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置き去り  作者: 大和香織子
第二章 相沢紀子
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相沢紀子2

「あらい」と言うのは私の事のようでした。友人にもよく言われていますが、野球選手の新井選手に顔が似ていたので、そう呼んだのだと思います。

 「もうけ」というのは、奈々の事です。おそらく、彼女は毛が濃かったので剛毛な毛から来たのだと思います。最後に「あか」ですが、それは優のことです。赤いセーターをブレザーの下に着ていたのでそう呼んだのでしょう。


 いずれにしても、そんな風に名前を付けられるのはいい気がしませんでした。


 それも、悪口しか書かれてありませんでしたし。

 なるべく関わらないように努めてきたはずなのに、こうして陰で文句を言う、秋保のそのネチネチとした所が苦手でたまりませんでした。

 放課後、教室にやってきた秋保を見て、みんなやばっと言う様な顔をしてすぐにそのノートを隠しました。


 しかし、秋保は朝倉君の自画像を自慢したいばかりで、全くそのノートの事にきがつきませんでした。

 秋保の自慢に付き合っている間に、そのノートを見ている事がバレないように隠して欲しいという思いから、秋保の自慢話をすごく羨ましそうにして聞きにいきました。

 その時、私はこうやって自慢して、人の事を誰かと一緒になって悪口を言って、そんな風にしかいきれない秋保を軽蔑的な目で見ていました。


 私が朝倉君の事を好きな事を秋保は知っていたでしょう。

 私は授業中でも、朝倉君を目で追いかけてしまっていましたし、朝倉君を見ていると、秋保とも偶然目が合ったりしていましたし。

 ただ、私から秋保に朝倉君の事が好きだと言う事は一回も教えたことはありませんでした。

 陰険な根を持つ秋保にそんな事を言おうものなら、何をされるかわかったもんではないのですから。


 あの日、秋保が死ぬなんてことは誰も思ってもみませんでした。確かに嫌いな存在ではありましたが、殺すほど憎くもないからです。 

 自分の人生を投げ打ってまで秋保を消す意味が全くない。

 あれは本当に事故でした。


 私たちが、嫌がらせばかりする秋保を残した後、秋保はそのまま足を滑らした。ただ、それだけのことです。

 秋保が死んだ翌日から、私達3人は秋保の事は今まで一度たりとも話していません。秋保のことを言うのも恐ろしかったし、変な責任を負いたくもなかったからです。


 でも、今まで生きてきた中で秋保の事件を一日たりとも忘れたことはありません。

 それは、秋保を助けることができていたんじゃないか、とかそういう事ではなく、自分がその事件に関わってしまっているというその事実が私を苦しめるのです。


 私はその日から今まで薬を飲まないと、眠ることができません。

 その事件で心に傷を負い、病院に行ってから今現在までずーっと、睡眠薬を飲まないと眠れないんです。


 お姉さんが妹を亡くして辛いという気持ちは分かりますが、直接罪を犯したというわけでもないのに、こんなにも苦しいのです。それも、好きな人のせいでならまだしも、そうではなく、嫌いな秋保のせいで、苦しいのです。


 薬を長年飲んできた私は、どんどん強い薬になっていってるんですよ。数を多めにしたりと。



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