第六十八話
――六月上旬オアフ島――
「ボス、我々はいつジャップを攻撃するんだ」
太平洋艦隊司令部に乗り込んできたハルゼー中将はニミッツ長官にそう言った。
「……ハルゼー、攻撃したくとも無理だ。戦力が足りない」
ニミッツ長官は溜め息を吐いてハルゼーにそう言った。
「だがなボス、既にエセックス級は五隻もいる。それにサラトガも入れて六隻だぞ」
「……たかが六隻だハルゼー。ジャップはオザワ、ヤマグチ、カクタの三個機動艦隊がいる。それにトラックやマリアナには強力な基地航空隊もいるんだぞ。それにジャップは新型のタイホウを竣工させているし超大型空母の情報も来ている」
ニミッツ長官はハルゼー中将にそう説明した。
「少なくとも、エセックス級空母が十二隻、タイプ97スペシャルに勝てる戦車が配備されない限り侵攻は出来んよ」
「……くそッ!!」
ニミッツ長官の言葉にハルゼー中将は舌打ちして長官室を出た。
「やれやれ、ブルの機嫌は悪いものだな……」
ニミッツ長官はそう言って引き出しから一つの計画書を出した。
「反攻作戦か……」
計画書のタイトルは『ギルバート諸島攻略作戦』と明記されていた。
――ホワイトハウス――
「海軍はまだ反攻作戦をしないのか?」
ホワイトハウスの大統領室でルーズベルトはキング海軍長官に聞いた。
「プレジデント、戦力が足りません。ハワイにエセックス級空母が五隻とサラトガの計六隻がいますが、ジャップの空母艦隊は三個もあります。せめてエセックス級空母が十二隻くらいなければ反攻作戦は上手くいきません」
「むぅ……」
ルーズベルトが唸る。
「……やむ得ないか。幸いにもドイツはソ連に目を向けている。ドイツのティーガー等に勝てる戦車を急ぎ開発せねばならんな」
ルーズベルトはそう言って視線をスチムソンに向けた。
「既に開発はしています」
スチムソンはそう報告するしかなかった。既に開発はしているがまだ開発が完了する事はなかった。
――東京――
「それで弾丸列車の開発はどうなっているかね?」
開かれた会合で山本首相がそう聞いた。
「車両の開発がまだ終わりません。線路の方は東京〜大阪間の構築を作業しています」
鉄道大臣の寺島健がそう答える。
この弾丸列車は後の史実で新幹線となる列車である。
政府は高速道路を建設しながら弾丸列車――新幹線の開発もしていた。勿論理由は輸送を早める事である。
「うむ。出来るだけ早めに頼む」
「分かりました」
山本の言葉に寺島は頷いた。
「ほぅ、これがドイツ軍の短機関銃か」
会合が終わると陸軍大臣の東條英樹は銃の製造工場を訪れていた。
「はい。これがドイツ軍のMP40短機関銃です」
案内役の少尉はそう答える。日本軍はドイツからの武器輸入にMP40短機関銃やMG42機関銃を申し出ていて既に一種類につき百丁ずつの輸入が行われている。
分解も既に完了して今はライセンス生産をしている。
「問題は九二式をどうするかだな……」
東條はMG42機関銃を見ながらそう呟いた。九二式重機関銃はまだまだ現役として部隊に配備されている。長所もあるが短所もある重機関銃だった。
「……配備されたら九二式とMG42のは分けるしかないな」
東條はそう溜め息を吐いた。
中国の今の政府は蒋介石率いる国民党であった。毛沢東の中国共産党は日本軍と協力した国民党との抗戦の末、モンゴルに逃げ込んでいた。
ソ連のてこ入れもあり、今のモンゴルは亡命共産党政府になっていた。極東ソ連軍は旧式の装甲車やT-26軽戦車、T-28多砲搭戦車等を中国共産党軍に輸出して機甲師団を編成させつつあった。
中国国民党軍もその情報を受けて日本に援助を要請した。日本政府内では史実の教訓を元にして、中国に対してはあまり深く入り込むのはしない方針をしていた。
しかし中国が赤化されるのはちと不味い事であり、山本も仕方なく武器輸出を決定した。
野砲はまだ残っていた三八式又は改造三八式野砲を輸出し、戦車は退役して展示品は以外は溶鉱炉にぶちこむ予定だった百式軽戦車を大量に輸出した。
陸軍は戦車部隊の尉官を派遣したりして戦車戦の戦闘を教えていた。
航空機も九七式戦闘機や九九式襲撃機を輸出して航空隊の編成をしていた。
また、戦車に関しては国民党軍も戦車生産の工場を建設したりしていた。更に百式軽戦車に改造三八式野砲を搭載したりと色々と知恵を動かしていた。
国民党軍と共産党軍の緊張は少しずつ膨れ上がっていった。
そして……。
「同志毛沢東。本当にやるのかね?」
「勿論だ同志。今やらねば我が中国は国民党軍の物となってしまう。同志達の武器輸出のおかげで我々は強力な機甲師団を手に入れたのだ」
モンゴルの首都であるウランバートルで中国共産党軍書記長の毛沢東とソ連側の軍人が面会をしていた。
「(……果たして旧式の装甲車や軽戦車等で戦えるか……ヤポンスキーはハルハ河の戦闘では我々より遥かに強力な戦車を出してきたのに……)」
ソ連軍軍人はそう内心で思った。
「我々は中国に侵攻して国民党軍を叩くッ!!」
毛沢東はそう叫んで笑っていた。
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