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置き去り  作者: 大和香織子
第二章 相沢紀子
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相沢紀子1

相沢 紀子あいざわのりこ


あの日、私は秋保に自慢されました。朝倉君の書いた自画像を秋保がもらっていたからです。

 朝倉君は当時、ファンクラブが出来る程の人気者でした。

 そして、私も好きでした。サラサラヘアーでいて、何を考えているのか全く分からない所など、そういう所に当時の私は魅かれていたんだと思います。


 その自画像を秋保が、誤って窓から落としてしまったのです。棒を使って拾おうとしたりしていましたが、結局自分の手で取るのが一番早いと秋保は窓をよじ登って、狭いスペースの所に下りて行きました。


 その時、先生が教室の方に戻って来たのです。クラブなどが終る時間にはすぐに帰らなければいけませんでしたが、その日は奈々に呼ばれたこともあって、遅くまで残ってしまっていたのです。


 私たちの担任はベテランの先生で、放課後遅くまで残っていることを見つかると、宿題が二倍になるのです。

 宿題が二倍、それも一晩で。秋保の事は少し気がかりでしたが、あそこで秋保も隠れていたままだというふうにも思ったので、秋保を残して帰りました。

 そして、その翌日……。


 秋保が死んでしまってから一か月位は、学校中すごい噂になっていました。勿論窓から誰も出ていけないのは前から言われてはいましたが、それを破る男子生徒も多かったので、そういう人を見つけ次第、保護者に連絡するということになったのと、勿論秋保の事もあったので、以来そこに下りるものを見かけることはありませんでした。


 私と奈々と優の三人でその日は、残っていたのは奈々が見つけたノートを一緒に見ていたからです。

 これから話して行く事は、お姉さんに言いずらいのですが……正直に言いますね。真実を知りたいのでしょうから。


そのノートは秋保をはじめとする数人でしている交換ノートの様な物でした。いけないことをしているような気分にもなりましたが、読み進めるとそこには、私達の悪口のオンパレードでした。


 「あらい」「もうけ」「あか」と名前をつけて一見分からないようにしていましたが、そんなの内容を見て行くうちに、誰の事を書いているのか直ぐに判断できました。


  秋保とは中学から同じ学校になりましたが、中学に入る前から秋保の事は知っていました。


 塾が一緒だったのです。

 当時、塾のクラスは同じ学年でも何組かに分けられるのですが、秋保は一番クラスでした。私は上から二番目のクラスでしたが、秋保の隣の教室でした。

 直接関わることはありませんでしたが、秋保が同じクラスの女の子を泣かしているところを何度も目撃したことがありました。


 物を隠したりしていたようで、泣いている女の子は「返してよ~」と言っていました。そういうのを見ていたので、中学が一緒になって同じクラスになっても、なるべく関わらないでいました。

 だって、そういうことする人は、誰にでも同じことをするからです。そして、気が合いそうな奈々と優と友達になったのです。


 奈々は吹奏楽部でした、とても真面目でした。休むことなんて絶対にしませんでしたから。

 しかし、秋保も同じ吹奏楽だった為、秋保の性格をよく知っているようでした。誰だったか忘れましたが、吹奏楽は陰険で大変だというような事を言っていました。

 はっきり言うようで申し訳ないのですが、そう言われる原因を作っていたのが秋保だと思います。


 私たちの悪口が書かれてあるノートを見て、何故こんな風に書かれなければならないのだろうかと納得いきませんでした。

 まぁ、自分の悪口を書かれて、これは凄い等と褒める人なんていないでしょうけど。


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