光のどけき春の日に
リクエスト企画より♪
旦那様の休みの日、デートに出かけた二人ですが……?
拙作『ロイヤルウェディングはお断り!』とのクロスオーバーです m(_ _)m
今日は久しぶりの、旦那様のお休みの日。
しばらく忙しい日が続いていたので、旦那様的には『ようやく』だそうです。
「せっかくだし、今日はぶらぶら外出しようか」
「いいですねぇ。レティもお外行く?」
「でじー」
バイオレットも一緒にって思ったのに、いやいやと頭を振ってから、デイジーを指してます。そうですか、デイジーと遊んでたいのね。
ということでバイオレットはお留守番です。
「では行きましょうか」
「はい!」
サクッと準備したところで、いざ町に出発!
ほんとにノープランで出てきたのものだから、まずは行き先決めないと……と思っていたら、旦那様の方から聞いてくれました。
「今日はどこ行こうか。ダンディライオンのパン屋? それともレモンマートルの菓子屋?」
その二つ、久しぶりですね〜。どっちも魅力的なのよねぇ。
「ん〜」
「静かにお茶を飲みたいなら、ロータス御用達の裏路地カフェかな」
おお〜! あそこもめちゃいい雰囲気で、静かにお茶を味わうにはもってこいのお店なんですよね〜。
「ん〜」
あ〜もう! どれも魅力的で決めかねる!!
「ヴィー?」
答えあぐねて唸っていると、旦那様が顔を覗き込んできました。
「どれも魅力的で決めかねてます」
「全部行くのもアリだよ」
なんて旦那様は軽く言うけど、それは私を甘やかしすぎでしょ。
「絶対食べきれないから無理です」
「僕がいるから大丈夫。ヴィーは好きなものを食べたらいいよ。せっかく久しぶりのデートなんだし」
「わぁい!」
ここは甘やかされておきます。
「じゃあ、パン屋さんでサンドイッチを軽く食べてからレモンマートルでお店限定スイーツ食べて、締めに裏路地カフェで美味しいお茶でどうでしょう?」
「ああ、いいよ」
旦那様からオッケー出たので、まずはパン屋さんに行きましょう……となったところで、
「あの〜」
背後から急に、声をかけられました。
「「はい?」」
旦那様と同時に返事し振り返ると、そこにはふんわりとした金髪の美少女が立っていました。アメジストの瞳がすごく綺麗。
あまりに可憐! ぼーっと見惚れてたら、旦那様にツンツンと突かれて我に返りました。
「こちらに旅行できている者なのですが、どこに行ったらいいかさっぱりわからなくて」
「はあ」
「いい場所を知らなくて困っていたら、前を行く貴方がたの会話が聞こえてきて……あっ、盗み聞きしてたとかじゃないんですよ? 聞こえてきただけで」
「大丈夫ですよ〜」
慌ててフォローするのがかわいくて、思わずクスッと笑っちゃいまいた。
「……それで、ぜひそのお店を教えていただけたらと思いまして、声をかけたんです。不躾ですみません」
そう言って頭を下げるお嬢さん。礼儀正しい人です。隠しきれない育ちの良さが滲み出てます。
「そうだったんですね! 私たちもそちらに行きますから、一緒に行きましょう! ねえ、サーシス様、いいでしょう?」
「……ああ」
あら旦那様、ちょっと嫌そう? 綺麗な濃茶の瞳が笑ってません。
せっかく旅行で来てくれたと言うことなので、予定を変更して、店内でしか食べられない限定スイーツのあるレモンマートルに行くことにしました。
「ここのフワフワショコラが店内限定で美味しいんですよ〜」
「ほんとですね! 美味しい」
「でしょう? そちらの国にはないんですか?」
「ありますよ。似た感じかな? フランス菓子っぽいのがメインです」
「ふらんす?」
なんだそりゃ?
聞いたことのないワードに首を傾げていたら、
「おほほほ〜。ここにはない国ですね」
「そうなんですね!」
そうかそうか、ここにはない国なんだ。……んんんん? ま、いっか。
お嬢さんはリヨンさんといって、旦那様のトロワさんと一緒にこちらに来ていました。
しかもすごく奇遇なことに、先日うちで『ヴィオラ・サファイア』の商談をしていった外国の商人さんの娘さんだそうなんです。
旦那様たちは先日の商談のことを話していました。
「まさかあの商人の娘夫婦とは……」
「いやぁ、あのサファイアは素晴らしかった」
「だろう!『ヴィオラ』と言う名に恥じない美しさなんですよ!」
トロワさんがサファイアのことを褒めた途端、一瞬で心開きましたね旦那様! さっきまでの態度はどこいった。
てゆ〜か、よく知らない人にまでそれ言うのやめてほしい!
「ぎゃ〜〜〜! サーシス様! またそんな寝言おっしゃる!」
「え〜? 寝言じゃないし? 事実だよ」
真っ赤になる私とは対照的に、ニコッと極上スマイルですけど。
旦那様のこの恥ずかしい癖、治してもらいたいもんです……はぁ。
***サーシスver.***
忙しかった仕事も一段落して、ようやく休日。
久しぶりにヴィオラを誘って町中デートに出かけたところ、知らない女に声をかけられた。僕が、じゃなくてヴィオラが、だけど。
なんでも国外からの旅行者で、ロージアのどこにいっていいかわからなかったところ、僕たちの会話を聞いて『そこに行きたいから道教えて』ということだった。
素直なヴィオラは快諾したけど、この女の後ろにいる男に気付いていただろうか?
穏やかな笑みこそ浮かべているが、黒縁眼鏡の奥の黒い瞳は隙がない。
……外国のスパイ、もある?
ヴィオラが無邪気な分、僕が警戒しておけばいいか。いざとなれば、周りには護衛の者たちもいるし。
『ではぜひレモンマートルに行きましょう』とヴィオラが言うので、菓子屋に向かった。
ヴィオラたちはすぐに打ち解けていろいろ話をしている。
その後ろをいく僕たちは、というと。
「先日こちらに訪れた義父が、『フルールはいいところだ、行ってみろ』と言うので来てみたんですが、本当にいいところですね」
「そうですね」
話しかけてくる男に、テキトーに相槌を打っていた。
人懐こそうに話しているけど、まだ油断はしてないからな。
「こんなにいい風土なら、あのサファイアが採れるのも理解できます」
「なんだって?」
「義父が『ヴィオラ・サファイア』なる石を持ち帰って来たんです」
「『ヴィオラ・サファイア』は公爵家のものだ!」
「えええ〜!?」
まさかこの男の口から『ヴィオラ・サファイア』の名が出てくるなんて!
話していると、この男たちは先日うちに商談に現れた外国商人の娘夫婦だということがわかった。
『ヴィオラ・サファイア』の良さがわかるとは、この男、なかなかやるじゃないか。
ありがとうございました(*^ー^*)
『ロイヤルウェディングはお断り!』66話目の『状況説明』バージョンとなっております。




