第九十九話
「火災発生ェッ!!」
「消火急げェッ!!」
「一色放水器のバルブを回せッ!!」
赤城艦長の水原大佐は応急隊に指示を出しながら上を睨む。上空にはまだ数機のヘルダイバーが急降下爆撃を敢行していたのだ。
「取舵二十ッ!!」
操艦手が慌てて舵を左に回すが数機のヘルダイバーは四百五十キロ爆弾を投下して離脱した。
「衝撃に備えろォッ!!」
二回赤城が震えた。爆弾が命中した証である。
ヘルダイバーが投下した四百五十キロ爆弾は中部飛行甲板に二発命中した。これにより赤城の母艦機能は無くなった。
また、アベンチャー雷撃機が接近してきたが、これは高角砲や対空機銃が撃ち落とすか追い払った。
次に狙われたのは空母飛龍だった。飛龍は高速を生かしてヘルダイバーからの急降下爆撃を回避していたが、最後のがかわしきれずに中部飛行甲板に命中した。
「左舷からアベンチャー雷撃機三機接近ッ!!」
飛龍の隙を狙おうと三機のアベンチャー雷撃機が接近してくる。
「撃て撃て撃てッ!!」
飛龍の左舷高角砲や対空機銃が射撃を開始して一機を海面に叩きつけたが残りの二機は魚雷を投下して離脱する。
「面舵二十ッ!!」
飛龍は直ぐに回避運動をするが左舷前部と中央部に魚雷が突き刺さって命中した。
飛龍は左舷に傾斜するが右舷に注水して復原するが速度は二八ノットに落ちた。
最後に狙われたのは空母雲龍であった。雲龍は八機のヘルダイバーから急降下爆撃を受けて五発の四百五十キロ爆弾が飛行甲板に命中して炎上した。
幸いにも沈没するような危険は無かったが、雲龍は赤城同様に海に浮かべる箱船であった。
此処で米攻撃隊は力尽きて帰投していく。
「消火活動を急がせろ。奴等はまた来る」
「赤城と雲龍はどうしますか?」
「……第三機動艦隊と合流するように伝えろ。大西にも連絡しておけ」
「分かりました」
「戦闘機隊の戦果はどうだ?」
「まだ詳細は分かりませんが、かなりの航空機を落とした事は間違いありません」
迎撃隊は獅子奮迅の活躍をしていた。迎撃隊は零戦八機がヘルキャットに撃墜されはしたが、ヘルキャット四五機、ヘルダイバー四七機、アベンチャー六二機を撃墜していた。
アベンチャーの被害が多いのは仕方ないだろう。アベンチャー隊は対空砲火が激しいところへ突入したのだ。
「乗組員とパイロットには十分な休息をとらせろ」
「失礼しますッ!!」
その時、通信兵が艦橋に上がってきた。
「第二機動艦隊の彩雲から入電ッ!! 『我、敵空母部隊発見セリ』ッ!!」
「……見つけたか」
報告を聞いた小沢長官はニヤリと笑った。第二機動艦隊から発艦した彩雲七号機が第一機動艦隊に対しての第三次攻撃隊を発艦させている最中に発見したのだ。
「いましたね長官」
「うむ、奥宮。攻撃隊の準備は?」
「後は長官の発艦命令だけです」
奥宮航空参謀は山口長官の問いにそう答えた。
「よし、全機発艦せよッ!! 目標は敵空母だッ!! 雑魚など放っておけッ!!」
直ちに第二機動艦隊の各空母から攻撃隊がカタパルト等を使って発艦していく。
その時、金剛の対空レーダーが接近する航空機を捉えた。
「米軍の索敵機のようです。落としますか?」
「放っておけ。どうせ、落としても直ぐに連絡が無いからバレる」
山口長官はそう言った。そして索敵機のアベンチャーが第二機動艦隊を発見した。
「ヤマグチの機動部隊だとッ!!」
「如何致しますか長官?」
「………」
この時の米機動部隊は第三次攻撃隊を発艦させて第四次攻撃隊の準備に取り掛かっていた。
「第三次攻撃隊はそのままオザワの機動部隊へ向かえ。ヤマグチの機動部隊には第四次攻撃隊を当たらせる」
ハルゼーはそう決断した。
「しかし長官、そろそろ第一次攻撃隊が帰還してきます」
「ぬぅ……」
「このままですと、第四次攻撃隊を出させるなら第一次攻撃隊は燃料切れで不時着水を余儀なくされます」
「………」
ハルゼーは頭を抱えた。新たな機動部隊の対処に悩む。
「……良かろう。先に第一次攻撃隊の収容をしよう」
ハルゼーはそう言った。それは史実のミッドウェー海戦に似たような状況であった。
その頃、第一機動艦隊では米軍の第二次攻撃隊を探知していた。
「流石はハルゼーだな。山口や大西のような猪突猛進だ」
「長官、そう言っている場合ではありませんぞ」
苦笑する小沢長官に古村参謀長は溜め息を吐いた。そして今度は後方から新たな航空機群を探知した。
「後方からだと? ……まさか大西か?」
後方から飛来してきたのは大西中将の第三機動艦隊から発艦した陣風五四機であった。
第三機動艦隊は、攻撃隊の飛来を知らせた彩雲の電文を受け取ると、大西中将は空母千歳と千代田に船団の護衛を任せて最大速度で第一機動艦隊に向かっていたのだ。
「第一機動艦隊を壊滅させるわけにはいかんッ!!」
空母隼鷹の艦橋で大西中将はそう叫ぶ。ともあれ第一機動艦隊は新たな仲間が増えるのであった。
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