お食事デート 〜バーベナとサージェント3〜
活動報告より加筆修正。
「では、私たちはここで」
「ええ……御機嫌よう」
ヴィオラさんたちがオペラ宮を出て行くのを、私と小生意気な年下男で見送った。ほんとはこのあとヴィオラさんたちと一緒にご飯でも食べたかったわよ!! でも、『ごめんなさい。今日はカルタ……っと、料理長が張り切って晩餐を用意してくれてるんです』って、すまなさそうに言われたら、『はいそうですか』としか言えないでしょ。じゃあもう今日は解散! と思って踵を返そうとしたら、サージェントに止められた。
「ディナーでしたら僕がご一緒いたしますよ」
「お腹減ってないので結構ですわ」
「ではなぜ公爵夫人たちを『このあとご一緒にディナーでも』ってお誘いになったんですか?」
「ぐぬぬ……そ、そう、社交辞令よ、大人だから」
「そうなんですね。じゃあ、僕は社交辞令じゃなくて、本気でお誘いします」
「いやだから、遠慮しますって」
「さっきお腹減りましたって、言ってましたよね」
あくまでもニコニコしたまま言うサージェント。くそう、さっきヴィオラ様を誘うために『お腹減ったからご飯行きません?』って感じで言っちゃったわ、私。まさかこんなところで活用されるとは。
返事せずにじとんと睨んでいると、答えと捉えられたみたい。
「素敵なお店を知っているので、ぜひ」
流れるようにエスコートの手を差し伸べてきた。ああもう、はいはい。行きますよ。
「公爵様と一緒がよかったですか?」
「違うわよ」
ニコニコしながら果実酒を飲むサージェント。まだこの人は、私が公爵様に未練タラタラだと思ってるみたいね。ていうか私、周りからまだそんなふうに見られてるのかしら? え? 嘘でしょ。最近ではむしろヴィオラ様の名前ばかり出してると思ってたけど。
「公爵様じゃなくて奥様の方。ヴィオラ様と一緒にご飯が食べたかったの!」
「ええ……まさか、奥様に横恋……」
「ちっっっっが〜〜〜うわ!!」
引き気味に言うのやめてよね。マジっぽいから。
「ヴィオラ様、とっても良い子じゃない。だから友達になりたいの。公爵様のことなんて、とっくの昔に諦めてるわ」
むしろ最近では眼中にすらなかったわ。私は赤い果実酒をぐいっと飲み干した。
「そうらしいですね。僕はあまり知らないけど、姉がいつもベタ褒めしてます」
「でしょうね!」
「たまにしか会えないのが寂しいって言ってます。あまり社交界に顔を出されないから」
「そうよ。公爵様がそれはそれは大事〜〜〜にされてるもの」
「それでついた二つ名が『幻の奥様』」
「もっとお会いしたいから、独り占めしてないで外に出してもよくありませんこと? ………ん?」
「ん?」
サージェントのコミュニケーション能力が高いせいか、ついうっかりフツーにおしゃべりしてしまってることにはたと気が付いた。
てゆーか、なんで私はこいつにこんなこと言ってるのよ?
……そうだ、きっとお酒のせいだ。そうだそうだ。このお店の、お酒も美味しいし、出てくる料理も美味しいのが悪い。もういっそ、ぐいぐい飲んで記憶飛ばしちゃおう!
……めっちゃ飲んだけど悲しいかな酒耐性強いんだった私。
全然記憶飛ばなかった。
ありがとうございました(*^ー^*)




