再会は突然に 〜ユリーさんとリアさん その2〜
ユリダリスさんが王宮で出会った気になるあの子との再会は、意外な場所でしたwww
オーランティアとの戦が終わり、いつも通りの平和が戻ってきたフルール王国。
関係者たちはしばらく終戦処理などの雑務に追われたが、それも一段落した頃。サーシス率いる特務師団が近衛に異動になった。
その異動のごたごたも片付き、新しい部署にも慣れてきたある日。
騎士団屯所での長い会議を終えたところで、
「よっしゃー。今日の仕事はこれで終わりぃ! 久しぶりに奥様に会いに行こう!」
と、綺麗どころトリオが唐突に言い出した。
「はあ?」
あまりに突然だったため、ぽかんとするサーシスと、
「わ~! 姐さんいいこと言いますね~!」
「いいねいいね!」
「さんせー!」
お姉様方の提案に大盛り上がりになる団員たち。
「帰還の儀以来ぶり? オレ、奥様チャージしないと……いだっ!」
「何で、お前が、ヴィオラをチャージする必要がある?」
ガスッとサーシスにケリを入れられる騎士A。椅子から転げ落ち、もんどりうつ騎士A。
「ええ~?! 長い会議の後はお疲れ様の打ち上げはお約束じゃないですか~!」
「誰が決めた、誰が! 百歩譲って打ち上げはいいとしても、それをうちでやる必要性がまったくわからない!」
「ぶーぶー」
団員たちがブーたれ、サーシスは、ゴゴゴ……と背後からブリザードを発生させて部下を見下ろしていると、
「まあまあ、そうケチケチしないでくださいよ~。たまには部下とコミュニケーションとることも大事でしょ」
ひょいっとそこに、ユリダリスが間に入った。
「コミュニケーションとるのとうちに来るのと、どう関係がある?!」
「細かいことは気にするな!」
「気にするわっ!!」
ブチブチキレるサーシスと、気にせず飄々とするユリダリス。
その様子を呆れ半分面白半分に見守っているのは、新しくサーシスたちの上司になったカルディオス・ペルマム近衛騎士団長。
フルール王国では武家として名高いペルマム伯爵家の当主であるカルディオスは、近衛一筋、国王陛下万歳な三十五歳。普段は温厚ながら、仕事に関しては一切妥協を許さない堅物で有名な人物である。ちなみに二男二女のよき父親。
そんな団長に向かって、ユリダリスが、
「団長も一緒にどうです? 副団長んちに遊びに行きません?」
ニカっと笑いながら、もはやフィサリス家に行く態で誘いをかけている。
「だーかーらー、勝手に決めるなっつの! って、団長まで誘うな!」
「ほう! それは楽しそうだな! よし、オレも混ぜてもらおうか」
「団長まで!!」
「さすが団長!」
ユリダリスを止めるサーシスだが、カルディオスは面白そうに話に乗ってきた。
さすがに上司が乗ってきたので、無下に断れなくなったサーシスは、
「……わかりました」
しぶしぶ頷くしかなくなった。
「……というわけで、急なお客です。すまない」
「あらあら、まあまあ!」
げんなりしながら手短に先程のやり取りを話しヴィオラに謝るサーシスと、急な、しかも大勢のお客にびっくりするヴィオラ。
フィサリス家のエントランスは、ただ今満員御礼中。
臙脂色の近衛騎士の制服に身を包んだ騎士団メンツがひしめき合っているのだ。
「奥様ぁ! お久しぶりですぅ」
「無性に会いたくなってきてしまいました!」
「「「わぁ~! 奥様いつみてもかわええ~!」」」
エントランスを入ってきた勢いそのままに、ヴィオラに群がる騎士団メンツ。
「お前ら、ヴィオラに群がるなっ!」
そしてヴィオラから男ども(と言いつつお姉様たちも含む)を引きはがそうと頑張るサーシス。とか言いながら、いつものじゃれ合いにしか見えないのだが。
「……いつもこんななのか?」
「こんなもんです」
その様子を一歩ひいたところから苦笑い気味に見ているカルディオスに、ユリダリスはニコニコしながら相槌を打った。
じゃれ合いが一段落し、サーシスがようやくヴィオラを奪還したところで、
「ロータス、お客様たちをサロンに案内して。ステラリアもお願い」
「「かしこまりました」」
ヴィオラがロータスとステラリアを呼び、指示をしていると。
「!!!!」
それまで楽しそうにサーシスたちを見ていたユリダリスが、突然顔色を変え、ステラリアを指して、声にならない叫び声をあげた。
ユリダリスの急変に、ヴィオラとサーシスは驚き、
「ユリダリス様? ステラリアがどうかなさいました?」
「え……なん……え? え?!」
「どうした、ユリダリス」
サーシスが腕をつかみ、ガクガクと揺さぶりながら問いかけても、まだ口をパクパクさせているユリダリス。ヴィオラとサーシスが揃って首を傾げる。
「どうなさったのですかねぇ?」
「さあ? 僕もさっぱりわかりません」
「旦那様にもわかりませんか~。ステラリア、ユリダリス様をご存知?」
ユリダリスからは説明が聞けないと踏んだヴィオラがステラリアに聞くと、
「ええ、とても有名な方でございますから存じております。それに、何度か王宮でお会いしたことがございます」
「あら、そうだったの」
「はい。お会いしたと言っても、回廊ですれ違うくらいでございますが」
そう答えが返ってきた。
でもやっぱり顔色を変えて固まる理由はわからない。
「ユリダリス様? ……旦那様、ユリダリス様をどうしましょう?」
「ほっとけばいいさ」
「はあ」
いつまでもエントランスというのも失礼だということで、近衛団長以下騎士団メンツがサロンに案内されてなお。
ユリダリスは一人、エントランスで固まっていたのだった。
ありがとうございました(*^-^*)




