One Love 〜現代版状況説明3〜
リクエストSSより♪
現代版のヴィオラと旦那様。バレンタイン編(44話目)の続きです♪
学園全体がピンク色に染まっていたバレンタインデーも過ぎ、三年生はいよいよ卒業という三月。
「……何やってるんですか」
「んん〜? ヴィーの指は細くて華奢だなぁって思って見てるだけだよ」
「いやいやいやいや、仕事してください、会長!」
「ええ〜」
パックジュースのストローの袋を私の指に巻きつけちょうちょ結びにして遊んでる目の前の人は、今年度我がフルール学園の生徒会会長になったサーシス先輩。
濃茶のサラサラの髪、整った顔立ち、モデル顔負けのスタイル。おまけに家柄よし・頭よし・お金持ちと、ないものがないくらい神の祝福を一身に集めたようなサーシス先輩は学園のアイドル、王子様、ラスボス(違うか!)と言ってもいいくらいなお方。
そのサーシス先輩に絡まれながら仕事をしている私は、ごくごくフツーの、そこらへんにある小石程度にモブ。庶民代表。
すみっこぐらし推奨で学園生活を送っていたはずなのに、なぜかサーシス先輩に気に入られてしまって、全然望まぬままに生徒会書記に推薦され、気がついたときにはすっかり生徒会に組み込まれていました。
すみっこぐらしがどうしてこうなったし。
イヤイヤとはいえ任されたものは放置できない性分な私。こうして生徒会室に来てはせっせとお仕事してるんですけど、肝心の会長がちっとも仕事してくれません!
あ、ちなみにパックジュースなんて庶民の味を嗜んでるのは私で、目の前のセレブ王子はカフェテリアから出前させた高級(高額?)コーヒーを飲んでやがります。それ飲んだらさっさと仕事しやがれください。
仕事をせずにずっと私に構ってる会長に若干イライラしていたら、
「そうですよ。我々がこうして引き継ぎに来れるのもあと少しですからね」
背後から声が聞こえてきました。
メガネをクイっと上げながらニッコリ微笑むロータス先輩です。〝引き継ぎ〟という名の〝見張り〟だということを私は知ってますよ。サーシス先輩がすぐサボるから。
「大丈夫でしょ〜。僕たちのいなくなったあとはヴィーちゃんが見張ってくれるから〜」
「ヴィーちゃん言うな」
「これは失礼!」
カルタム先輩(三年)に向かっても偉そうなサーシス先輩(二年)。サーシス先輩がキッと睨むと、カルタム先輩はニヤッと笑って首をすくめてました。あ、これ全然気にしてないや。
「そうですね。カルタムの言う通り、サーシスくんがちゃんと仕事をするかどうかはヴィオラさんにかかってます。ヴィオラさん、この学園の未来は貴女にかかってますから、頑張ってくださいね」
「肩の荷重い!!」
めっちゃ笑顔でごっつい重石を載せてきましたねロータス先輩!!
「あ、ヴィオラさんの働き次第では授業料の免除も検討され——」
「全力で頑張らせていただきます!」
私は高校生活を目立たずおとなしくすみっこぐらしするはずだったけど、授業料免除はでかい。ものすごくでかい。貧乏憎んで人を憎まず!
私のちっちゃな野望は『授業料免除』という言葉の前に、一瞬で無力化してしまいました。
不肖ヴィオラ、サーシス先輩を椅子に縛りつけてでも仕事させますので、先輩方は安心して卒業していってください!
そうして慌ただしく日々を過ごしているうちに三月のイベント——そう、ホワイトデーが近付いてきました。
「あぶなく忘れるところだった〜!」
「なにを?」
「ホワイトデーですよ! またクラスのみんなで盛り上がらなくちゃならないんで!」
バレンタインは楽しかったな〜。みんなでお昼休みに机をくっつけて持ち寄ったお菓子でお菓子パーティー。みんなは高級ショコラティエのチョコとか持ってきてたけど、貧乏人の私は手作りチョコチップクッキー。でもでも『めっちゃ美味しい!』と好評で、あっという間に完売だったのよね〜。
ホワイトデーは何を作ろっかな。
「そうだね、ホワイトデーだね。ヴィーは何がほし……」
「ということで、私は買い出しに行くのでお先に失礼します!」
「え? ヴィー」
「じゃっ!」
あれ? サーシス先輩何かいいかけてたけど……ま、いっか。引き止められる前に脱兎のごとく生徒会室を飛び出した私は、ダッシュで目指せお菓子の材料屋さん!
だってみんなで『菓子パ』したいんですもん!
バレンタインの時も開催された『菓子パーティー』。
持ってきた友チョコをみんなで交換、ランチタイムに美味しく楽しくいただく。非リアの男子が羨ましそうに見てたけど、ごめんね、あげられないの!
今回もそんな感じでランチタイムに『ホワイトデー菓子パ』です。
「アイちゃんのマカロン、めっちゃ美味しい!」
「うふふ〜。これフランス直輸入なのよ」
「さすがお金持ち!」
「ヴィーは今回は何を作ってきてくれたの?」
「今回は抹茶のブラウニーだよ〜。ホワイトチョコと抹茶で作ったの」
「わぁ! すご〜い!」
これですっかり私のホワイトデーは終わったと思ってたんですが。
ええ、忘れてましたよ。アノヒトからのホワイトデーを……。
「ヴィー」
放課後、うちの教室に姿を現したサーシス先輩。
めっちゃ笑顔ですが、今日一日、ほとんど相手しなかったから笑顔が若干怖いです。抗えない空気を発しています。
「なんでしょうか〜?」
「今日はホワイトデーだよね?」
「そうです。満喫しました!」
「それは友達とでしょ」
「はい!」
「本番はこれからだから」
「はいっ!?」
サーシス先輩に手を引かれ、先輩ん家のお迎えの車に乗せられ、着いたところは先輩のお家! 超豪邸! ——いや、そんなこた〜どうでもいい。
「サーシス先輩?」
「いらっしゃい。さあ、入って」
「あ、おじゃまします」
手を引かれるままに通されたなんかすごく広くて綺麗なお部屋には、パリッとしたスーツを着たダンディなおじさまと、コンサバファッションの美魔女がいました。
「やあ、君がヴィオラさんかい? サーシスの父だ」
「ハジメマシテ」
「ヴィオラさんかわいいわねぇ! 私はサーシスの母よ!」
「コンニチハ」
なぜにご両親??
挨拶を交わしながら、でも、頭では『???』となっていると、
「はい、バレンタインのお返し」
そう言うとサーシス先輩が私の左手を取りました。
何をするんだろうと見ていると、サーシス先輩はどこに仕込んでいたのか指輪を出してきて、するするっと薬指にそれを嵌めてしまいました。
かわいらしいリボンモチーフの真ん中に、ひときわ大きなハート型のダイヤモンドが鎮座した指輪。リングもリボンも、もちろんパヴェセッチングでみっちりダイヤで覆われてます。
ジャストサイズが怖いんですけど?
「こっ、こっ……」
びっくりして絶句していたら、
「とうさん、かあさん、これ、婚約指輪だから」
なんて、サーシス先輩は涼しい顔してご両親の前で婚約宣言!!
「おお、そうか。わかった。おめでとう」
「おめでとう! ヴィオラさん、これからよろしくね」
めっちゃ祝福してれてるけど、ご両親も、もっと私の素性とか疑いましょうよ??(まあ何の変哲もないただの庶民ですけど)
あまりにぶっ飛んだホワイトデーに、私はそのまま気を失ってしまいましたとさ。
ありがとうございました(*^ー^*)




