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スピリスト-精霊とよく似た異能力者たち-  作者: みぃな
6.火山の精霊、フレイア
121/258

6-0 少女と精霊(☆)

挿絵(By みてみん)


キャラクターデザイン、絵:meena



 海と空を隔てる線を遮る一つの島。濃い青色に乱反射する太陽光に目を細めながら、その景色を独り占めできる場所。

 そこは精霊の指定席だった。

 その日も気まぐれに飛んできて、一通り町を散策した後、少し翼を休めていただけ。再び飛び立とうと翼を広げたとき、不意に背後から声をかけられたのだ。


「あなたは精霊さん? 初めて見た、とっても綺麗ね」


 その少女との邂逅は、精霊にとってはただの退屈しのぎだった。

 人と接する機会がないわけではない。むしろ、精霊は近隣に住む人間たちとはうまく関わっている方だった。だが、少女をひと目見たとき、他の人間とは違う『何か』を感じて目を丸くした。それが何なのかは、精霊にはわからなかったが。

 少女はぎこちない笑みを浮かべながらも、精霊を見て瞳孔を開く。


「ねぇ精霊さん。私、あなたとお話がしたいな。またここに来てもいい?」


 少しだけならと、精霊は首肯する。

 たまには景色を誰かと見るのも良いだろう。

 悠久の時を生きる精霊の、ほんの気まぐれだった。

 今はまだ幼い少女も、瞬く間に大人になる。きっとそのうち飽きて来なくなるだろう。たとえそうでなくとも、人の一生を見届けるくらいの時間など、戯れにすぎないのだから。


「ねぇ精霊さん。私ね、ひとりぼっちになっちゃった」


 ある日、少女は泣き腫らした目を擦りながら、消え入りそうな声で言った。

 無理矢理歪められた少女の笑顔は、ひどく悲しげで切なかった。

 精霊は困惑する。

 のどに絡まって出てこない言葉を紐解いている間に、少女は顔を上げる。

 突き抜けるような青空を、濁りのない白い雲を、その深紅の瞳に映して、少女は独り言のように言った。


「精霊さんは(はね)があっていいね。私も飛べるなら、お空の向こうを見てみたいな。そうしたら、会いたい人にだって会えるでしょう?」


 赤みが差した小さな頬に、一筋の滴が伝う。

 その動きをじっと目で追いながら、精霊はぐっと口を噤んだ。


 ――翼があっても、精霊は決して空の向こうには飛んで行けない。


 そんなことは、少女には伝える必要もないのだと。

 精霊は翼を広げて舞い上がる。

 少女の頭に手を置くと、精霊は黙ったまま、柔らかな髪をそっと梳いた。

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