表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やがて本当の英雄譚 ノーマルガチャしかないけど、それでも世界を救えますか?  作者: 天野ハザマ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/228

オーク集落の戦い

 オークの集落。ギルドの職員がオークの小集落と呼んでいたそれはもはや、大集落とまではいかないまでもそれなりの規模へと成長していた。

 森を切り開き防御柵を作り、入り口には見張りをも立てている立派な「集落」である。


 戦闘員だけで28人。いずれ戦闘員に成長するであろう者が6人。雑事担当が10人。

 雑事担当といっても戦闘力がないわけではなく、ゴブリン程度であれば充分叩き殺せる。

 そして、この集落のリーダーを合わせれば森では最強と言ってもいいだろうとオーク達は自負していた。


 たまに人間がチョロチョロと森に入ってくることも知っていたが、最近は来ない。

 このまま集落の規模が大きくなっていけば、食料も足りなくなってくる。

 ならば、森を出て人間の領域に侵攻する必要も出てくるだろう。

 その日は遠くない。そう考えていただけに……村の入口に立っていた見張りのオークは、その人間達の姿に驚愕した。

 コソコソと覗くのではなく、真正面からやってきた5人の人間の男女。

 武装したそれらが敵だと気付かないはずもない。

 だが、「まさか」という思いも同時に湧き上がる。

 コソコソしながらゴブリンとやり合う程度が関の山の人間がまさか、こんな。


「テ……」


 敵襲だ、と見張りのオークが叫ぶその前に。ヴァルブレードを掲げたセイルが鬨の声をあげる。


「攻撃開始!」


 ガシャンッ、と。一斉に武器を構える音が鳴り響く。


「敵襲ダアアアアアアア!」


 叫び武器を構える見張りのオークを、突進するセイルのヴァルブレードが切り裂き倒す。

 その横を闇纏いを発動させたウルザがスルリと入り込んでいき……オークの誰もがそれに気付かない。

 イリーナの魔法とエイスの矢が迎撃に出てきたオーク達へと降り注ぎ、その前には鋼の装備に身を固めたアミルが立つ。


「弓兵! アノ魔法士ヲ……!」


 弓を構えたオークがイリーナを狙おうと走り出し……しかし、次の瞬間には血を吐いて倒れている。

 ゆらりとその背後から消えたウルザに誰も気付かず、しかし何者かがいることだけはオーク達にも理解できる。

 理解できる……が、それをゆっくり探させるほどセイルは弱くない。


「囲メ! 囲ンデ倒セ!」


 木製の盾を構えていたオークが叫ぶが、その盾ごと腕を切り裂かれ絶叫をあげる。

 木製の盾といえど弱いわけではない。

 矢であれば防げるし、鉄の剣だって場合によっては防げるだろう。

 だが、ヴァルブレードは無理だ。ただそれだけの不運。


「よし、いける……!」


 半ば自分という存在を囮にした突撃作戦は順調。

 このままであれば……と、そう考えたセイルの視界の隅に、何かが映る。

 集落のあちこちにある小屋の中の一つから、のっそりと出てきた巨体。

 他のオークとは違う、立派な装備。


「人間メ……ワザワザ殺サレニ来タカ!」


 じゃらりと、ゴブリンの頭蓋骨か何かを繋げたネックレスが音を鳴らす。

 巨大な盾は金属製。手に持つのは、やはり金属製の巨大で肉厚の剣。

 簡素な鎧と兜まで身に着けたその姿は、このオークの集落を纏めるリーダーであることを示している。


「オークのリーダー……ジェネラルか!?」

「如何ニモ!」


 その巨体からは考えられぬスピードで、オークジェネラルはセイルに向けて跳ぶ。

 地面を蹴り、一瞬で距離を詰め大剣を振るう。


「くっ!」


 受けるか受けまいか、一瞬の躊躇の後にセイルは一撃を回避する。

 ズガン、と。まるでハンマーで地面を叩いたかのような音と共に地面が爆砕し、土が舞う。

 一撃が重い。

 横を通り抜けた攻撃の重さに、セイルはゾクリとする。

 ガラ空きになった胴へとセイルはヴァルブレードを振るい、しかしオークジェネラルはバックステップでそれを回避する。

 同時に回転するように振るわれた大剣がセイルを両断せんと迫り……セイルはヴァルブレードを突き立て防御する。


「ぐっ……!」


 ヴァルブレードはオークジェネラルの振るう大剣を傷一つつく事無く防ぎきるが……セイル自身はそうはいかない。

 筋肉の化物のようなオークジェネラルの一撃はビリビリと響くような衝撃をセイルへと伝え……だが、それでもセイルはその場に踏み止まる。


「ヌ……ッ」


 そして、その事実がオークジェネラルに僅かな疑問と焦りを生まれさせる。

 自分の力で吹き飛ばなかったものなど今まで無かったというのに、目の前の人間が耐えた。

 その事実が、オークジェネラルに「脅威」を感じさせたのだ。

 そして同時に、セイルも確かな手ごたえを感じ取る。

 オークジェネラルは強い。強いが……勝てない相手ではない、と。


「いくぞ……オークジェネラル!」

「調子ニ乗ルナヨ人間!」


 オークジェネラルの大剣と、セイルのヴァルブレードがぶつかり合う。

 攻撃範囲はオークジェネラルが広い。

 だがそれもセイルが懐に入ってしまえば利点は無くなる。

 その「最速」を出せないのであれば、互いの力に明確な差でもない限りは必殺とはなりえないからだ。


「オ、オオオオオオオ!」

「うおおおおおおおお!」


 剣と剣が、ぶつかる。

 剣戟の音が、響き合う。

 オークの集落での乱戦の中で……この空間だけは、誰も入り込めない空気に満ちていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 異世界人の言語を理解し話すオークって天才w
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ