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スピリスト-精霊とよく似た異能力者たち-  作者: みぃな
6.火山の精霊、フレイア
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6-29 悲しくも楽しげな行進曲



 土が擦れる音が、一定の、ゆったりとしたリズムで刻まれる。

 それに合わせて、歌うような、奏でるような、高い笑い声が幾重にも響いていた。

 まるで本物の幽霊のように、飛び交う火の玉たちを纏うヒイロはひどく無表情だった。まばたきも忘れ、ただ前だけを見て、危なげな足取りで歩いている。

 この町に残された最後の居場所、自室でさえも失った。そんなヒイロが向かう先はもう、校舎裏にある思い出の岬しか残されていない。

 楽しげな笑い声はいつの間にか美しい旋律を刻んでいて、まるでパレードのように夢へと誘う。


 フレイアと出会ってから、あの場所で色々な話をした。

 フレイアにとってはただの暇つぶしだったかもしれないが、ヒイロにとってはかけがえのない、ただ一人の友人と過ごす時間だった。

 青く輝く海と、その上に聳える火山がいつも、二人を見守っていた。


 ヒイロは足を止める。足音とともに、歌声は止まる。

 町の端。そこは崖になっており、すぐ下で海が大きく波打ち飛沫をあげた。


「おじいちゃんはこの場所を、とても神聖なところだと言っていた」


 ぽつりと、ヒイロは呟く。


「本当は許された者以外、誰も近付いちゃいけないって。でもねおじいちゃん、友達に会いに行くことくらい私にも許して。これが最後にするから」


 真紅の瞳が涙で揺れる。

 怒れる火山を真っ直ぐにとらえると、揺れる火の玉たちが一層激しく踊る。


「今なら私もそっちへいけるかな? この背中に翼が生えるかな、フレイアみたいに」


 ヒイロは顔を上げる。

 灰色の空を見上げると、服と髪を大きく靡かせながら両手を広げた。


「――お願い、どうか迎えにきて。そうしたら私、ここから飛ぶわ!」


 高らかな声が、幾重にも反響するようだった。

 それに応えるように、唸り声のような轟音が響いて火山から真っ赤な溶岩が噴き出す。

 天高く打ちあがったそれは、まるで何かが手を広げるようにゆっくりと、町を呑み込もうと迫ってきた。

 降り注ぐ噴石も、火の玉たちに守られてヒイロには届かない。

 涙に濡れた目をそっと細めて、ヒイロは怪しく笑った。



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