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第21話 祝勝パーティ

 宿の一室。

 俺に割り当てられた部屋に、全員集まっている。

 俺、スラマロ、ゴレスケ、そしてエリス。


「心配したんだよ」


「ごめんなさい」


 頬を膨らませているエリスに、俺は屈する。


「ダーリン、事前に相談しないと、駄目ですよ」


「アニキ、一度は連絡しないと、いけないっすよ」


「お前ら……」


 モヤモヤとした感情を紛らわせるために、俺は宿の天井を見上げる。


「スラマロちゃん、それにゴレスケちゃん、二人も同じだよ」


「ごめんなさい」


 俺に続いて、スラマロとゴレスケも屈する。


「そろそろ予定の時刻、か」


 一度、宿に寄った後、鉱山ギルドを訪れた。

 兵士の仲介もあって、報告が疑われることはなかった。

 唯一の問題は、放置されたために怒っているエリス。


「今度からは、何かある時は先に言ってね?」


「わかった」


 もっとも、今回の問題は不可抗力だ。

 俺とスラマロはもちろん、ゴレスケにとっても予想外なんだ。

 そうなると、次もエリスに叱られそうだ。


「主役が遅れると迷惑をかけるから、会場に向かおうよ?」


「賛成!」


 俺たちは身支度を整えると、鉱山ギルドに向かう。


「パーティでしょ? あたし、こういうの初めてだから、楽しみ!」


「俺も初めてだから、楽しみだよ。――スラマロとゴレスケは?」


 参加するパーティは、鉱山ギルド主催のものだ。

 表向きは「鉱山の採掘再開」だけど、実際は「ゲルドの排除成功」だ。

 その事情から、功労者である俺たちは主役として招かれている。


「マロは、社交界の花形ですね」


「オレは、宴会なら経験あるっすね」


 エリスは、主役の付き添い扱いだ。

 ただ、エリス抜きだったら、俺たちはパーティに参加しなかっただろう。

 エリスの助言は、すごく役に立ったからだ。


「二階だったよな?」


 鉱山ギルドに着くと、二階に上がる。


「魔物の姿はないな」


「ダーリン、魔物は身内の宴会を好むんですよ」


「閉鎖的なのか?」


「アニキ、恥ずかしがり屋なんすよ」


 受付の人によると、声をかけたものの丁重に断られたらしい。


「ようこそ、鉱山ギルド主催のパーティへ!」


 俺たちを出迎えたのは、初老の男。

 自己紹介によると、鉱山ギルドのマスターだ。

 ウチのマスターとは顔見知りらしく、気安く接してくる。


「問題解決は、すべて君たちの功績だ」


「ある程度は俺たちの功績ですけど、すべてじゃないですね」


「謙遜かね? それとも、他に功労者がいるのかね?」


「他ならないあなたたちが功労者です」


「我々が密かに出した、山賊退治の依頼を言っているのかね?」


「問題解決につながった、横暴に屈したい姿勢を言っています」


 ゲルドの横暴に屈しなかった名もなき人々。

 彼らこそ、本当の功労者だ。

 俺は、ゲルドに引導を渡しただけだ。


「道理のわかる君のような人物こそ、本物の冒険者なんだろう」


「持ち上げ過ぎですよ。俺は、駆け出しの冒険者に過ぎないんですから」


「今は駆け出しの冒険者に過ぎなくても、すぐにスター冒険者になれるよ」


「スター冒険者?」


「あっという間に冒険者ランクを駆け上がっていく、凄腕冒険者の異名さ」


「俺にスター性は皆無ですね」


 俺は謙遜する。


「いずれにしても、君に頼んでよかった。我々を救ってくれて、ありがとう!」


 ギルドマスターを筆頭に、鉱山ギルドの関係者は感謝してくる。


「「「「どういたしまして!」」」」


 俺たちは照れ笑いを浮かべる。


「挨拶を済ませたことですし、パーティを始めましょう!」


 進行役に見覚えがあると思ったら、代官の補佐役だ。

 昼に見かけた時とは違い、晴れ晴れとした表情をしている。

 彼もまた、対ゲルドの協力者だったんだろう。


「ミートパイ!」


「ベリータルト!」


「ミントティー!」


「フルーツジュース!」


 スラマロとゴレスケは、食べ物と飲み物に突進する。


「正規の受付嬢なの?」


「臨時の受付嬢です」


「あなたなら、正規の受付嬢になれるわ」


「あたしも、正規の受付嬢になりたいです!」


 エリスは料理片手に、女性職員と歓談している。


 会場の熱気を尻目に、俺はパーティを抜け出す。

 無人のギルドを進み、奥の建物に着く。

 ゲルドの執務室に、好物だった酒を置く。


「いい結末だよ」


 ざまぁを達成した上、その行動を賞賛されてパーティを開いてもらう。

 底辺を這いずり回っていた先日までとの落差に、眩暈を覚える。

 俺は、今後も快進撃を続けられるんだろうか?


「今が人生の絶頂にならないといいなぁ……お前らもそう思うだろ?」


 地下室の出入り口には、俺を探しに来たスラマロとゴレスケ。


「調子に乗り過ぎるのは、よくないですね」


「他人を見下すのだけは、避けたいっすね」


「お前ら、人生の先輩かよ?」


 俺は肩にスラマロとゴレスケを乗せると、地下室を後にする。


「俺の目的もゴレスケの目的も達成だから、第一の冒険は完遂だな」


「マロの目的も、第一段階は終了ですね」


「スラマロの目的? まさか、お前が黒幕か!」


「くっくっくっく……マロこそスライム結社の党首、スラマロ・ブラック!」


 冗談に付き合ってくれるスラマロ。


「宣言通り、俺はグレアムとゼノンを探すつもりだ」


「ざまぁのために?」


「世直しのために?」


「元仲間を救うために。二人とも、俺のワガママに付き合ってくれるか?」


 左右に視線を送ると、


「「もちろん!」」


 威勢のいい答えが返ってきた。


「お前ら、ありがとう!」


 俺は仲間に感謝する。


「みんな、どこに行ってたの?」


 主役を迎えるみたいに、エリスが歩み寄ってくる。


「捕まった知人の見送りだよ」


「いい人だったの?」


「むしろ、悪い人だったね。それに、捕まえたのは他ならない俺だよ」


「その人も、内心はほっとしてると思うよ」


「どうして?」


「優しいアルト君に捕まって」


 エリスの言葉に、俺の心はスッキリする。


「しんみりは終わりにして、パーティに戻ろうぜ!」


「今日は、食べまくりましょ!」


「今日は、飲みまくりましょ!」


「食べるのも飲むのもほどほどにして、話しましょ!」


 この幸せが永遠に続くとは思えないけど、今だけは楽しみたかった。


「破滅フラグ?」


「そう思っただけだよ」


「それなら物事の区切りに、こういう機会を設ければいいんですよ!」


 スラマロの主張は、もっとも。


「よし、今後も定期的にパーティを開こう!」


「もちろん、食べ放題飲み放題ですよね?」


「普段の食費を削るぞ?」


「ケチケチアルト!」


 スラマロの言葉に、全員笑う。


「今日は、とことん楽しもう!」


 第一の目的は、達成だ。

 だが、遠くないうちに第二の目的に向かうだろう。

 その時も、今みたいに満足したいなぁ。


「その時も、満足しているさ!」


 俺の言葉は、予言のように聞こえた。

 お読みいただき、ありがとうございます。

 アルトは、スター冒険者候補です。

 次回、スター冒険者としての道を歩み始めます。

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