第八十八話
「露助が突撃してくるぞッ!! 撃って撃って撃ちまくれェッ!!」
塹壕で小隊長が叫びながら九九式軽機関銃を撃ちまくる。
兵士達もソ連軍を近づけないように九九式短小銃を撃ち、手榴弾を投げ込む。機関銃中隊は空になった十二.七ミリ重機関銃にベルトになった弾丸を装填して再び射撃を始める。
『ウラーーーッ!!』
突撃するソ連軍兵士は十二.七ミリ重機関銃の弾丸に四肢を吹き飛ばされて絶命するが、その屍を踏み越えてソ連軍は突撃を敢行する。
それはさながら史実の日本軍のようであった。
「戦車接近してきますッ!!」
その時、二両のT-34中戦車が突破して塹壕に迫ろうとしていた。
「パンツァーファウストだッ!!」
パンツァーファウストを装備した二人の兵士が接近してくる二両のT-34中戦車に照準をして発射した。
発射されたパンツァーファウストの弾頭は二両のT-34中戦車の装甲を貫いて爆発。
二両を撃破した。
「弾持ってきたぞッ!!」
塹壕に三人の一等兵が弾薬箱を抱えて持ってきた。
「有りがたい。そろそろ無くなりかけていたところだ」
小隊長はそう言って九九式軽機関銃の弾倉を受け取って装填をして射撃を始める。
「踏ん張れよッ!!」
日本軍は奮戦していた。
「司令長官、此処はチタから退避してくれませんか? 戦況は少しずつ我が軍の不利になりつつあります」
「………」
今村参謀総長が山下に具申するが山下は黙りこむ。
「……今村、航空部隊はどうなっている?」
「最新の情報では一部の部隊が既にチタに向かっていますが……」
「なら構わない。此処で破れたら後はない」
「長官……」
山下の覚悟に今村は何も言えなかった。その頃、満州里の陸軍臨時飛行場では第二次攻撃隊が発進していた。
第一次攻撃隊九六機は既に離陸してチタに向かっていた。第一次攻撃隊は疾風を主力にしていた。
海軍用の飛行場でも燃料と弾薬の再補給をした第四航空艦隊、第五航空艦隊の攻撃隊が発進している。
「急げェッ!! 味方を死なせてはならんぞッ!!」
第五航空艦隊司令長官の市丸利之助中将は指揮所でそう叫んでいた。
『ウラーーーッ!!』
「畜生ッ!! これで三度目だぞッ!!」
「露助どもは二百三高地でもと考えているのかッ!!」
兵士達はそう叫びながら九九式短小銃を撃ち、ソ連軍兵士を倒していく。
「このままじゃあキリがないぞッ!!」
「此処で死守するしかないんだッ!!」
その時、航空機の爆音が聞こえてきた。それも多数である。
「露助の攻撃隊かッ!?」
九二式重機関銃を撃っていた兵士が咄嗟に空を見上げた。
兵士が見たのは日の丸が付いた航空機だった。
「日の丸……味方だッ!!」
その言葉に他の兵士達も活気づいてきた。
「待たせたなッ!!」
疾風に乗るパイロットは地上で疾風に手を振る味方にそう言いながらダイブした。
疾風の主翼に対地用の噴進弾八基が搭載されていたのだ。
疾風のパイロットは群がるソ連軍兵士達のど真ん中に噴進弾を全弾ぶっぱなした。
発射された噴進弾は地面に突き刺さった瞬間、爆発をしてソ連軍兵士達を吹き飛ばし、薙ぎ倒していく。
「ざまあみろ露助めッ!!」
疾風のパイロットは歓声をあげながら上昇しながら旋回をして再び急降下をする。今度は機銃掃射をするのだ。
陸軍の第一次攻撃隊が攻撃する中、そこに第二次攻撃隊も到着した。
「靖国だッ!? 靖国もいるぞッ!!」
機首に四七ミリ速射砲を持つ靖国はソ連極東軍から恐れられていた。靖国の部隊は腹に搭載していた二百五十キロ爆弾を投下しつつ、二十ミリ機銃をぶっぱなしている。
靖国の部隊が飛行した後は大量のソ連軍兵士が死んでいる。
「ヤスクニだッ!? ヤスクニが現れたぞッ!!」
その言葉は直ぐに兵士達に浸透して浮き足立たせる。
「えぇい、ヤスクニなんぞに動揺するなッ!! 対空戦闘だッ!!」
後方の通信車に乗るソ連極東軍司令官はそう無線に叫ぶ。しかし、部下は首を振る。
「無理です司令官ッ!! 兵士達の動揺が激しすぎて押さえきれませんッ!!」
「ぐ……」
部下の言葉に司令官は拳を握りしめる。
「ヤスクニが来ますッ!!」
その時、一機の靖国がたまたま司令官が乗る通信車の方向へ迫ってきた。
「に、逃げろォッ!!」
通信車は慌てて逃げ出し、それに気付いた靖国が通信車を追い掛けて機首の四七ミリ速射砲を発射する。
砲弾は通信車の右側に着弾して通信車をひっくり返した。
「し、司令官……」
頭から血を流した部下が司令官を探す。司令官は程なく遺体として見つかった。
「司令官……」
ソ連極東軍司令官は上半身を通信車に押し潰されていたのだ。その周りには大量の血の池が出来ていた。
「……撤退だッ!! 全軍一時撤退をするのだッ!!」
残った部下は、今の状況では到底勝てないと判断をして全軍に撤退命令を出したのであった。
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