43話 見習い魔導師は疑い深い
ーー剣士は見習い魔導師の家の扉を叩いていた!
剣士
「おーい、見習い魔導師、来たぞー。今日は一緒に薬草を取るクエストに行くって言っただろ」
ーーしかしドアは開かない。
見習い魔導師
「本当に剣士さんですか?」
剣士
「は? どう聞いても俺の声だろ」
見習い魔導師
「剣士さんを丸呑みして、剣士さんの発声を真似している化け物じゃないですよね!?」
剣士
「お前発想力豊かだな」
見習い魔導師
「本当に剣士さんなら、私達しか知らない事を一つ言ってみて下さい」
剣士
「そうだな……あ、前山に行った時、俺バッタにふっ飛ばされた事なんてどうだ」
見習い魔導師
「そんなの西の大陸の全員が知ってますよ!」
剣士
「そんなメジャーな知識になってんの!? 『こんにちは』って言葉くらい有名じゃねえか!」
見習い魔導師
「今の子供は全員学校の授業で習いますよ!」
剣士
「義務教育に組み込まれるレベル!!」
見習い魔導師
「演劇の人気項目にもなってるんですよ」
剣士
「絶対俺のこと馬鹿にしてんだろ!」
見習い魔導師
「王家の石盤にも刻まれているんですから!」
剣士
「何で偉大なる所業なんだよ!」
見習い魔導師
「ここまで広めるのは苦労しました……」
剣士
「お前のせいで広まってんじゃねえか!!」
見習い魔導師
「その知識だけじゃ剣士さんとは認められません。もっと強いの下さい」
剣士
「お前のやってる事の方がよっぽどインパクト強いわ!」
見習い魔導師
「さあ早くしないとこの扉をカパカパしますよ!」
剣士
「勝手にカパカパしとけよ! そうだな……体力を回復するために牛丼とか食べまくったことは?」
見習い魔導師
「あ、それなら銀河系の人が全員知ってます」
剣士
「それもう宇宙の真理だろ!!」
見習い魔導師
「この知識を広めるために何人犠牲になったことか」
剣士
「ちょっと待て死んだ人いるの!? 俺の弱さを伝えるために尊い命が!?」
見習い魔導師
「ヌヴェードゥ星とハァホォン星の全面抗争も始まりましたし」
剣士
「大惨事じゃねえか!!」
見習い魔導師
「心配しないで下さい。さっきの事は50%嘘です」
剣士
「半分事実なんかい!」
ーー扉が開いた!
見習い魔導師
「ひぃっ! 本当に剣士さんじゃないですか……!」
剣士
「何で本物なのにドン引きしてんだよ!」
見習い魔導師
「で、では行きますか。あーあ、本当は家でヒンズースクワットしながらコカトリスの真似したかったなあ」
剣士
「お前普段家で何やってんだよ」
見習い魔導師
「さて、じゃあお寿司食べに行きましょうか」
剣士
「薬草は?」
おわり




