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やがて本当の英雄譚 ノーマルガチャしかないけど、それでも世界を救えますか?  作者: 天野ハザマ


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王城捜索

 夜の王城は、明かりで照らされ暗いということは基本的にない。

 ライトエルフ達の侵入の件もあり巡回警備も強化されてはいるが、セイル達が誰何されることはない。

 恐らくはアンゼリカから何かしらの通達が出ているのだろうと、セイルはそんな事を考えながらアミルと廊下を歩く。


「それでセイル様、まずは何処を?」

「そうだな。基本で言えば玉座の間だろうが……」


 玉座の間。王権を象徴する場所に手掛かりが隠されている可能性は高そうだ。

 流石にキングオーブそのものは存在しないだろうが、隠し通路くらいはあるかもしれない。

 あとはアンゼリカも探したという宝物庫だろう。

 警備が厳しくても不自然ではないという意味では、王の寝室と同じくらい可能性が高い場所だ。


「……宝物庫に行ってみるか。アンゼリカが見落とした何かがあるかもしれん」

「はい!」


 言いながら、セイルとアミルは二人で歩いていく。

 迷いない足取りに、アミルはふと疑問に思いセイルを見上げる。


「……セイル様。宝物庫の場所、ご存じなんですか?」

「いや、知らん」

「えっ」

「とりあえず地下に向かえばあるかと思ってな」


 その為地下への階段を探して、まずは1階に降りてみたのだが……アミルの目はじっとりとしたものに変わっている。


「セイル様、流石にそれは……」

「駄目か?」

「駄目とは申しませんが……」


 不満だ、と言いたげなアミルの視線に耐えかねて、セイルは両手をあげる。

 適当に歩いていればまたカオスゲートに何か反応があるのではないかという探索ゲーム的な要素を楽しんでいたとは流石にアミルには言えなかったのだ。


「分かった、その辺の兵士に聞こう」

「それが宜しいかと」


 アミルの同意を受けて、セイルは近くに立っていた兵士へと近づき問いかけようとして。

 喉から出かけた言葉をグッと堪え「あー……」と迷うような声をあげる。

 その理由は単純で「さて、どう問いかけたものか」というものだ。

 たとえば明快に「宝物庫を探してるんだが、何処にある?」と聞いたとしよう。

 まるっきり不審者だ。セイルが兵士なら、そんな事を聞いてきた奴は牢にぶち込むかもしれない。

 しかしそうなると、なんと聞いたものか。


「え、えーと。セイル様。何か……?」

「ん、いや。探し物があってな。アンゼリカの許可は出ているんだが」

「はあ、何をお探しですか?」


 問われた兵士は当然そう問い返すが、セイルは言葉を選ぶように「んー……」と唸る。


「何、というかなんというか。とりあえず宝物庫に行ってみるつもりなんだが」

「宝物庫、ですか」


 兵士は多少疑わしげな視線をセイルへと向けるが、やがて1つの方向を指し示す。


「そこの角を曲がってください。兵士が2人立っている部屋がありますので、許可が出ているのであれば通してくれるかと思います」

「そうか、助かる」

「いえ」


 敬礼する兵士に礼を言うと、セイルはアミルと共に角を曲がる。

 

「もう少し自信を持って言われても良かったのでは……」

「俺が逆の立場だったらと考えると、どうしても……な」

「まあ、それは……」


 ウルザがこの場にいたら「堂々としてた方が怪しまれないのよ」とか言ったかもしれないが、残念な事にウルザは部屋で寝ている。

 そしてアミルは上手い言葉など出てくるはずもなく、自分でもそうなるかな……などと考えてしまっていたが、それはさておき。

 言われた角を曲がると、立派な鉄の扉の前に立つ2人の兵士の姿があった。


「すまない、ちょっといいか?」

「セイル様とそのお仲間の方ですね。アンゼリカ様より「行動を妨げるな」と命令を受けております」

「そうか」


 正直、過分な信頼であるとはセイルも思う。

 何しろセイル達が入ろうとしているのは、王城の宝物庫なのだ。

 国宝の類がたくさん収められているであろう場所に、何処の馬の骨とも知れぬセイルをフリーパスで通そうというのだ。豪胆、という言葉ではすまされないものがある。


「中の物は細かくリストアップされておりますので、触れた後は元の場所にお戻しください」

「ああ」

「何かありました際には、我々にお声かけを」

「そうさせて貰おう」

 

 セイルを警戒するというよりは疑いをかけないようにする為であろう注意をすると、兵士達は扉を開く。


「それでは、どうぞお入りください」


 自動で灯るものなのか、それとも一斉に灯せるものなのか……灯りがつき明るい宝物庫の中へとセイル達は入っていく。

 しかし、思っていたよりも小さいその部屋にあるのは、隅にある下階段1つのみ。


「……なるほどな。この下、というわけだ」

「セイル様。私が先に降りて安全を確かめます」

「そんなに気にする事でもないと思うが」

「いえ、これが私の責務です」


 そう言うと、アミルは階段を降りて行き……その後を追うように降り始める。


「あっ、どうして一緒に来ちゃうんですか!?」

「別にいいだろう」

「困ります!」

「俺は困らん」


 そう返すとアミルは不満そうな顔になり、そんなアミルを見てセイルは思わず小さく吹き出してしまう。


「何がおかしいんですか」

「くくっ……いや、すまない」

「もう!」


 拗ねてしまった様子のアミルに謝りながらも、セイルは宝物庫を見回す。

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