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やがて本当の英雄譚 ノーマルガチャしかないけど、それでも世界を救えますか?  作者: 天野ハザマ


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引いても引かなくてもどうせ後悔する

「まあ、その鎧の事はいいわ。合成とかいうのするんでしょ? もう少し引いておいた方がいいんじゃないかしら?」

「……まあ、そうだな」


 単純に言っても8人分の合成だ。ある程度の量の素材用武具はどうしても必要になる。

 それに……そうして引くことで、良い武具が手に入る可能性だってある。

 勿論、生活費や合成費用の件もあるので無制限にとはいかないが。

 山のような素材を抱えて「結局強化できませんでした」ではアホの極みだ。


「なら、あと5回だな」

「その回数には何か意味があるの?」

「アミルが居ないからな……決めておかないと、歯止めが効かなくなる気がする」

「それなら問題ない気がするけど」


 ウルザはそう言うと、立ち上がり扉へと歩いていく。

 その行動にセイルが「まさか」と考えていると……ウルザは扉を開け誰かに話しかけ始める。


「ほら、入ってきなさいよ」

「でも……」

「そんな所で警備してたって、暗殺しようって連中は正面からなんか来ないわよ」


 グイグイとウルザが腕を引っ張って引き入れたのは、やはりアミルだ。

 鋼の鎧やホーリーベルをセイルが預かっているので、アミルが帯びているのは初期装備の剣だ。

 念の為ということで渡しておいたものだが……。


「自由時間と言ったはずだが」

「は、はい。しかしセイル様をお一人というわけには……いえ、その。申し訳ありません!」

「別に怒ってはいない。ほら、こっちに来い」


 セイルに言われ、アミルは恐縮した様子でセイルの近くへとやってくる。

 どうにも真面目というか不器用というか。

 ガレスも相当真面目な方だが、この場に居ない事からしても「息の抜き時」というのは心得ている。

 オーガンやエイスは……まあ、結構同類な気がするのでさておこう。

 クロスは自由だし、イリーナも切り替えが上手い。ウルザは言うまでもない。

 それに比べると、直立不動のアミルはどうにも心配になる。


「そこで立っていられても困る。適当に座れ」

「は、はい」

「それじゃダメよセイル。こういう真面目なのには「適当」とか禁句よ」


 言いながらセイルの横に座るウルザにアミルが「あっ」と声をあげる。


「貴女はまたそんな……!」

「セイルが気にしてないんだからいいのよ。それに今やってる事を考えたら、隣に座るのが合理的でしょ?」

「そうだな」

「ほら」

 

 勝ち誇った様子のウルザにアミルは「ぐ……」と悔しそうな声をあげるが、セイルにチラリと視線を向けられ姿勢を正す。

 その様子を見て、本当に真面目だなとセイルは苦笑する。

 まあ、そういう部分に助けられているところも多いので「直せ」などと言う気はないのだが。


「お前も横に座れ。その方が手間がない」

「セ、セイル様がそう仰るのでしたら」


 セイルの言葉に、ようやくアミルはセイルの横に座ってカオスゲートを覗き込み「あ」と声をあげる。


「これってガチャの画面では……」

「ああ。合成するにはガチャで武具を増やさないといけないからな」

「それはそうですが」

「あと5回引く予定だ。いや、正確には10連を5回だが」


 言いながら、セイルは10連ガチャをタップする。


ガチャ結果:


錆びた剣(☆★★★★★★)

鉄の鎧(☆★★★★★★)

メイド服(☆★★★★★★)

鉄の大盾(☆★★★★★★)

鉄の短剣(☆★★★★★★)

鉄の斧(☆★★★★★★)

錆びた斧(☆★★★★★★)

鉄の棒(☆★★★★★★)

木刀(☆★★★★★★)

鉄の剣(☆★★★★★★)


「……ふむ」

「このメイド服っていうの、たまに出てきますけど」

「メイド用だな」


 正確には近衛メイド用だ。同様に執事服は王宮執事と呼ばれるキャラ専用なのだが……。


「着たいなら着てみるか?」

「いえ、それはちょっと」

「そうか」


 アッサリ拒否されつつも、セイルは次の10連ガチャをタップする。


ガチャ結果:


鉄の護身剣(☆★★★★★★)

鉄の杖(☆★★★★★★)

布のローブ(☆★★★★★★)

鉄のブーメラン(☆★★★★★★)

鉄の槍(☆★★★★★★)

ミスリルの盾(☆☆★★★★★)

鉄の短剣(☆★★★★★★)

鉄の刀(☆★★★★★★)

鉄の剣(☆★★★★★★)

鉄の弓(☆★★★★★★)


「よし、ミスリルの盾だ」

「これ狙ってたの?」

「まあな」


 カオスゲートを覗き込むウルザに、セイルはそう答える。

 これをアミルに持たせるかオーガンに持たせるかは考え所だが、元々ある程度の魔法防御のあるオーガンには物理防御を重視して鋼の盾を持たせるというのも手だろう。

 とにかく、これで最低限必要なものは揃った。あと3回。セイルは晴れやかな気持ちで10連ガチャをタップする。


ガチャ結果:


鉄の弓(☆★★★★★★)

木の杖(☆★★★★★★)

木の杖(☆★★★★★★)

鉄のクナイ(☆★★★★★★)

鉄のシミター(☆★★★★★★)

鉄の大剣(☆★★★★★★)

鉄の鎧(☆★★★★★★)

巫女服(☆★★★★★★)

鉄の棒(☆★★★★★★)

鉄のサーベル(☆★★★★★★)


「巫女服、か」


 巫女。東方の国で祭事を行う神職……という設定だが、カオスディスティニーでは所謂「支援バフ」……つまり仲間のサポートを行う能力を持ったユニットだった。

 他にも「戦巫女」という攻撃に特化した巫女系ユニットも居たりした。

 セイルが覚えているのは2人。


 巫女ケイ。弱気な少女で、しかし秘めたる才能は高い……という設定だった。全体的な能力は低いが、各種バッドステータスの一定確率での解除と回復を同時に行う「祓いの儀」というアビリティを持っていた。


 戦巫女クウカ。こちらはケイとは逆に強気で、アビリティも魔族、アンデッドなどにダメージ補正のある「破魔(小)」だった。


 どちらが居ても今回の戦いの役に立っただろうが、居ないものは仕方がない。

 そんな考えにふけるセイルに、ウルザが横から「その巫女服とかいうのが好きなの?」と聞いてくる。


「いや、そういうわけではないが」

「着てあげなさいよ、アミル」

「なんで私に振るんですか!」


 どちらが着ても似合うと思うが、それを言い出すと収拾がつかないことは分かっているのでセイルは黙って10連ガチャを引く。


ガチャ結果:


鉄のナギナタ(☆★★★★★★)

鉄の杖(☆★★★★★★)

鉄の剣(☆★★★★★★)

鉄の斧(☆★★★★★★)

鉄の斧(☆★★★★★★)

鉄の斧(☆★★★★★★)

鉄の斧(☆★★★★★★)

鉄の爪(☆★★★★★★)

鉄のガントレット(☆★★★★★★)

鉄の弓(☆★★★★★★)


10連で1シルバーを消費。


ガチャ結果:


鉄の弓(☆★★★★★★)

鉄の杖(☆★★★★★★)

鉄の剣(☆★★★★★★)

鉄の斧(☆★★★★★★)

錆びた短剣(☆★★★★★★)

木のトンファー(☆★★★★★★)

鉄の杖(☆★★★★★★)

アイアンショット(☆★★★★★★)

錆びた鎌(☆★★★★★★)

革の鞭(☆★★★★★★)


「……こんなものか。あとは足りなくなったらガチャを引くとしよう」


 ひとまず欲しいものは手に入れた。ならば次は合成だ。

 セイルはカオスゲートを合成画面に遷移させると、手際よく合成を始めていく。

あの時ガチャを引かなければ。そんな後悔をする時、ありませんか?


でもね。引かなくても「あの時ガチャを引いていれば」と後悔する。

人間ってね、そんなものなんですよ。

どの道後悔するなら……どうするのが正解なんでしょうね?


え? ゲームやめろ? ははは、ご冗談を!

愛が消えるまではやめるもんですか!


(なお、天野は結構自重出来てる方です。ホントですよ?)

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[気になる点] ガチャ廃「おおーい!100連してキャラなしとかどうなってんだ!確率いじってんじゃねぇのか!審議だ審議!」
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