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置き去り  作者: 大和香織子
第四章 桜島夏保
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桜島夏保4

 私は恩田君を愛しているとは口だけで、実際の所何一つ恩田君の事を見ていなかった。もう少し心の目で大きく恩田君の事を見てあげることが出来ていれば、こうやって何年も引きずらないで済んだのに。

 恩田君は私の全てでした。


 恩田君の後悔して辛そうにして生きている姿をみるのが辛くて、辛くてたまりませんでした。

 そうして、この子が生まれる前に決断したほうが良い、そう思いながらも結局は妊娠して9か月に入っていました。


 もうすぐ臨月で、このお腹の子はもう少ししたら、私と同じ場所に出てきて、私と同じ場所同じ空気を吸って生きていかなければならない。


 シングルマザーになってしまうこと。それは、デメリットも大きく、一人で両親の二役がこなせるのだろうか?

 赤ん坊など抱いたことがない私が、首の座らない赤ん坊を抱っこしてそして、お風呂に入れたりとそんな事ができるのだろうか?


 そうやって不安に思ってしまい、気が付くと臨月直前だったのです。


 しかし、生まれてからではもう遅いと思ったのです。それから、恩田君を山に呼び出し、そのまま崖に突き落としました。

 遺体が上がった時の彼の顔は、穏やかで苦しんであの世に行った表情ではありませんでした。

 もしかしたら、秋保が彼を迎えに来てくれて、今頃、ごめんねとお互い謝って仲良くやっているのかもしれません。


 そして、今こうして私は捕まったわけなのですが……。

 勿論捕まるなんて思った事は一度もありません。だからこそ、恩田君を殺害することを決意したのですから。


 彼との可愛い我が子を、殺人犯の子供として育てたくなかった。ただそれだけです。

 あぁもう一つは、彼をドン底から救い出してあげたかった。

 その二つだけです。それ以上に他にはありません。


 秋保を殺したのも自分のせいだと言ったのは、恩田君と付き合わなければ、あの日秋保と恩田君が出会う事はなかったのですから。


 でも、恩田君と私は、古い、古い時代からの運命的な相手だったのだと思います。


 こんな事があったからと言っても、恩田君の事を愛している気持ちがそれを証明しているように。


                       __完__


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