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置き去り  作者: 大和香織子
第四章 桜島夏保
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桜島夏保2

 恩田君とは妹の事件が起きる前から付き合っていました。恩田君とは、付き合っては別れてまた付き合って、とそんな繰り返しでした。


 恩田君だけには自分の環境が変わってしまった事を全て正直に話しました。嫌われたらどうしようなどと思いましたが、見る見る痩せて行く姿を見て恩田君は私に「大丈夫か、俺が力になるから」とそういってくれたのです。


 恩田君に話したところで、なにが変わるわけではない。

 ですが、恩田君に私は話してしまいました。私は誰にも相談できずにいたので一人で抱えて潰れてしまいそうだったのです。


 先生には一切相談しませんでした。妹を殺した、実際に妹に手を掛けたのが学校だということではなくても、事件をしっかり解決しようとはしてくれなかったのですから、学校が殺したも同然としか私には思えませんでした。


 学校側がもう少し、捜査に協力してくれていれば、妹は事故扱いになんてならなかったのに……。


 恩田君は私の話を聞いて、腰が抜けたようにして驚いていました。勿論身体を売って生計を立てているということまでは流石に話しませんでしたが、私は恩田君に少しでも気持ちを話せたことで随分と心が楽になったのです。


 身体を売ってしまうしかないこの汚い私を、この人だけは歪んだ色眼鏡で私を見ることをしないと、そう感じれて嬉しかったのです。

 それから恩田君とは、今まで以上に強い絆で結ばれた気がしました。


 生活が大変そうな私を見て、恩田君は高校からアルバイトをして、私にお金をくれたのです。こんなにもらえないし、もらう義理もないと、同情されたようで、悔しかった私はつっけんどにお断りしました。


 しかし、恩田君は「そんなつもりはない、君を守るから」そう言って私を優しく強い愛で説得しました。

 私の恩田君への信頼も絶対的なものでした。


 それから私も18歳を迎えた所で、ホステスになりました。そこでナンバーワンまで上り詰めました。それは皮肉な事に、中学から身体を売っていた人のお蔭でもあるのですが。その人がかなり通い詰めてくれたので。


 それからは、すこしずつホステスだけの収入で生活していけるようになり、好きな物が買えるほどの余裕も出てきました。


 恩田君はホステスをしている私を見ても、何も言いませんでした。彼は純粋でしたし、誰かに何かを強く言う様な人ではありませんでしたから。


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