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やがて本当の英雄譚 ノーマルガチャしかないけど、それでも世界を救えますか?  作者: 天野ハザマ


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話し合い

 部屋のドアを開けると。ベッドでエイスが二度寝をしているのが見えた。


「……ぐぅ。うひっ」

「……」

「……」


 セイルとアミルは無言。扉を静かに閉めると、そのまま女子部屋へと向かっていく。


「戻りましたよ」


 そう言ってアミルがドアを開けると……そこには、ぐうぐうと寝ているイリーナの姿。ウルザの姿は部屋にはない。


「……セイル様」

「お前はイリーナを起こしてくれ。俺はエイスを起こしてくる」

「はい」


 女子部屋のドアを閉めると何やら怒声が聞こえてきたが、とりあえず聞かなかった事にしてセイルは男子部屋へと戻る。


「おい、エイス。起きろ」

「ぐぉー……」


 軽く声をかけても、起きる気配はない。

 仕方ないとセイルがエイスの肩を揺すれば、ようやくエイスは寝ぼけ声をあげながら目を開ける。


「……んあ? セイル様。もう帰ってきたんですか」

「寝ているところ悪いが、今後の事が決まった。アミルがイリーナを起こしてくるから、しっかり起きてくれ」

「ふへーい……ふぁ、緊張解けると眠るのが楽しいですね」

「そうか」


 そんな事を話していると、ノックの音と共にウルザを除く女子達が部屋へと入ってくる。


「おかえりなさいです、セイル様。話し合いはどうでしたか?」

「ああ、その件についての報告もある」


 その辺りに適当に座る……アミルは立ったままだしイリーナは迷いなくセイルのベッドに座るがそれはともかく、全員の「聞く準備」が整ったのを見ると、セイルは今日の話の要約を話していく。

 それを聞いて頷いていた面々の反応は様々だが、デーニックに不信感を持ったのは共通しているようだ。


「……なんかありそうです、この町」

「そうですねえ。この国って比較的小国なんでしょう? ヤバいんじゃないですかね」


 イリーナとエイスの反応はそれぞれだが、唯一アミルは黙ったままだ。


「アミル、お前はどう考える」

「え、はい。確かに怪しいかと……断言はできませんけど」

「ああ。確かに断言はできない。だが俺達が積極的に関われるわけでもない。王都へ向かうわけだしな……」


 そのついでに王女の耳に入れておいてもいいかもしれないが状況次第だろう。


「その王女様ってのは平気なんですかね。まーた妙な話押し付けられるんじゃ……」

「またってお前……」

「東方のお姫様の時の事忘れたとは言わせませんよ」


 東方のお姫様……カオスディスティニーのストーリーの話だと気付いて、セイルは咳払いする。

 確か日本風の国であり、色々と面倒事を押し付けられ解決していくのだ。

 ちなみに、そのお姫様自身は星5のユニットである為ノーマルガチャで仲間になる事はない。

 東方ユニットは「侍」「忍者」「巫女」「陰陽師」など特殊なものが多く、何かと扱い辛かったな……などと思い出す。


「まあ、その辺りは分からんが、このままアーバルに留まるよりはマシなはずだ」

「そりゃそうですね」


 あっさりと頷いたエイスに続き、他の面々も肯定するように頷く。


「此処より情報が多いのも確かでしょうね。当然、隠密の類もそれなりの数潜んでると考えるべきではあるのでしょうが」

「だろうな」


 ウルザのような暗殺者とは言わずとも、他の国のスパイの類はいるはずだ。

 あくまで一冒険者というセイルに関わってこずとも、王女と接触すれば自然とそういう輩と関わる機会も増えるかもしれない。

 そうしたリスクを踏まえても、前に進むべきだとセイルは判断している。


「反対意見や懸念があれば聞くが……どうだ?」

「異議なし、です」

「へーい、同じく」

「私もセイル様のお望みのままに」


 アミルだけ微妙に自分の意見とは違う気がしたが、この場の全員が賛成であると判断し頷いた。


「ではウルザが帰ってきたら、その情報とすり合わせも行うが……基本方針として、俺達は明日から王都ハーシェルへと出発する。各自に金を渡すから、必要なものがあると思えば仕入れてきてくれ。俺の分はアミル、お前に任せる」

「え?」

「嫌だったか?」

「いえ、まさか! でも、私でよろしいんですか?」


 そんなアミルの問いかけに、セイルはきょとんとした顔をする。


「何言ってる。この面子でなら、お前が一番しっかりしてるだろう? 是非任せたい」

「そ、そういうことでしたら! このアミル、全力で任務を遂行します!」

「ああ、頼む」


 そう言うと、セイルは3シルバーを各自に渡していく。

 初期資金から考えれば大盤振る舞いだが、それでも3ゴールド16シルバー72ブロンズ残っている。


「アミルに買い物任せるのはいいけど、セイル様は何するの?」

「俺か? 俺は……これだ」


 そう言うと、セイルはカオスゲートを取り出してみせる。


「ガチャ、ですか」

「それもしようと思うが……資金に余裕が出てきたからな。武器の合成をやっておこうと思う」


 武器の合成。つまりはいらない武器を材料として使う武器をレベルアップさせる事である。

 現実では有り得ないような機能である「合成」は、この世界においては大きな武器だが……相応の金もかかる為、今までは資金の心配もあり実施していなかった。

 だが、資金が潤沢である今は要らない武器を武器屋に売って稼ぐといった真似も必要ない。


「まずは俺のヴァルブレードをレベルアップさせる。それだけで大分違うはずだ」

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