誰か仲良くなる方法を教えてください!
コミックス8巻、巻末用に書き下ろしたものです♪
わたくしの完敗ということは、すぐにわかった。あんな優しい瞳を向けられたことなんてなかったもの。まるで宝物を扱うかのような触れ方を、されたことがないもの。いつもサーシス様の愛情の先に、わたくしはいない。
〝フィサリス公爵サーシス様に相応しい相手は、アルゲンテア公爵家のバーベナ嬢〟——ほとんどの人がそう思っていた。わたくしだってそう思ってましたわよ。
なのになのになのにっ、なんであんな子なの?
ちょっとかわいらしいだけ……いや、ダンスも上手いか。会話も上手……あれ? 褒めてるつもりはないのよ! ——コホン。と に か く、あんな貧乏貴族の小娘が、サーシス様の愛情を独り占めするなんて……なんでなのよ⁉︎
サーシス様は諦めがついてもあの子には納得いかなかったから、わたくしはあの子をよ〜く観察してみることにした。
「化粧は派手じゃない。ドレスはシンプルだけど趣味のいいもの。流行りのものじゃないから、逆に目立ってる。あの子、実はものすごくセンスがいいのかも」
あの子、わたくしのスタイルとは真逆なのよね。そもそも派手なスタイルがサーシス様の好みだと思ったから寄せてたのに……騙された。
夜会で見かけるたび、あの子の周りはいつも人がいる。同年代の令嬢だったり、年上の貴族のオッサン……コホン、おじさまだったりと、老若男女を問わない。ダンスの誘いも、嫌な顔ひとつせず受けてる。わたくし? わたくしは気分によりけりね。
「バーベナ嬢、ダンスを——」
「は? 疲れているのでまた今度」
にべなく断りますがなにか?
とにかくあの子を観察した結果わかったこと。あの子、いろんな人からめっちゃ好かれてない?
「ぐぬぬ……。地味子と侮っていたけど、会うたびに人の良さを感じてしまう……!」
あらやだ、ちょっと力が余って手にしていた扇子がメキョッと折れてしまったわ。おほほほほ。
「地味子? 誰それ」
真っ二つの扇子を見たセロシア兄様がギョッとしていました。
「あ〜。お前がライバル心剥き出しにするってことは、ひょっとして、サーシスの奥さんのことか?」
「ふ、ふんっだ!」
「当たりか〜。しかし地味子って……ぷぷぷっ」
「うるさいですわっ!」
「地味子どころか、すごく可愛いし、めちゃくちゃいい子じゃないか。まさか、自分とは真逆すぎて嫉妬してるのか?」
「違いますぅ」
「お前も奥さんみたいに素直でかわいかったら、嫁の貰い手もあるだろうに」
「う る さ い っ !」
「素直じゃないお前のことだから、ほんとは奥さんと友達になりたいんじゃないの?」
「は、はあ〜?」
「ま、お前の、ゴタゴタと装飾しまくったいろんなもんを脱ぎ捨てて素直になってみたら? 奥さんも受け入れてくれると思うぞ。優しい子だし」
「友達くらいお兄様に言われなくても自分で作れますわよっ!」
「ふ〜ん」
なんかその見透かした感が、イラッとするわ。
——なんてセロシア兄様に啖呵を切ったものの。
「そーいえばわたくし、友達いなくない?」
なんか重要なことに気が付いてしまったわ。家柄とか身分とか、そういうのに寄ってくる子はいるけど、それは果たして友達か?
「当たり障りのない話しかしないし、みんなわたくしの言うことを聞くだけのイエスマンだし」
それは顔見知り、または知り合いっていうのよ。
おう……なんてこと。しかも自分から話しかけたことなんてないじゃないの!
「友達って、どーやってなるものよ⁉︎ 誰か教えて〜!」
そして迎えた我が家での夜会。あの子——ヴィオラ様に近付くため、できることはした。リスペクトを込めて、ヴィオラ様に寄せた化粧、ドレス、髪型。特にドレスはこだわったのよ。
『これまでのお好みとはかなり違いますよ』
『いいんですの! ヴィオラ様はいつもシンプルなものを着ていらっしゃるでしょ』
『はい、まあ、そうでございますね』
『あんな感じのが着たいの!』
『はいはい』
マダム・フルールには無茶を言ったわ。でもプライドよりもなによりも、ヴィオラ様とお友達になりたい一心だったのよ。
いい感じに(?)ヴィオラ様に話かけることができたけど、サーシス様に『絡んでる』と勘違いされてしまった。ああもうっ! そうじゃないのに! 素直になりきれないわたくしを助けてくれたのはセロシア兄様だった。助けてくれたのはいいけど、わたくしのヴィオラ様リスペクトを全暴露されてしまった。恥ずかし——くはないか。プライドよりも、ヴィオラ様と友達になることの方が優先だもの。
巻末にあるはずのものがなぜここに? ——説明は活動報告にて!




