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80:ラストエピローグ【ミシェーラ編】

【冬フェンリルエピローグ:10】

(ミシェーラ視点)




 雪のように透きとおる肌に、ぱっちりとした青の瞳、白銀の髪は毛先にいくにつれて桜色に染まっている。

 魔狼の耳が、ふわふわと揺れている。

 わたくしたちの冬姫エル様。

 笑顔は幸せが香るように美しいですわ!


 みんながあっけにとられて薄氷を凝視する中、エル様が口を開くと、八重歯がキラリと覗きました。


『初めまして。フェルスノゥ王国の魔狼フェンリルとして勉強中の冬姫、エルと申します』


 すらすらと滞りなく話すエル様の言葉に、外交官たちが背筋を正すのがわかった。

 エル様は外交官のように話すことができますから。

 他の魔獣の皆さんとは、やはり毛色が違います。

 しかしながらその異質さを、誠意でフォローしようとしているのが伝わってくる。あと綺麗。素敵。好き。


『みなさま、この度の冬はいかがでしたか? 現フェンリルの手を借りながら、冬姫として精一杯の祈りを捧げました。みなさまにとって恵みの冬となりますように、と。来年度からもきちんと冬を呼べるように、引き続き勉強してまいりますね。これからも何卒よろしくお願い申し上げます』


 お手本のようにエル様が締めると、


『私がサポートするから心配はいらない』


 ひょっこり横から顔を出したフェンリル様。

 全員の顎がガクンとおちるのも、しかたありませんね?


 華やかな魔狼のふたりが仲睦まじく並んでいるのは、絵画のように美しいですわ。

 それになんだか甘やかな空気が香ります。


 エル様たちの方には、会議場の映像が見えているはずです。

 わたくしはエル様に手を振りました。

 するとはにかみながら、エル様が手を振って下さいました。


 ウッッッ!! と胸を押さえた王家と外交官、顔を覚えましたわ!

 わたくしたちいい同士になれそうですね? 後ほどファンクラブの勧誘をいたしましょう。

 グレア様の得意げな鼻息が聞こえて、笑ってしまいそうです。


 妖精王様たちにお礼を言って、通信を切った。



「へえ、冬姫様の爪の色、冬の加護をきちんと授かっていましたね。それが継承に大切なんでしょう?」


 帝国の王子殿下が、どこかのぼせた声で呟きました。


「ええ。エル様はわたくしたちの世界で生きると、もう覚悟を決めて下さったのです」

「最初は覚悟していなかった?」

「”落し物”でしたもの。彼女がきたくて転移したわけではない」

「詳しく聞きたいな?」

「それはもう」


 一点を、矢をぶっさすように見つめる。

 他とは違う青ざめた顔で、ズキズキ痛む胸を押さえているような、緑の国の王子。

 さあ、覚悟はよろしくて?


「緑の国が説明してくださるでしょう。──交代です」



読んで下さってありがとうございました!



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― 新着の感想 ―
[一言] 誤~魔~化~し~は~許しまへんでーーー!!(某忍者学園のおばちゃんボイス)
[一言] 更新有り難う御座います。 今回も楽しく読ませて頂きました。 ……信者が増えました? さて、緑の国は自分で自分の罪を告白かぁ……。 「さぁ、お前の罪を数えろ!」
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