かくされた狂気
活動報告SSより
ディアンツ殿下の視察に随って、領土の辺境を巡って四日目。
執務室兼私室にとあてがわれた部屋で報告書を書いていたら、副隊長が盛大なため息をもらした。
「ヴィオラ不足が……こう……じわじわと自分を蝕んでいく……」
えらく真面目な顔しているから何事かと思ったら……これかい。気が抜けたわ。
「ゆーても明日には帰るでしょうが」
「今この時間が苦痛で仕方ないんだ」
「重症ですね」
「否定はしない。しかも今朝、あんな夢を見たから」
「どんな夢か知りませんが、そろそろ目を覚まして仕事してください」
あらぬ方向(多分お屋敷の方?)睨んでるくらいなら手を動かせ手を。
出張って言ってもほんの五日くらいのもの。てゆーか、一泊でもすればこういう症状になるのは通常営業だけど。
「いっそのこと一緒に出張に来れたら——」
「無理でしょ」
「荷物の中にこそっと」
「はい、無〜理〜。そもそも、奥様が絶対『ダメ』って言いますよ」
「むむ……それならいっそのこと縄で縛ってでも——」
「おいおいおいおい」
「いや、縄はかわいそうだな。最高級の織物でできたリボンがいいな。ヴィオラを傷つけずにすむ」
「素材の問題じゃねえ!!」
「そうだな、縛るのはかわいそうだ。ガラスの檻がいいか」
「人の話を聞いてたかな?」
ヤバイよヤバイよ。奥様切れで完全にイっちまってる……っ!
自分の世界にどっぷり浸かってる——。
「——というのは冗談だが」
「冗談かい!!」
副隊長が言うとマジもんっぽいんだよ。変な汗かいたわ。
「とにかく早く帰りたい」
「そうですね。副隊長のかくされた狂気が発露する前に帰りたいですね」
ありがとうございました(*^ー^*)
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