表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
置き去り  作者: 大和香織子
第四章 桜島夏保
13/14

桜島夏保3

そして、金銭的に余裕が出てきたことで父親も少しずつ平静を取り戻してきました。秋保が生きていた時の様にとまではいきませんでしたが、お酒を飲むのもやめました。

 そして、毎日私の朝ご飯を作ってくれるようにまで回復したのです。


 しかし、それでも私は日が経つに連れ、秋保の事件が薄れ行くどころか、とにかく真実が知りたくて堪らなくなったのです。そして、彼女たち3人に謝って欲しかった。


「ごめんなさい」自分たちが悪かったと。しかし、3人のうち誰ひとりからも謝罪の言葉は聞くことができませんでした。

 

 そして、謝罪どころから彼女たちの言葉から出たもは、秋保の悪口ばかりでした。

 その事に随分長い事私は怒ってまいりました。相沢紀子さんが自殺されたことには流石に驚きましたが。


 しかし、私、私こそ秋保を殺したといってもいいのかもしれません。

 あの日、秋保は3人で過ごした後に、もう一人の人物と話していたのです。3人組が秋保を見捨てて帰ったあと、その教室に私を探して恩田君が教室に入っていたのです。

 

 恩田君は勿論秋保の事も知っていましたし、私と恩田君で、秋保をクラスまで迎えに行って一緒に帰ることもありましので、恩田君は私を探して秋保のクラスまで行ったのです。


 クラスを覗くと、秋保がサンに手を掛けて教室に入ってくる瞬間だったそうです。

 驚きましたが次の瞬間に先生が、教室の前まできてしまったので、慌てて二人で机の角に小さくなって座って隠れたのです。

 先生が行くまで恩田君は身体が大きいため、秋保の身体に後ろから抱き付くような格好になってしまっていて、恩田君は……先生が行くとそのまま秋保の胸を……。


 しかし、秋保は、「お姉ちゃんに言いつけるから」そう言って怒りはじめました。

 自分のしてしまった事が、学校中の噂になると、そう思い込んだ恩田君は、秋保の手に持っていた自画像を外に投げつけたのです。

 秋保は、好きな男の子が書いた絵が余程大事だったのでしょう、すぐに取りに行きました。

 そして、頭に血が上ってしまった恩田君は、そのまま秋保を下に突き落としたのです。

  そうです、全ての犯人は恩田君だったのです。

 

  恩田君はその事を、ずーっと今まで私に隠していたのです。その話を聞いたのは、私に恩田君のとの子供が出来たからでした。

 恩田君は、純粋に私の事が好きだからだとずっとそう信じて疑いませんでしたが、そうではなく恩田君は自分がしてしまった罪を少しでも軽くしようというそういう思いのほかになかったのです。

 それを早く言ってくれれば、私はずっと3人を恨まないで済んだのに……。

 

 しかし、恩田君の事を恨む気持ちにはなれませんでした。だって、この子のたった一人の父親ですし、私は恩田君の事がとても大切で。

 今でもあの時お金までくれたのは、私を愛しているからだとそう思っています。

 けれど、恩田君は可哀相になる位にして自分を憎んでいました。

 自分がしてしまった事の大きさを……。

 私があんなに苦しかったときにも、恩田君だってしんどかっただろうに、恩田君はそれを言わずに私の事を考えてくれた。

 そして、私は恩田君のその辛い気持ちに気づいてあげることが出来なかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ