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ベリスとミモザ ~知られざるベリスのがんばり~

活動報告リクエスト企画より♪


ミモザとベリスのちょっと(けっこう?)前のお話♪

 俺が二十歳になった時、伯父の要請でフィサリス公爵家の庭師になった。

 父方の家系は代々フィサリス公爵家の庭師長を務めており、今は俺の父親の兄がその任に就いている。しかし、その伯父には跡を継ぐべき男子がいなかったので、俺に白羽の矢が立ったのだ。

 なぜ傍流の、しかも次男である俺が指名されたのか。

 それは、俺の兄貴は庶民街で庭師をやっている親父の後を継がないといけないから。だから自由な身である俺が指名されたのだ。


 フィサリス家に就職するというのは、本当に名誉あることだ。超一流のプロフェッショナルという肩書をもらうも同然だからだ。執事・侍女、総ての使用人、下仕えの者までもトップクラスの人材が集まる場所。そんなところに俺のような庶民が就職できるというのは奇跡に等しい。ならばその人たちに認めてもらえるよう、精いっぱいを尽くすつもりだ。


 初出仕を数日後に控えた俺は、自室で静かに荷造りをしていた。というのも、フィサリス家には住み込みで働かないといけないという条件があるから。通いはないのだ。

 実家には滅多に帰ってこれなくなるな、と思いながらめぼしいものを鞄に詰め込んでいると、


「うわ~~~ん! ベリス兄ちゃん、行っちゃやだ~~~!!!」


 とデカい泣き声が隣の家から聞こえてきた。

 

 ――ミモザだ。


 よしよしと宥める声は、うちの母親か。

 両親が忙しいせいでうちによく預けられていたミモザ。ずっとそばで世話を焼いてきた、隣の家の小さな女の子。無愛想な俺に怖がりもせず懐いてきて、「大きくなったらお兄ちゃんのお嫁さんになる!」と、キラキラした目で言うかわいいミモザ。

 そうか、ミモザにもなかなか会えなくなるんだな。

 そう思うと荷造りの手が鈍るのだった。




 フィサリス家で働き出して数年後。実家に帰った時にミモザの姿が見えなかったのでうちの母親に聞いてみると、


「隣のミモザちゃんねぇ、専門学校に通ってるのよ~。あんたを追っかけてフィサリス家に就職するんだって! かわいいこと言ってくれるねぇ」


 ということだった。今日も学校らしく、だから姿が見えなかったようだ。

 そうか、学校に通い出したのか。

 ちょっとその姿を見てみようと、俺は散歩がてら専門学校の方へとぶらぶら歩いて行った。


 学校に着くと、ちょうど授業が終わった時間なのか、生徒たちがぞろぞろと正門から出てくるところだった。

 俺は街路樹にもたれ、ミモザの出てくるのを待った。男子と女子が半々くらいいるな。ここの執事コースは優秀だというのは聞いたことがある。うちの執事のフェンネルさんも、見習いのロータスさんもここの出身だっけ。というか、フィサリス家の使用人はもれなくここの卒業生だけど。

 そんなことをつらつらと思いながら生徒たちを見ていると、ミモザが姿を現した。

 専門学校の制服に身を包んだミモザは、いつもより大人っぽく見えた。楽しそうに笑いながら数人の友達と一緒に歩いている。

 声を掛けようかと思い、手を伸ばしかけたその時。


「あ~、ミモザ! ちょっと待って!」


 一人の男子生徒が後ろから駆け寄ってきて、ミモザを引き留めた。楽しそうだった表情かおを怪訝なものに変え、それでも立ち止まってやるミモザ。


「なに?」

「ちょっと話が」

「え~。私急いでるんだけど」

「ちょっとだけだから!」


 めんどくさそうに答えるミモザにその男子生徒はめげず食い下がる。その顔はミモザに恋する男の顔だ。……これからミモザに告白する気だな、こいつ。

 一緒にいた友達も、男子生徒の雰囲気を読んだのか、「先行ってるね~」とか言いながら、ミモザと男子生徒をおいて先に歩き出す。

 

 俺のかわいいミモザを、どんなやつかもしれないお前なんかにやれん!


 それまで黙って成り行きを見守っていた俺だったが、そう思うと黙って見ていられなくなった。

 俺が無言でつかつかとミモザに近付くと、


「あっ!! ベリスにい……ベリス!!」

「ああ、ミモザ。迎えに来てやったぞ」

「わあい! ありがとう~~~!! 私ベリスと帰るから、ごめんね!」


 パアアと顔を破顔させたミモザが俺に飛びついてきた。『にいちゃん』と呼ばなかったところに、ミモザの意図が感じられる。それは功を奏し、俺たちを見た男子生徒がすっかりその場に立ちつくしている。男子生徒だけじゃない、周りにいた学生たちもこっちを見ている。よしよし、これなら牽制は成功だな。


「なになに、ミモザ~! その人誰~?」

「えへへ~、私のだんなさま~」

「はいはい」

「ひゅーひゅー」

「……」


 冷やかす友達に大胆なことを言うミモザ。まだまだ子供というか。俺は苦笑しつつ(でも周りにはほとんどわからない)ミモザの頭を優しく撫でる。

 悪いな少年。違う子を見つけてくれ。


 それからというもの、俺は前よりもこまめに休みをとり、そしてその度にミモザを迎えに行くのだった。



ありがとうございました(*^-^*)


ベリスはこうして牽制していたwww

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