公爵家へようこそ!
ユーフォルビア家、フィサリス家に行くw
「いつも私が行くばかりだから、たまにはこちらに呼んでもいいですか?」
「ん? 誰を?」
「うちの家族です。お屋敷に招待するする詐欺を働いてるなぁって思ったんですよ」
「どんな詐欺ですか」
仕事から帰って来て晩餐を食べていると、ヴィオラがそんなことを言いだした。
食事の手を止め、ふと考える。
そう言われてみれば確かに僕たちがユーフォルビア家に行くばかりで、公爵家に招待したことが一度もなかったことに気が付いた。
最近は特に忙しくもなく、穏やかな日を過ごしているので、
「うん、まあ、いいじゃない。都合のいい日に来ていただきましょう」
「わぁ! ありがとうございます!」
ヴィオラの家族を屋敷に招待することになった。
たまたま領地からうちの両親が来ていたのだが、その話を聞くと諸手を挙げて賛成し、
「あらあら、まあまあ。ヴィーちゃんのご両親と懇ろにお話するのって初めてよねえ。粗相のないようにしなくっちゃ!」
「うちの愚息がお世話になってますとか、挨拶すればいいかな?」
「…………」
母上は目を輝かせて「何を話そうか」「どんなおもてなしをしようか」と今からそわそわし、父上はどんな挨拶をしようか首を捻っている。
でも父上、その挨拶はどうかと思うんですけど?
そして迎えた来訪日。
「最近はいい糸が量産できるようになりましたので、できのいい織物を作ることができるようになりました」
「ユーフォルビア領の織物は秘かに人気が出てきていますからねえ。量産の秘訣は何でしょう? うちでも参考にしたい」
「そんな、公爵領の織物と比べたら月とすっぽん、お恥ずかしい限りでございますよ。でも品質が向上した秘訣というか、コツというか……」
父親同士はサロンで領地経営のことや、その他の趣味なんかの話に興じている。
最初、義父上は父上に遠慮しているようだったけど、すぐに打ち解けたようで、もう大丈夫みたいだ。前兵部卿と王宮の一般事務官だもんな、ビビるなって方が難しい。
義父上の横にはシスルがいて、父上たちの話に耳を傾けている。
「今の話に出てきた〇〇ですが、それはどういうことですか?」
「それはですね――」
わからないところや疑問がでるとロータスに質問したりしている。話の中に割って入って質問するような野暮なことはしない。小声でそっと、ロータスに聞いているのだ。大人の話を邪魔しないように配慮するなんて、なかなかできるやつだとは思う。
僕はサロンを出て庭園に向かった。
母親たちは庭園に設えられたお茶席で、優雅にお茶とお菓子で雑談中。
こちらはなぜか最初から意気投合していた。同じ『息子』を持つ身だからかな。
「うちの息子、性格があまり良くなくてねぇ」
「まあ、そうですの? とても立派ではございませんか」
「それに引き替えシスルくんのかわいらしいこと! あれくらいの時に戻ってほしいものですわ。ああもう、かわいかったあの子はどこにもいないの……」
「今ではとっても素敵な紳士ではございませんか」
「息子より娘がよかったわ」
「確かに娘はかわいいですわね」
「そうなんですの! ヴィオラさんがうちに来てくれて、私、ホント喜んでますのよ! もうね、息子なんて霞んじゃったわ」
「まあ!」
「「おほほほほ~!」」
それからしばらく娘のかわいさ、一緒にいろんなことができる楽しさを語りだした母上たち。
母上。残念ながらかわいかったころには戻れませんよ諦めてください。しかし最近の母上はどう考えても僕よりヴィオラ贔屓ですよね。
「ロージアにいる間、もっとヴィオラさんと一緒に買い物したりおしゃべりしたり、満喫しなきゃ!」
楽しそうにヴィオラを堪能する計画を立てている母上。まあヴィオラがかわいいのは認めますが、僕よりもべったりするのはやめていただきたい!
僕は庭園を後にし、再び屋敷の中、二階へと向かった。
ヴィオラとフリージアは寝室で、侍女たちのおもちゃ……着せ替え人形になっていた。
「ヴィオラ、入っていい?」
軽くノックをして中に入ろうとすると、
「あ~サーシス様! レディがお着替え中ですから、今入っちゃダメですよ~。後でそちらに行きますから、サロンかどこかで待っててくださーい。――きゃーそれかわいい!!」
中から楽しそうな笑い声とともに入室禁止を言い渡された。何をしているのかとそのまま中の様子を窺っていると、
「フリージア様、この色もお似合いですよ~!」
「このフリフリはどうですか?」
「「「「「ぎゃー!! ナニコノかわいい生き物はっ!!」」」」」
ヴィオラや侍女たちの楽しそうな声が聞こえてきた。ドアノブに手をかけたままガクッと項垂れる僕。
そして。
あれ。気が付けば僕一人じゃね?
父上たちと義弟はサロンに、母上たちは庭園に、妻は義妹と寝室に。
…………。
気付いてしまったことにさらにショックを受ける。
まあでもヴィオラとその家族が楽しそうならいいか……うん、いいんだ……いいんだよ……。
そして僕は、一人静かに自室のベッドにダイブしたのだった。
*** おまけ ***
「サーシス様、サーシス様!」
「……はっ?!」
「お疲れでした? 眠っておられましたよ」
「……疲れてはないけど」(ボソッとw)
「なにか?」
「いや、眠ってたのか。そうだ、義父上たちは?」
「もう帰ろうかという時になってサーシス様のお姿が見えないから、探しにきたんですよ。みんなサロンで待ってます」
「すまない。急ごう。あ、」
「? なんですか?」
「みんなが帰ったら膝枕を所望する!」
「は? まあいいですけど??」
ありがとうございました(*^-^*)




