第九十八話
米機動部隊から発艦した第一次攻撃隊は戦闘機八十機、艦爆七二機、艦攻七二機と二百五十機余りであった。更に第二次攻撃隊は戦闘機同じく八十機、艦爆八五機、艦攻八二機の編成であった。
更に米機動部隊は第三次と第四次の攻撃隊を編成中であった。
「目標は一に空母、二に空母、三四が無くて五に空母だッ!!」
空母エセックスの艦橋でハルゼー長官が吠えている。
それもそのはずであり、攻撃隊のパイロット達はハルゼーやフレッチャー達が鍛えに鍛え上げたパイロット達ばかりであり攻撃の戦果は確信していたりする。
「ジャップの空母が沈んでいく様子が分かるぜ」
ハルゼーはニヤリと笑う。しかし、日本側は徹底的に防空網を敷いていた。
「彩雲を飛ばそう。迎撃態勢を整える」
小沢長官はそう指示を出す。先手は米機動部隊に打たせる事にしていた。この時、第一機動艦隊の空母は大鳳、赤城、飛龍、銀鶴、雲龍、天城、笠置、防空空母として祥鳳、瑞鳳、龍鳳の十隻の空母がいた。
それを守るように戦艦比叡と霧島、巡洋艦部隊、不知火型駆逐艦、秋月型防空駆逐艦が輪形陣を敷いての布陣であった。
秋月型防空駆逐艦は十六隻もあり、長十サンチ連装高角砲が空を睨んでいた。また、金剛型戦艦は改装によって十二.七サンチ連装高角砲から長十サンチ連装高角砲へと交換していた。
小沢長官が彩雲を飛ばしたのは早期警戒機の役目であった。空母や陸上基地に配備されている彩雲は、簡易ながら対空レーダーを搭載していたのだ。
対空レーダーの探知能力は前方で約百二十キロであり、使い方によってはこのような事もあった。
後に日本軍は早期警戒機の開発をしたりして早期警戒の重要さを知る。
それは兎も角、第一機動艦隊からは四機の彩雲が発艦して警戒任務についた。
「今のうちに兵に食事をとらせろ。腹が減っては戦は出来んからな」
「分かりました」
古村参謀長が頷いた。直ちに各艦艇の主計科から兵の食事を載せた台車が動き回る。
飯は握り飯が三個に茹で玉子一個、沢庵が三切れだった。
兵士達は束の間の休息をとる事になった。
それから一時間後、警戒に出た彩雲三号機から緊急電が入った。
「敵の大編隊を捉えたようです。数は約二百五十機」
「うむ、全艦に発光信号を送れ。対空戦闘用意ッ!!」
「了解ッ!!」
直ちに大鳳から発光信号が送られて、飛行甲板で待機していた烈風や陣風、零戦が油圧カタパルトで発艦していく。
対空要員が走り回り、先程は飯を運んでいた台車は今度は機銃弾を運んでいく。
「彩雲の早期警戒のおかげでかなりの戦闘機が出せますね」
内藤航空参謀が安心するように言う。
「油断は禁物だぞ航空参謀。米軍は何をするか分からんからな」
「それもそうですね」
この時迎撃に出せたのは烈風六六機、陣風五四機、零戦五五機であった。
その間でも米攻撃隊は第一機動艦隊に向かっていた。ハルゼー達に徹底的に鍛えられたおかげか一機も乱れていなかった。
迎撃隊と米攻撃隊が遭遇したのは十分後の事だった。
「太陽を背に向けて突撃だッ!! 零戦隊は敵の艦爆と艦攻を狙えッ!!」
迎撃隊指揮官の二階堂少佐は突撃命令を出して自身も操縦桿を倒して急降下に入る。
「太陽の中からジャップの戦闘機だッ!!」
「戦闘機隊は迎撃に当たれッ!!」
米攻撃隊も迎撃隊を発見して迎撃態勢に移る。急いでヘルキャットが上昇するが、迎撃隊の数が多くヘルキャット隊には分が悪かった。
迎撃隊の銃弾が米攻撃隊の艦爆隊や艦攻隊を襲う。
「指揮官機被弾ッ!!」
「各機散開ッ!! 単独若しくは小隊で攻撃せよッ!!」
燃料タンクから墜ちていく指揮官機のアベンチャー雷撃機を見ながらヘルダイバーに乗る次席指揮官はそう叫ぶ。
米攻撃隊は直ぐに分散する。この分散に零戦隊は少し慌てたが直ぐに攻撃隊を追う。烈風や陣風はヘルキャットと空戦をしていた。
「後ろからゼロが迫って来るぞッ!!」
『やられたッ!! 脱出するッ!!』
『オーマイガッ!!』
無線からは攻撃隊のパイロット達の悲鳴が聞こえてくる。そして攻撃隊は四十数機の犠牲を出して漸く第一機動艦隊にたどり着いた。
「砲撃開始ィッ!!」
各艦艇の主砲や高角砲、対空機銃が一斉に火を噴いた。特に秋月型防空駆逐艦の対空射撃は凄まじかった。
「全機突撃ッ!! ジャップのケツにプレゼントしてやれッ!!」
ヘルダイバー隊がエアブレーキを開いて一斉に急降下爆撃を開始する。
「敵ィィィ急降下ァァァ直上ォォォーーーッ!!!」
大鳳の見張り員が叫ぶ。
「取舵二十ッ!!」
大鳳艦長の菊地大佐は冷静に対処して攻撃を回避していく。
「操艦の技術を見せてやれ艦長」
回避を命令する菊地大佐に小沢長官は応援のエールを送る。大鳳は七機のヘルダイバーに襲われたが爆弾は虚しく大鳳の周囲に至近弾となって水柱を吹き上げる。
「赤城がッ!?」
その時、赤城の前部飛行甲板にヘルダイバーが投下した四百五十キロ爆弾が命中した。
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