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置き去り  作者: 大和香織子
第二章 相沢紀子
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相沢紀子3

 私はあの事件の被害者だと言っても過言ではないと思っています。

 だって、私達の誰かが凶器を持っていましたか?警察の方がきちんと現場検証をしていますよね?

 血だらけの包丁なんてでてきましたか?出て来てないですよね?


 もっとも、私はまだ中学生と言う事もあり、現場には立ち会ってはいませんが。あの時、秋保の死体を見ずに済んだことは不幸中の幸いだったと思います。

 だって、そんなものを見てしまおうものならば、秋保の死体が脳裏に焼き付いて離れそうにないからです。

 知らない人の死体だって見るのは嫌なのに、知っている人それも悪口を言われてきた人の死体なんて見たくはありませんから。


 随分憤っていらっしゃいますが、もし私がここで自殺をしたとしたら、あなたは目を大きく開いたまま見ておくことが出来ますか?一瞬でも瞼を閉じることなくですよ?

 身内が亡くなったということだけに捉われすぎて、私の気持ちなんて到底考える余裕なんてないでしょうからね。

 百聞は一聞にしかず。


 今まで、何も苦しまずにここまで生きてきたのだと、そういう風にお考えですか?秋保は中学にして亡くなってしまった、可哀想だ。それに比べて私たちは今もこうして息を吸って生きているのですから。

 こんな事を言うのはなんですが、あの日秋保が死んでいないにしても、秋保はその後すぐに死んでいたんじゃないでしょうか?


 秋保はそういう運命だったのでしょう。これは、何も秋保のお姉さんに意地悪で言っているわけではありません。そう考えるほかに自分を慰める方法はありませんから。


 私は秋保が亡くなって以来、感情を隠すのが得意になっていました。得意という言い方は……間違っていますね。感情を隠しているわけではなく、感情を表せなくなったという感じです。


 もし、私が感情を出してしまえばあの時の様に、誰かが死んでしまうかもしれない。そう思うと私の顔の表情は強張るのです。

 あの事件以来私は、一度も笑った事はありません。

 そんな馬鹿な?と思いますか。


 でも、私が当時朝倉君の事をすきだと言う事が、秋保の目にも分かるほど私は感情が顔に出やすいんですよ。

 だからこそ、いくら楽しくても辛くても、表情は一定に保っていないといけないのです。そうすることで、これ以上変な事故も起きないのですから。

 でもね、正直いって、そろそろ疲れてきた頃だったのです。私としても。


 だから、お姉さん。

 そろそろ本当の意味で中学生を卒業させていただきます。

 さようなら。私は包丁を手に取り、思い切り自分の首に刺した。


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