第31話 人さらいの最期
通路に倒れたままの代理人を尻目に、俺は次の行動に移る。
「みんな、早く来い!」
「わかった!」
俺の指示に従って、エリスたちは奥に向かう。
急いでいるため、代理人を踏み潰していく。
そのたび「げほっ」と、代理人のうめき声が漏れる。
「ダーリン、魔物の群れが来ます!」
遠くに魔物の群れが見える。
「エリス、子供たちの避難を急いでくれ!」
「アルト君は?」
「俺は、みんなが避難するまでの時間を稼ぐ!」
「わかった、無茶をしないでね!」
迫り来る魔物は、ジャイアントラットだ。
「縄張りを荒らしたことへの報復か?」
「連中に、そんな習性はありません。単に餌を見つけたからです!」
「スラマロ、ゴレスケ、行くぞ!」
敵は集団のため、武器を変更する。
ハンマーから、スピアへ。
対して防具は、シールドのままだ。
「マナスウィング!」
ポーン!
目の前に迫った数匹のジャイアントラットを弾き飛ばす。
「こいつらは、強くないな」
「強くないですけど、恐ろしいですよ。何しろ、雑食ですから」
「雑食だと、恐ろしいのか?」
「動物はもちろん、人間も魔物も餌にします」
「だから、下水道に追い払われたのか!」
会話の間も、ジャイアントラットを弾き飛ばし続けている。
「こういう魔物の変異種は、厄介ですよ」
「元から厄介なのに、さらに厄介なのか?」
「共食いしているために、強化されてるんです」
奮戦していると、クマぐらいの大きさのネズミが近づいてくる。
「「「雑種の変異種……!」」」」
俺たちは息を呑む。
直後――
「チュゥゥゥゥゥゥ!」
グレートラットは腕を振るう。
「来る!」
ブロンズシールドによって、打撃を受け止める。
ゴン!
吹っ飛ばされないものの、体勢を崩す。
「チュゥゥゥゥゥゥ!」
グレートラットは乱打する。
ゴン、ゴン、ゴン、ゴン、ゴン、ゴン――
「アニキ、対応しないとまずいっす……!」
グレートラットの乱打に、ゴレスケは耐えかねる。
「どうする?」
「ダーリン、協力技を使いましょ?」
「行けるか?」
「行けます!」
「ホームラン――」
「スウィング――」
ポポポポーン!
「チュゥゥゥゥゥゥ――」
ホームランスウィングによって、グレートラットを弾き飛ばす!
「後方に弾き飛ばすなんて、二人ともすごいっすぅ!」
喜ぶゴレスケ。
「アルト君、あたし以外の避難は完了したよ!」
「わかった、そっちに向かう!」
回れ右すると、代理人が起き上がるところだった。
「逃がしません!」
「お前、しつこいぞ!」
「このままでは、私は主に見捨てられます!」
「そんな主、見捨てちまえ!」
「あなたには、主のすごさがわからないのです!」
主を崇拝しているらしく、代理人は自分を壁にして通路をふさぐ。
「アルト君、どうしたの?」
「あなただけでも、連れて帰ります!」
「アルト君、助けて!」
エリスに襲い掛かる代理人。
「エリスに、汚い手で触るんじゃねえよ!」
俺は駆け寄ると、代理人に渾身の一撃を叩き込む。
ズドン!
「ぐほおおおおおおおお!」
代理人は絶叫しながら吹っ飛ぶと、ジャイアントラットの群れの中に落ちる。
「ま、魔物、た、助けて――うぎゃああああああああ!」
無数のジャイアントラットが、代理人に群がる。
「この隙に、地上に出るぞ!」
「うん、わかった!」
俺はエリスの手を取ると、地上に通じているハシゴを登り切る。
「地上だ!」
地上に出ると下水道のフタを閉じて、重石代わりのタルを載せる。
「「「「ふぅ、助かった……」」」」
全員、安堵の吐息を漏らす。
その時、すっかり耳慣れた音色が聞こえ始める。
テレテレッテッテッテー♪
「「「「レベルアップ!」」」」
声が重なり合う。
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名前・アルト
職業・レジェンドテイマー
レベル・9
攻撃・180(レベルアップによる能力値上昇+10)
防御・180(レベルアップによる能力値上昇+10)
敏捷・180(レベルアップによる能力値上昇+10)
魔力・180(レベルアップによる能力値上昇+10)
技能・性質変化
レジェンドの眼光
レジェンドの御手
耐性・レジェンドの証
契約・あり
名前・スラマロ
職業・イータースライム
レベル・9
攻撃・85(レベルアップによる能力値上昇+5)
防御・85(レベルアップによる能力値上昇+5)
敏捷・85(レベルアップによる能力値上昇+5)
魔力・235(レベルアップによる能力値上昇+5)
技能・大食い
武器化
耐性・毒耐性
契約・あり
名前・ゴレスケ
職業・エレメンタルゴーレム
レベル・9
攻撃・90(レベルアップによる能力値上昇+5)
防御・90(レベルアップによる能力値上昇+5)
敏捷・90(レベルアップによる能力値上昇+5)
魔力・160(レベルアップによる能力値上昇+5)
技能・精霊の加護
防具化
アーティファクト化
耐性・麻痺耐性
契約・あり
名前・エリス
職業・受付嬢
レベル・2
攻撃・11(レベルアップによる能力値上昇+1)
防御・11(レベルアップによる能力値上昇+1)
敏捷・11(レベルアップによる能力値上昇+1)
魔力・11(レベルアップによる能力値上昇+1)
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予想外の結果だ。
何しろ、レベルアップしたのは三人じゃなく、四人。
エリスもレベルアップしたんだ!
「あたしもレベルアップ?」
「君は、それだけの活躍をしたんだよ!」
「みんなと再会できて、レベルアップもして、ほんとに嬉しい!」
喜びを噛み締めるエリス。
「戦利品は――」
子供たちの笑顔だろう。
明るくなり始めた地上に出た子供たちは、嬉しそうに抱き合っている。
「ダーリン、本当の苦労はこれからですよ」
「わかっている、子供たちの行く末だろ」
「アニキ、マスターに相談するといいっすよ」
「最終的には、子供たちに決めさせるよ」
異論はないらしく、スラマロとゴレスケは頷く。
「もっとも、少しぐらいは休みたいよな?」
俺は仲間に視線を送る。
「マロ、ペコペコ!」
「オレ、ネムネム!」
「あたし、クタクタ!」
言葉とは裏腹に、仲間は充実した様子だ。
かくいう俺も、充実している。
なぜなら子供たちにとって、今日は記念すべき日になるからだ。
それに立ち会えただけでも、俺は満足なんだ!
お読みいただき、ありがとうございます。
今回のほうが「ざまぁ」に感じるのはなぜでしょう?
やっぱり、サクッと死んでいるからでしょうか。




