決戦は休暇の日
リクエスト小話より♪
御庭番さんたちの日常……?
フィサリス公爵家の御庭番、普段は本当にお庭で庭師をしています。
庭師長ベリスの設計と指示に従って木や花を植えたり、あるいは剪定をしたり、芝を刈ったり。雑草は、奥様がせっせと抜いてくれるので、かなり助かっているようです。
日頃の訓練は他の使用人さんたちと同様、主人たちが目覚める前、早朝に行っています。影の努力です。しかし日常的に広大な庭を重い道具を持ってあちこちしているので、体力腕力訓練には事欠きません。
以前はどちらかというと諜報活動的なことがメインでしたが、最近では気ままな徒歩でのお散歩がお好きな奥様のために、こっそり物陰からの護衛が多くなりました。ものものしい護衛付きの外出は奥様が嫌うので。
「ちょくちょくお出かけになられるから、もはや旦那様たちの休暇の日のために訓練してるって感じだな」
「そうだな」
今日も街中デートに出かけた主人夫妻を、御庭番たちは物陰から見守っています。ちなみに今日の護衛は御庭番三名と護衛騎士三名。ベリスはお屋敷待機です。
「まあ、訓練ばかりだと飽きてしまうけど、こうしてたまに実践の場があると張り合いがでていいね」
「ロージアが平和っていっても、何があるかわからないし」
「奥様も旦那様も楽しそうだから、しっかりお守りせねば」
「だな」
きままにウィンドーショッピングなんかを楽しむ主人夫妻と適度に距離を保ちつつ、二人を尾行する御庭番&護衛騎士たち。
いちおう先回りして危険がないかなどはチェックしているのですが、この日はたまたま主人夫妻が通りかかった時にケンカが起こりました。
若者の集団で『わざとぶつかってきた』だの『そっちからガンつけてきた』などと言いがかりをつけあい、一触即発状態です。
「さっきまでは平和だったのに」
「さすがに今からじゃ回収できないね」
先回りの時に見つけていたらすぐに市中警らの騎士に連絡、こっそり旦那様にも伝えて(アイコンタクト)ルート変更などの処置がとれたのですが、偶然居合わせたとなるとどうしようもありません。
巻き込まれないことを祈るのみ。
しかし運悪くケンカが始まり、殴り合いになり、その中の一人が主人夫妻の方にはじき出され、奥様にぶつかりかけました。
もちろん旦那様は奥様をかばいます。
そのままよろめいた男は自分で勝手に尻もちをついたのに、
「なんで今、俺を助けなかった」
と、今度は主人夫妻に文句を言ってきました。
めっちゃ理不尽な理由で旦那様たちが絡まれた〜!!
サッと、御庭番たちに緊張が走ります。
「極力奥様に俺たちの姿を見られないように、ギリギリまで様子を見よう。旦那様に手を上げた瞬間に回収だ」
「了解」
散らばっている御庭番・護衛騎士たち、それぞれアイコンタクトを交わし、群衆に紛れて待機します。
見ているうちに主人夫妻が若者たちに囲まれてしまいました。
中心では旦那様と奥様が互いに背を預け、臨戦態勢に入っています。
「「「「「「ええ……旦那様たち、ヤル気満々!! まあ、あの二人なら助っ人なくても大丈夫そうだけど……いやいや、いかんいかん!」」」」」」
現役騎士の旦那様、そして使用人さんたちによって鍛え上げられている奥様。猪突猛進なだけの若者なんて、赤子の手をひねるようなもの。
しかしここは主人夫妻のピンチ。護衛の出番!
やがて若者たちが動いた瞬間、
「回収!」
護衛騎士の一人から号令がかかると、
「「「「「了解!」」」」」
御庭番・護衛騎士たちが全員一斉に飛び出してきて、あっという間に若者たちを捕まえ、どこかに連れ去っていきました。
一瞬の出来事にポカンとなる一般市民、と奥様。
「今の……なんだったんですか?」
「さあ? 清掃業者か何かじゃないですか?」
旦那様はもちろん護衛たちの仕業と知っているので涼しい顔です。
回収した若者を市中警らの騎士に引き渡し、また主人夫妻の護衛についた御庭番たちでした。
ありがとうございました(*^ー^*)




