なろうラジオ大賞2 • 3 • 4 • 5 • 6 • 7 参加作品
妹がおにぎり? を握ってくれた。 (警告! あらすじを先に必ず読んでください)
60年…………否…………70年前だったかな、核戦争が勃発して私達は核シェルターに避難した。
定員150人の核シェルターに殆んどの村の人600人以上が雪崩込んだ。
核戦争が勃発するまでは核シェルターなんて予算の無駄遣いだと言っていたくせに。
その上、狭いだのプライバシーが無いだのと核シェルターの管理人をしていた私に文句を言ってくる。
此方はそれどころでは無いのにだ。
定員150人に対して備蓄していた食料は1年分しか無い。
4倍以上の避難民全員で消費したら直ぐに無くなる。
だから私は非常手段を取った。
私が核シェルターの管理人を引き受けていたのは自分と妹が生き残る為。
他の奴等なんてどうでもいい
んだ。
核シェルター内の温度等を管理するコントロールルームに妹と2人立て籠り、コントロールルーム以外の空気を抜く。
私が取った非常手段に妹は、「私達が生き残る為に仕方がないよね」と理解してくれた。
窒息死させた奴等の遺体は冷凍庫に収め肉として利用し、毎日の食事を豪華な物にする。
あれから70年、私の歳も90を越え100近い。
シェルター内の冷凍庫等の設備が老朽化して故障を繰り返すが、身体が思うように動かず修理もままならない。
そのせいで冷凍庫内に残っている肉が腐敗しシェルター内に腐敗臭が漂う。
肉が腐り核シェルター内の食料も残り少ない。
私達以外の避難民を殺した事は理解してくれた妹だが、出産した赤ん坊を私が育てられないからと肉にしたとき妹の時間は止まった。
その妹が、「兄ちゃん、おにぎり握ったから食べて」と丼をテーブルの上に置いていく。
おにぎり? 米なんて残っていたかな?
首を傾げながら丼の中を覗き見る。
丼の中に大きなおにぎりが1個鎮座していてポロポロと崩れて行く。
否、ポロポロと崩れて行くのでは無く、モゾモゾと一粒一粒の米が動きながら崩れて行き丼の中を這いまわっている。
おにぎりは米では無く、腐敗した肉に集るウジ虫を集めて握られていたのだった。




