第九十六話
七月五日、内地から出撃した艦隊は順調に航行をしていた。
第二機動艦隊はミッドウェー島を迂回して真珠湾攻撃時の航行ルートを通り、第一機動艦隊はミッドウェー島からリシアンスキー島から島寄りに航行していた。
第一機動艦隊の後方には第三機動艦隊と輸送船団、戦艦部隊が航行している。ちなみに戦艦部隊の司令官は宇垣中将であり、戦艦部隊を護衛している水雷戦隊司令官は南雲中将である。(水雷戦隊参謀長には田中少将)
全て専門家の将官が指揮している。
第二機動艦隊が離れて航行しているのには理由がある。密かに真珠湾を再び航空攻撃するためである。
第二機動艦隊は真珠湾に駐留する航空戦力の撃滅の命令を帯びていたのだ。真珠湾に存在する艦隊は第一機動艦隊と第三機動艦隊、それに戦艦部隊で片付ければいい。ハワイの航空戦力を撃滅しなければハワイを攻略する事など不可能であった。
基地航空隊の恐ろしさは史実のガダルカナル島の戦いで証明されていた。
そのため、第一機動艦隊はわざとハワイの索敵線に引っ掛かる役目もあった。第一機動艦隊が索敵線に引っ掛かれば、ハワイに存在する艦隊は出てこざるえない。
その隙に第二機動艦隊が攻撃隊を発艦させてハワイの航空基地を叩くのだ。
「……必ず成功させなあかんな……」
将樹は翔鶴の艦橋でそう呟いた。上空には警戒の烈風に陣風、対潜爆雷を搭載した瑞雲が飛行していた。
「焦る事じゃないぞ楠木」
「山口長官」
「どっしりと構えていろ。獲物は逃げないからな」
ハッハッハと山口長官は笑う。それに釣られて将樹や艦橋にいた乗組員達が笑う。
「だがまぁ……決戦になる事は間違いないだろうな」
山口長官はそう呟き、将樹は頷いた。
作戦予定日は七月七日の七夕であった。
七月七日の早朝、オアフ島から発進したB-17は航跡を発見した。
「航跡だッ!!」
「イルカとかじゃないのか?」
「いや、間違いない。確かに航跡だ」
航跡を発見した偵察員は自信満々に言う。
「……分かった。高度を下げよう」
機長は高度を下げて雲の隙間から艦隊を発見した。
「ジャップの機動艦隊だッ!! 直ちにハワイに知らせろッ!!」
「後方からジャップの戦闘機ッ!!」
B-17の後方から六機の烈風が急降下で迫ってきて主翼に搭載された三十ミリ機銃弾をぶっぱなした。
装甲が厚かったため、初撃で落とされる事はなかった。しかし機体はボロボロだった。
「急いで打てッ!!」
機長はそう叫び、反転してきた烈風の三十ミリ機銃弾がB-17に突き刺さっていく。そして右エンジンから遂に火が噴き、海面に不時着水をしたがB-17から放たれた電文はハワイに届いた。
「偵察中のB-17がジャップの機動艦隊を発見した。アカギがいたから恐らく小沢の機動艦隊だ」
「なら直ぐに出撃するッ!!」
「だがまだ複数の空母がいるはずだ」
直ぐに出撃しようとするハルゼーをニミッツ長官が押さえる。
「そんな暇は待ってられないぞッ!! 待っておけば開戦日のようになる」
「……分かった、出撃を許可する。ただし、無理はするなよ」
「分かっているぜボス」
ハルゼーはニヤリと笑って直ぐに艦隊を出撃させた。
しかし、その行動は伊号潜水艦がたまたま発見したのであった。
伊号潜水艦はアメリカの哨戒網を抜けてから連合艦隊に発信した。
「……ハルゼーが動き出したな」
電文を受け取った小沢長官はニヤリと笑う。
「戦闘機の数を増やせ。補用機の戦闘機もだ、米機動部隊は直ぐに来るぞ」
小沢長官は指示を出していく。
「角田の第三機動艦隊にも戦闘機の支援を要請しろ」
小沢長官は第三機動艦隊にも支援要請をした。使える物は何でも使うのだ。
「山口の艦隊はどうしているかな?」
「今頃は攻撃隊を出しているでしょう」
小沢長官の呟きに古村参謀長はそう答えた。この時、山口中将の第二機動艦隊はアメリカの偵察機からの接触は奇跡的に無かった。
「長官、時間です」
時計を見ていた奥宮航空参謀は山口長官にそう告げた。
「……良し、攻撃隊発艦せよッ!!」
山口長官の怒号が艦橋に響く。命令は直ぐに発光信号で伝えられた。
各飛行甲板には既に攻撃隊が並べられていた。そして発着艦指揮所から白旗が振られて攻撃隊が発艦していく。
攻撃隊は戦闘機百二十機、艦爆百二十機、艦攻百二十機、彩雲六機で編成されている。
そのうち、戦闘機七八機は彩雲二機と共に攻撃隊から十五分早く飛行していた。
これは敵戦闘機を飛び立たせないために先に進行するためだった。また、攻撃隊は全機が低空飛行を言い渡されていた。
勿論、ハワイにあるレーダーに探知されないための措置であった。探知されたなら今までの努力は全てがパアなのだ。
「大丈夫や。あいつらならやってくれる」
水平線に消えていく攻撃隊を見つめながら将樹はそう呟いた。
遂にハワイ攻略作戦が開始されたと言ってもいい状態だった。
「さて、後は戦果を待つだけやな」
将樹はそう呟いた。
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