第八十一話
「(いきなりの痛さに思わず起きると部屋に桜花とクロエがいた……いやマジでわけ分かんねぇよな……)」
むしろ何処のギャルゲーだと言いたい。
「……何故此処に?」
将樹はそう言ってベッドから起き上がり、御茶を沸かす。
「勿論それは……」
「謝りにだ」
桜花とクロエはそう言って床に座り、将樹に向かって土下座した。
「叩いて済まなかったッ!!」
「あの後、市丸司令官から携帯電話を見せてもらったわ。そして漸く理解出来た。貴方は未来から来た日本人だと。そして疑ってしまってごめんなさいッ!!」
二人は床に額をガンとぶつけて将樹に謝る。
「ちょッ!? いきなり謝るなよッ!? 悪いのはそれを隠していた俺なんやからさッ!!」
土下座した二人に将樹は慌て出す。
「いいや、悪いのは私達だ」
「貴方の事は十分に知っていたのに理解しきれなかった。本当にごめんなさい」
二人は自分達が悪いと断固拒否して床にに額をゴリゴリと押しつける。
「いやええから、取りあえず頭を上げてくれッ!! な?」
将樹の言葉に二人は床に押しつけていた顔を上げた。
「〜〜分かった。この場合は俺も桜花もクロエも悪い事にしておこう。それでいこう」
将樹はそう言って両成敗みたいな形で終わらせた。
『本当にごめんなさい』
二人は最後にそう頭を下げる。
「まぁ俺も二人に携帯電話やパソコンを見せなかったからな」
将樹はそう言って御茶を飲む。取りあえず落ち着かないと先に進めない。
「そ、それでなんだが……戻って来ないか?」
桜花がオズオズと切り出した。
「一応は解決した事だしね……そのマサキの部屋は出たままで、掃除はちゃんとしてるの」
クロエがそう言って将樹を見つめる。若干上目遣いだが……。
「……ええのか?」
将樹はそう聞いた。将樹としてはそれは願ってもない事であるが、もし戻ってもギクシャクした関係になるなら此処に(水交社)にいた方がいいと考えているのだ。
「あぁ、また五人になるだけだ」
「まぁ二階は相変わらずギシギシしてるけどね」
「……止めとこかな」
『二階』『ギシギシ』の単語を聞いた将樹はげんなりしながらそう呟いた。
「も、問題は無い。いざとなれば馬鹿兄上を駆逐すればいい」
「……いや駆逐すんのはあかんやろ。この時代って防音技術あったかな?」
まだギシギシは良いらしい。
「丁度上の部屋だから聞こえるからな……」
将樹は溜め息を吐いた。まぁ二人からの励ましも貰い、漸く将樹は水交社での泊まりを終えたのであった。
「ほぅ……漸く仲直りかね?」
「まぁ、市丸司令官も陰でやってくれたらしいです」
あの後、海護司を訪れた将樹は伏見宮と御茶を飲んでいた。
「輸送の方はどうですか?」
「ここ半年は沈没船は無だ。逆にガトー級潜水艦は九隻を沈めて六隻を撃破している」
「撃破は戦果未確認ですか?」
「うむ、漂流物を浮かんで来なかったから逃げたのが正しいだろう」
伏見宮はそう言って御茶を飲む。
「輸送船やタンカーの建造はどうなってますか?」
「新型輸送船やタンカーは速度を全て十八ノット以上で走らせるようにしてある。旧式の輸送船は退役して解体して資源として使う。今の日本は使える物は全て使うからな」
伏見宮はそう言って煎餅を食べる。
「食べるかね? 醤油でだが、横須賀基地で採れた米を使用している」
「いただきます」
将樹はそう言って煎餅をパリッとかじる。バリバリと音を響かせて砕いて飲み込む。
「おにぎりせんべいが懐かしいですね」
「ハッハッハ、楠木でも恋しい時があるもんだな」
「自分はパーペキな人間ではありませんよ」
「そうか」
伏見宮はまた煎餅を食べる。
なお、内地に存在する陸海の基地には食糧の自給として田んぼや畑が耕されている。基本的に基地で食べる米や野菜、サツマイモ等は基地で収穫した作物である。
ちなみに海外での基地でも作物を育てて自給自足の生活が出来るようにしてある。
南方では一番の有名な基地はラバウルだったりする。
「それでは自分はこの辺で失礼します」
「もうかね?」
「えぇ、輸送船の現状を聞きたかったですから。……それに桜花達が家で待っているので」
「……そうか、気を付けてな」
「はい」
将樹は伏見宮に敬礼をして海護司を後にした。
「……あの三人がくっつくのは何時になるやら……」
伏見宮はそう呟き、部下は苦笑するのであった。
将樹は汽車で横須賀駅に向かい、横須賀駅で降りる。そして久しぶりの帰宅道を通り、桐野家へ到着する。
「………」
将樹は服装が乱れてないか調べてから玄関の扉を横に引いた。
「ただいま」
「「お帰り」」
玄関では桜花とクロエの二人が出迎えていた。
「直ぐに夕食にするからな」
「今日は御馳走だからね」
割烹着を着た二人はそう言って台所へ向かう。そこへ桐野少佐とナターリャが来た。
「よう、お疲れさん」
「あぁ」
「お帰りなさいマサキさん」
「うん、ただいま」
将樹は二人にも挨拶をして自室へと入る。
「……久しぶりといっても半年はおらんかっただけやけどな」
将樹は苦笑する。
「将樹、出来たから来てくれ」
「分かった。今行く」
桜花の言葉に将樹はそう答えて向かうのであった。
「今日は飲むからな」
「そして桐野少佐はす巻きやと……」
「……俺そればっかだな」
「ツヨシさんとならす巻きでも……」
「はいはいピンクはまたね」
そして桐野家に久しぶりに笑い声が絶えなかったのである。
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