私のお・も・て・な・し
活動報告SSより
裕福なお貴族様の社交の一環に『お茶会』というものがりますが、相変わらず私はそういった類の催し物が好きではありません。まあそもそも『社交しなくていいよ』って、結婚する時の条件(契約?)として旦那様からお墨付きもらってますので、しなくても全然オッケーなんですけどね。最近では『とびきりかわいいヴィオラを他所の男に見せたくない』とかいうわけのわからん理由で、社交場に出なくていいよって言われてますけど。
しかし、ごくたま〜に、本当に仲良くしてくださっているお友達だけを招待してお茶会をすることがあります。それは自発的にではなくて『そろそろヴィーちゃんちに遊びに行きたい』という笑顔のプレッシャーに負けてというもの。お友達というのはもちろん、アイリス様、バーベナ様、アマランス様、ピーアニー様、サティ様といった、いつものメンバーです。他に友達なんていませんが何か?
形式ばったおもてなしは堅苦しいし、苦手です。
「お茶飲んで、オホホホホ〜って笑って、毎回同じというのもなんだかなぁ」
「かなり極端な例えですね」
「要約するとそうじゃない?」
「まあ確かに」
「ん〜」
「そう固く考えずに、奥様らしくおもてなしをすればよろしいのでは?」
「私らしく?」
「はい。公式なお茶会ではありませんので、奥様のお好きなように変えてみるのも面白いかと」
「なるほど」
ステラリアからのアドバイスは目から鱗でした。
そうですよね、私的なお茶会。しかもお友達だけという気安さ。ならばお友達にも気楽にくつろいでいただきたいですよね。ということで最近は、ワタシ庭園に敷物を敷いて、ピクニックのような形でおもてなししています。
思った通り、『気楽でいい』『リラックスできる』と好評でホッとしています。
芝生の上に敷物を重ね、ふわふわのクッションをたくさん置いて、お好きなようにくつろいでいただくのが『マナー』。でもさすがは超のつく一流のお嬢様方。少し足を崩していますが、それでも優雅に見えるところがお嬢様オーラ。間違ってもクッションにダイブ☆なんてしませんよ!
今日もそんなリラックスお茶会を開いていると、ロータスが慌ててワタシ庭園にやってきました。いつも冷静なロータスが珍しい。まさか、旦那様に何か起きたとか!?
「どうしたんですか?」
「それが、急なお客様がいらっしゃいまして……」
お客様か〜い!! いや、勝手に悪い想像したのは私だけど。とにかく悪いことではなかったのは良かったんですが、歯切れが悪いのは気になりますねぇ。
「お客様? 今日はもういらっしゃらないはずですよ?」
私がアイリス様たちを見ながら言うと、みなさんもそれぞれ頷いています。アイリス様、バーベナ様……と、今日も安定、しかもフルメンバーです。
「それが……」
ロータスがお客様のことを続けようとした時でした。
「あら、こちらでお茶会をしていらっしゃるの?」
「素敵な庭園!」
「ヴィーちゃん、ご機嫌よう! お久しぶりね」
そう口々に言いながら庭園に姿を現したのは、一の姫、二の姫、三の姫様ではありませんか! その後ろからうちの使用人さんたちやそうじゃない人(きっと姫様付きの侍女さんたち?)がわらわらと追いかけてくるのが見えましたので、姫様たちは勝手に入ってきたんでしょう。
「姫様方!?」
慌てて立ち上がりました。
びっくりしたのは私だけではありません、後ろにいたみなさんも一斉に立ち上がり、優雅なしぐさでご挨拶しています。瞬時に〝正統派〟お嬢様モードに切り替えです。
私も改まってご挨拶します。
「姫様方、ご機嫌麗しゅう。ええと、突然のご訪問、どうかなさったのでしょうか?」
今日来るなんて聞いてねえよ!! と、叫びたいのをこらえて私が尋ねると、
「ヴィオラさんのお茶会がとっても楽しいって耳にしたから、是非とも参加したくて来ちゃった」
エヘッと悪戯っぽく笑いながら言う一の姫様、とってもキュートですね! ……じゃなくてっ! 押しかけられたこっちはたまったもんじゃありませんよ! 主に心の準備が。
「不定期開催だから、いつやるのかっていう情報探るのが大変だったわ。お母様も快く送り出してくださったのよ」
「そう。ヴィーちゃんのお茶会は一流のお嬢様が集ってるから、社交やマナーのいい勉強になるでしょ、って」
口々に言い募る姫様方。王妃様公認なら、参加表明のお手紙でもなんでもくれてよさそうなもんじゃありませんか?
「王妃様……」
適当にくつろいで、適当におしゃべりしてるただの集いなんですが……。それなんてプレッシャー。でもさすがに追い返すわけにいきません。
「……ロータス、敷物とクッションを追加で」
「かしこまりました」
私は腹を括りました。
姫様方のお茶の用意を追加して、お茶会、仕切り直しです。
「形式もお作法もありません、お好きなようにくつろいでくださいませね。お茶も、お菓子もご自由にどうぞ。ああ、今日はバーベナ様のお土産のワガシもありますのよ!」
無礼講とまでは言いませんが、楽しく過ごしていただきたいので、いつも通りのおもてなしをします。
姫様方は、初めてのこういったスタイルに最初は戸惑っていましたが、他のお嬢様方の真似をして適当にくつろぎ始めました。
「いかに優雅にくつろぐか、というのがミソですのよ」
「難しいけど、面白いわね」
バーベナ様の一言に、一の姫様が面白そうに笑いました。
「ここのお庭は見たことのない花がたくさんあるけど、どうなさったの?」
「公爵領特産のお花だったり、旦那様がよその土地に行った時などにお土産として買ってきてくださったりしたものばかりなんですの」
「へぇぇぇ〜」
「ゴージャスな花ではないけど、素朴でかわいらしいわ」
「そうなんです。私のお気に入りばかりなんですよ!」
「愛する旦那様からの贈り物ですものね!」
「え〜と、あの、そういうんじゃ……」
「照れなくてもいいのよ! 相変わらず仲良くて羨ましいわ!」
ワタシ庭園の話だったはずなのに、なんで冷やかされてるのかしら??
姫様方と一緒になって生温かい視線で見ないでください、お嬢様方!
それからもあれこれ、いろんな話で盛り上がりました。
お開きの頃にはすっかり喋り疲れてしまった私たち。
「堅苦しくないお茶会って、いつも以上に話がはずむし、むしろディープな話が出来たりしていいわね」
「優雅にくつろぐという高度な技も身につけられるし」
「いい体験ができたわ」
と、姫様方は大満足してくださったようです。
ワタシ的にはいつも通りのお茶会しただけで、特に何もしなかったんですけど。これって結果オーライ?
「楽しかったから、また来るわ!」
「今度は正式に招待してね」
「またね。ヴィーちゃん!」
あ、また来るんですね。護衛云々のことで、旦那様に嫌がられそうなんですけど……。
ありがとうございました(*^ー^*)




