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少女装鎧ジノグラフ  作者: 八波草三郎
孤島スローライフ

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島の探検(3)

 海で遊んだ日、家まで帰った正輝たちはゆったりとした夕食を終え、心地よい疲れに身を任せていた。ロナタルテは早々に彼の肩で垂れて寝息を立てている。


「次はなにか作るんですか?」

 エメルキアもまったりした口調で尋ねてきた。

「ちょっと遠出するか。山頂方面に行くのは海に行くより遥かに時間が掛かりそうだ。森を踏破しなきゃならんからな」

「登るのです? どうして?」

「全体を見ておきたい。あと、道すがら使えそうなものを探す。移動手段を優先したのはそれもあるから」

 家の周囲だけで得られないものはあるはず。

「わたしも山頂までは行ったことありません」

「見晴らしはいいはずだろ? ちょっと試したいことあるし」

「野営の準備はしないとですね」


(島の外ってのも気になってる。一応は視野に入れとくべきか。ここの人間ってのに会う必要があるかは今んとこなんとも言えない。ここだけでわりと充実してる)

 参考までに確認しておきたいだけ。


 決定して正輝がベッドに入ると少女も寄り添ってきた。


   ◇      ◇      ◇


 野営用の毛布と枕だけバイクの小物入れに押し込んで出発だ。食料は現地調達、バッグに塩とスパイスは十分に備えておく。エメルキアを前に乗せ、正輝がシートに跨るとロナタルテも胸元に潜り込んでくる。


「今日はそんなにスピード出せないぜ?」

「たまにお散歩するかもー」

「っと、危うく忘れるところだった」


 朝起きて手持ちのメタルライトを作っておくのを忘れていたのに気づいた。急遽作製してテーブルに置いていたライトも皮のバッグに突っ込む。


「発車ぁー!」

「先導頼むぞ」


 小妖精(リトルエルフィン)も道には不案内なものの、水場の確保には欠かせない。野営場所の設定にも水場は不可欠である。


「大変です?」

「ちょっとな。まあ、任せろ」


 道なき道、木立の隙間を縫ってバイクを進める。20km/h以下の遅々としたスピードだが、歩いて登るより遥かに楽だった。

 それも平地を進んでいるうちだけで、山に差し掛かるとさらに速度は落ちる。傾斜の緩いところを求めて遠回りを選ぶのも再々だ。


「まあ、大きな獣に出会わないだけ儲けものか」

「島には大飛びネズミ以上の大きさの獣はほとんど。山猫もいるみたいですけど、わたしやゼアネルヒ様のところには近づきません。なにせ、魔法でリトルエルフィンにも敵わないので」

「獣は魔法が苦手か」

「はい、トカゲの仲間のほうが強いです」


 大陸には大型の肉食獣や草食獣もいるという。島という限られた空間で、獣の仲間は爬虫類に食料争奪戦でかなり劣勢を強いられている様子だ。


「飛びトカゲのでかいやつがほんとに幅きかせてるもんな。メタルスライムは生息域が限られてるし。でも、ルキのほうが強いから一人でも暮らせてたと。島の頂点にいるんだな」

「聞こえが悪いです。わたしは無制限に精気を搾取してません」

「加減してやってる。君の優しさで島の調和は保たれてる」


 そのエメルキアが彼という精気供給源を得たので、さらに島の生態は安定してきている。一部のメタル生息域を除いてトカゲ一強への道が開けていきそうだ。正輝がいくら食べても減りはすまい。


「となると、来る日も来る日もトカゲ食暮らしか」

「海を開拓しましょうね。魚なら幾ら獲ってもそうそうは減りませんし」

「そう願いたい」


 塩は露天の岩塩で十分に賄えている。糖分はフルーツでいい。道中に少女が求めたのはスパイスの採集くらいである。


「このくらいにしとくか」

「薄暗くなってきましたもんね」

「未踏破の場所だと無理は禁物」


 ライトがないと見通せなくなったところでバイクを停める。昼間に狩っておいたトカゲで夕食を済ませ、メタルライトの導線を指に繋いで少女と毛布にくるまる。周囲を明るくしておかないとヒルにたかられるので致し方なく目を閉じたが疲れていたのかすぐに眠れた。


「結構登った気がするんですけど?」

「まだ、先は見通せないな」


 バイクでの山登りは想定以上に険しかった。登れなくなって断念しなくていいのは幸いだが傾斜が緩まることもない。なにより、水場の確保がだんだんと難しくなってきている。


「今日で三日目か。点々とした湧き水を渡り歩いてここまで来れてる」

「ロナのお陰ぇー」

「ああ、ロナ様さまだ」


 着替えもままならず、水で身体を拭くくらいに留まっている。現代人の正輝にはいささか厳しくなってきた頃合いである。新陳代謝の乏しい妖精種(エルフィン)はなんてことないだろうが、彼女たちが彼の体臭に辟易しないレベルで到着してほしいと願っている。


「こりゃ、帰ったらクラッチ板の張り替えだな。めっちゃ酷使してしまった」

「皮が香ばしい匂いさせてしまってます」

「頼むから登りきるまでもってくれよ」


 下りは直径が30cm以上ある大振りな金属製プロペラを回す負荷とブレーキでいけるはずである。若干滑りはじめているクラッチを騙しだまし使いながら登っていると突然視界が開けた。


「わあ!」

「こいつは、なんてこった」

「こうなっていたんですね」


 弧を描く頂。その中に隠されていた窪地。そして、中央には山頂湖が静かな水面を湛えていた。緩やかな傾斜の先に十分な水源があり、それが大地に染みて山腹に無数の湧き水を作りだしているのだった。


「今夜は湖畔でお泊まりだ」

「楽しそー」

「予想外に素敵な場所でした」


 正輝たちは口々に感想を言って下り道をバイクで降りていった。

次回『島の探検(4)』 「教育しておきました」

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