第27話 エリスの提案
依頼を達成すると、来た道を引き返して右の通路に向かう。
「ダーリン、ここからは注意する必要がありますよ?」
「ゴレスケ、光を弱めてくれ」
その指示に従い、ミントアミュレットの光が弱まる。
「奥に進もう」
しばらく進むと、代理人一行を見つける。
「あいつら、何をやっているんだ?」
今のところ、代理人一行におかしなところは見当たらない。
ただ、魔物を退治していないから、依頼は嘘っぱちだ。
連中の本当の目的は、何だろう?
「どうやら、当たりのようですね。これなら、目的を達成できるでしょう!」
看板の向こう側を見つめる代理人の口元には、邪悪な笑みが浮かんでいた。
「確認は済んだから、地上に出よう」
来た道を戻る。
地上に着くと、一息つく。
ほどなく、代理人一行が姿を見せる。
「今回も我々が後でしたね。さすが売り出し中の冒険者」
「今回も相手が弱かっただけですよ」
「過ぎた謙遜は傲慢に見えますよ、冒険者様」
皮肉る代理人。
「それはともかく、見事な腕前でした。今回も報酬に上乗せしておきます」
「ありがとうございます」
「依頼の期限は明日までのため、念のために周囲を封鎖しておきます」
「封鎖?」
その言葉に引っ掛かる。
「言い忘れていましたが、ここは立ち入り禁止区域なのです」
「大丈夫なんですか?」
「許可は取ってありますから、大丈夫です」
許可書を見せる代理人。
「魔物駆除のために、特別に中に入れたんですね?」
「そういう事情ですから、許可なく中に入らないでくださいね」
「わかりました」
「次の機会があるのなら、その時もよろしくお願いします」
今回は、引っ掛かるものもなく解散する。
「二人とも、気になった点はあるか?」
今日一日の汚れを落とすために、公衆浴場に向かう。
「依頼に制限時間を設けてましたよ」
「立ち入り禁止を強調してたっすよ」
「要するに、夜間に下水道に入って欲しくないのか!」
魔物の駆除は方便だ。
目的は、夜間に下水道に入ること。
それも、立ち入りを禁止されている区域に。
「汚れを落としたら、エリスに会おう。いい土産話になるぞ」
公衆浴場に行って、今日一日の汚れを落とす。
それから、ギルドに向かう。
その間も、代理人の目的について検討している。
「代理人の目的は何だろう?」
「問題は、代理人じゃなく依頼者ですね」
「依頼者?」
「依頼者の指示に従って、代理人は動いてるんですよ」
ギルドに着くと窓際のテーブルに座り、料理を注文する。
「目的は、これじゃないよな?」
空いているテーブルに、古ぼけた指輪と真新しい人形を置く。
「ダーリン、その指輪は伝説のアーティファクトですよ!」
「子供用のアクセサリーだろ」
「アニキ、その人形は元は人間のお姫様っすよ!」
「子供用のオモチャだろ」
ボケるスラマロとゴレスケ。
「それより、食事にしましょ? マロ、お腹ペコペコですよぉ」
スラマロの提案に従い、食事にする。
仲よく分け合っていると、今日の仕事を終えたエリスも加わる。
ただ、その興味は料理じゃなく、指輪と人形に向けられている。
「エリス?」
「あの後調べてみたら、同じような依頼を受けてる冒険者が他にもいたよ」
「そんなに興味があったんだ?」
「うん、ある」
言い換えるエリス。
「それより、結果はどうだったの?」
「依頼者の目的は、別にある。なぜなら――」
エリスの求めに応じて、手に入れた情報を明かす。
「本格的に調べたほうがいいよ」
「調べるのはわかるけど、本格的?」
「現地調査するの」
提案するエリス。
「近寄るな、と厳命されているのに?」
「それなら、どうして調べたの? 調べたのは、真実を知りたかったからでしょ」
「真実を優先するのか、依頼を優先するのか……困ったな」
そう言いつつも、答えは出ている。
もちろん、真実を優先する!
「アルト君なら、真実を優先するんでしょ? あたしも、連れて行って!」
「どうして、行きたいの?」
「……気になるから」
ごまかすエリス。
エリスの視線は、テーブルの上に留まってる。
視線の先には、落し物。
どうやら、心当たりがあるらしい。
「行くとしても、俺たちだけだ」
「どうして、あたしは駄目なの?」
「危険だからだよ」
「アルト君も一緒だから、大丈夫だよ!」
食い下がるエリス。
「俺もスラマロもゴレスケも、覚悟はある。でも、君に覚悟はない」
「あたしにも、覚悟はあるよ!」
「正直に言うと、足手まといだ」
「足手まとい……」
エリスはうなだれると、ふらふらとテーブルを離れる。
「ダーリン、厳しくない?」
「アニキ、冷たくない?」
「厳しいかもしれないし、冷たいかもしれない。でも、事実だ」
そもそも、エリスがさらわれた一件は未解決のままなんだ!
「それよりも、依頼者の目的に関して、どう思う?」
「後ろ暗い探し物ですね」
「よし、下水道に入って、本当の目的を特定するぞ!」
その決定に対する反応は、
「「はあああぁぁぁ……!」」
クソでかいたため息。
「二人は反対なのか?」
「地下は臭いです」
「深夜は眠いっす」
渋っているものの、調査には賛成らしい。
「ダーリン、下水道の調査は一眠りした後にしましょ」
スラマロの意見は、もっとも。
「マスター、仮眠したいから、二階を使わせてくれない?」
「唐突ね。どうしたの?」
「例の依頼に関連して、深夜に下水道を調査することにしたんだ」
「そういうことなら、お好きにどうぞ」
マスターの許可を取ったから、二階に上がる。
俺は、備え付けのベッドの一つに横になる。
スラマロとゴレスケは、別のベッドに横になっている。
「「「お休み」」」
そう声を掛け合って、俺たちは眠りに落ちた。
お読みいただき、ありがとうございます。
エリスの活躍は?
それはもちろん、次回からです。




