絶対こらっ!てだけじゃない…ゴラアァァ!!!でしょ、絶対……。
しかしそうなると疑問が生じるな。
「なんで先生はそんな佐藤先輩を止めたんですか?」
俺にはよく分からないが、都会の人はこういう権力者には逆らえないと綾姉に教えてもらったことがある。従わなければ職を失ってしまうと、職が無いと生きていけない都会の人にとったら死活問題だ。
「ん?だって先生ってそういうもんだろ?」
ごくごく自然に、当たり前の様に言う。
「私は別に子供に間違えるなとは言う気はないんだ。間違える事は誰にでもある。でも大事なのは間違えたままにしないって事だと思う。極論何事も間違えない様な子供がいるんだったらそいつにはもう教師はいらない、だって意味がないからな…間違えて、迷ってる子供を導くのが教師の仕事って私は思っているからな」
ちょっとくさい事言ったかな?と恥ずかしがってはいたが、俺にはその生き方が尊く見えた。
田舎から出てきて何も持っていない俺とは違い、自分の大切な何かを持っている先生が眩しいとすら感じた。
「あ、もうお前らは帰っていいぞ、私はこいつを説教しなきゃいけないからな」
「分かりました…斧剛さん行きましょうか」
「お、おう…先生、さよなら」
「うん、明日も元気に来いよー」
そのまま先生と別れ、玲に着いている途中にふと後ろを振り返ってみると。
「おい、この前聞いた二度としませんって答えは何だったんだ?え?」
「い、いやぁー…学校の外では二度とやらないと…」
「ほぅ?そう言ってたなら私が悪いな…本当にそう言ってたならな…あーあ、この前次はないとも言ったんだけどな…あまり私を怒らせるなよ?」
「すすすすみません!嘘です、言ってないです!出来心だったんです!許してください!!」
「お、偉いなぁ、ちゃんと謝れるとは…しかし私が次は無いと言ったことも事実だし…うし!じゃあ停学は勘弁して二週間のトイレ掃除で勘弁してやる」
「えぇー!なんで私が…」
「あ?なんか言った?」
「いえ…なんでもないです…」
やっぱ怖ぇ…眩しく見えたのは勘違いだったかもしれないな…。
前を向き、少し後にいる玲についていくのだった。




