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スピリスト-精霊とよく似た異能力者たち-  作者: みぃな
6.火山の精霊、フレイア
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6-2 それは口にすべきではない


 数日前に立ち寄った『カリス』の町。

 リサと別れた翌日、ちゃっかりと『ドリームランド』で遊んだ三人は、生まれて初めての遊園地を満喫した。今度は別行動はせずに三人で一緒に色んなアトラクションを乗って回ったのだが、絶叫アトラクションでケイが撃沈していたこと以外は特に大きなトラブルに見舞われることもなく、その翌日に町を後にした。

 それからさらに数日間、珍しく任務の連絡はなかったので、少しばかりの休暇をのんびり過ごしつつ、町から町へと移動してきた。日暮れまでに移動したり、時には初めて行く町を観光したりして、夜は各町にある政府支部で休むという生活だ。


 そして昨日の夜、任務を命じるメールが届いた。


『クレナ』という町からはほど近い町にいたため、朝から目的地目指してとことこ歩いてきたというわけだ。

 そうして三人の目にようやく目的地が映ったところだが、頭の中がいまだ観光モードな三人だった。緊張感の欠片もなく、元気よく駆け回っている。

 そういった経緯からか、この数日間のハルトによるケイいじりはいつもに増して見事なものだった。普段完全に無視を決め込むナオでさえ、あまりにもケイがかわいそうになったので、ところどころ止めに入ろうとしたほどだ。要するにハルトは、退屈したときにケイをおもちゃにしているのである。

 ちなみに、ハルトがケイをいじるネタは何もナオ(恋愛)関連だけではない。ケイの一挙一動一言一句全てが、ハルトにとってはネタになり得る。まさにここ数日間で一気に滝を登るかのごとく、彼のいじり技能は格段に向上したと言えよう。


「あはは。二人とも楽しそうだね!」


 ナオが弾んだ声をあげた。

 ハルトが無理やり腕を掴もうとしてケイを追い掛け回している。汗だくになって逃げるくらいなら、さっさとされるがままになって反応が薄い方がよほどハルトが飽きるはずなのだが、ケイは一向に学習しない。

 ナオはにっこりと笑う。どうやら今回は止めなくてよいと判断したらしい。

 一体どこがどう楽しそうに見えるというのだろう。ケイはついにくわりと牙を向いた。


「お前らなぁ! いいかげんに……」


 反撃に出ようとしたケイだったが、彼の怒声は突如起こった地鳴りにかき消された。

 ハルトも足を止めて辺りを見渡そうとする。だがそれより早く、地面が激しく揺れ始めた。

 地震だ。それなりに大きい。足元はぐらつくが、ナオは懸命に立って堪えていた。


「ぴょわっ」


 ひときわ大きく突き上げるような揺れに、ナオは尻餅をつきそうになる。だがそれは肩を支えてくれたハルトのおかげで事なきを得た。


「何その奇声」

「バ、バランス崩しただけだもん……」


 突っ込むのは忘れないハルトに、今度はナオが赤面する。それでも小さく礼を述べる彼女の肩を離すと、だんだん揺れが収まってきた。

 ハルトはほっと息を吐く。もう大丈夫のようだ。


「火山が近くにあると地震が起きやすいらしいね。あの町の人、大変だなぁ」

「ほわぁ……怖そう」

「急に来てびっくりしそうだね。住んでたら慣れちゃうのかもしれないけど」

「うーん、そうなのかな。怖いのは怖いよ」


 ナオは背伸びして火山島を見やる。


「あの火山、噴火しないのかな」

「一応活火山らしいけど、ここ最近は噴火してないらしいね」


 ハルトが携帯電話をいじりながら答える。何かあればすぐに検索。政府からの借り物だが、便利なものである。


「今回の任務はね、一応精霊絡みだけど、そんなに大変そうな感じじゃないんだよね。あの火山島の精霊が時々町に来るらしいんだけど、最近特にうろうろしてることが多くなったんだとか。町の人はちょっとやっぱり気になるから、理由があるなら聞いてこいってことらしい」

「うん、じゃ終わったら温泉入りたいな!」

「オレもさんせーい」

「いえーい」


 上がり調子に言うと、ナオとハルトはハイタッチをかわした。ぱちんと良い音が響いてご満悦の様子だ。

 ケイはそんな二人に半眼を向ける。


「……そう言ってた任務に限って、実際はめんどくさかったりしたことあったろ」

「そんなこと言わないのケイ。良くないことは口にしちゃだめだよ」


 満面の笑顔から一転、ナオは頬を膨らまして抗議する。非常によく動く表情筋である。


「いやお前な、ちょっとは危険予測っていうものもしろよ」

「むぅう……」


 正論である。ナオは唇を尖らせた。

 暑さのせいか、ケイはそのまま顔を背けてしまった。ナオはしょぼんと眉を下げる。


「うーん」


 ハルトは携帯電話を仕舞うと、何かを考え込みながら頭を掻いていた。ナオは不思議そうに彼を見やると、視線に気づいたらしいハルトは彼女と目を合わせて口を開く。


「ねーナオ。そういえばオレさ、この『クレナ』の町ってなんか前に名前聞いたことある気がするんだよね。どこで聞いたっけなぁ」

「ふぇ? そう言われてみれば私も……なんだったっけ」


 向かい合うと、二人仲良く頭上に疑問符を漂わせる。だが、どちらも分からないことを考えても答えは出ない。



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