第六十六話
――五月上旬ドイツ、キール軍港――
「改装は順調のようだな?」
「ヤー」
キール軍港のドックの視察に訪れたレーダー長官は改装作業中の戦艦モルトケを見ていた。
戦艦モルトケ――旧名はリベンジは無事にキール軍港へ到着して改装工事を受けていた。
「ヤーパンは我々にとって有りがたいです。モルトケの全長を少し伸ばしているのでビスマルク型と同じSKC/34型47口径三八サンチ連装砲四基を搭載出来ます」
「まぁその分の費用は取られたがね」
レーダー長官は苦笑する。
隣のドックではロイヤル・ソブリンがリベンジと同様の改装を受けていた。
「しかし……よくドーバー海峡を突破出来たな……」
レーダー長官はモルトケの艦体を見つめた。
二隻の戦艦の移送は成功であった。ドイツ空軍とイタリア空軍がフランス基地に集結して決行二日前からイギリス南部の航空基地やレーダー基地等を爆撃してドーバー海峡周辺の制空権を獲得した。
これによりブレストで待機していた二隻の戦艦とドイツ機動部隊(ビスマルクや小型空母中心)が出撃して上空に戦闘機を配置して一気にドーバー海峡を突破したのである。
ドイツ艦隊のドーバー海峡突破を聞いたイギリス軍は直ぐに本国艦隊が出撃したがレーダー長官はそれを見通してUボートの艦隊を北海配備させて本国艦隊の行動を制限させた。
航空部隊も発進命令が来たが、南部の航空基地は壊滅的打撃を与えられており到底出撃する事は不可能だった。
結局、ドーバー海峡を突破したドイツ艦隊は無事にキール軍港に到着してイギリス軍のメンツをズタズタに切り裂いたのである。
この報告にはヒトラーも愉快そうに笑ったと記録されている。
「兎に角、工事は急がせてくれ」
「分かりました」
レーダー長官の言葉に部下は頷いた。
同じ日、日本では完成した三式中戦車の砲撃試験をしていた。
―――東富士演習場―――
「………三式中戦車『チハ』やな」
将樹は一個小隊四両の三式中戦車『チハ』を見た。
重量は四三トンと重く、普通の戦車で良くないか?と意見が出たが技研の連中が「チハたんは中戦車でなきゃ意味が無いッ!!」と猛反対したため中戦車となった。
武装はドイツから輸入してライセンス生産をした五六口径八八ミリ戦車砲を搭載して、十二.七ミリ機関銃と七.七ミリ機関銃を搭載していて、発煙弾発射機を左右の砲搭に三機ずつ搭載している。更にトーションバー式サスペンションが採用されてはいるがティーガーのような千鳥式配置ではなく、七四式戦車のようなものになっている。
速度は四五キロと中々の速さで装甲は最大で九十ミリと九七式中戦車改より厚かった。
製造は、鋳造製で被弾経始を考慮した傾斜装甲である。
全体的に見れば史実の四式中戦車を改造した感じであろう。
「主砲発射用意ッ!!」
三式中戦車が砲撃訓練に入る。
目標は千メートル先にある捕獲したM4戦車四両である。
「準備完了ッ!!」
「撃ェッ!!」
四両の三式中戦車が一斉に砲撃をした。アハトアハトから発射された砲弾はM4戦車の装甲を貫き、貫かれたM4戦車四両は炎上した。
「………これで日本版のティーガーが誕生したな」
破壊されたM4戦車を見ながら将樹が呟いた。
『万歳ァァァーーーッ!! 万歳ァァァーーーッ!! 万歳ァァァーーーッ!!』
他の戦車兵や関係者は万歳三唱をしていた。
「急いでチハ神社に報告しなければ……」
一部の技術者達はそう呟いている。なお、将樹が未来から持ってゲーム機等は技研で研究されており、ゲームソフトには萌○萌え二次大戦があったりするがそれが原因でチハたんと言っている技術者達がいるかもしれない。それは陸軍最大の謎であったりする。
それはさておき、三式中戦車は直ぐに生産が開始されて、全国の工場はもとより満州の工場でも生産が始められる事になる。満州に最初の一個中隊が配備されたのは一ヶ月後の六月の上旬だった。
素早く一個中隊が配備出来たのは陸軍が三式中戦車の生産を増やすために九七中戦車改の生産を縮小したのである。
更に百式軽戦車の生産も停止して資源を三式中戦車の製造に回した。九七式中戦車は数両が保存されて殆どが戦車連隊から退役して砲搭等は溶鉱炉にぶちこまれ、車体は新たに鉄板を装着してブルドーザーに生まれ変わった。
既に工作隊で活躍していた八九式中戦車や九五式軽戦車の車体を改造したブルドーザーは半数が民間に売られ、残りは溶鉱炉にぶちこまれた。
このように、三式中戦車は対ソ戦のために配備を急がせていた。
しかし、神はそんな時間を与える暇は与えなかった。
「不味い……不味いぞ。ドイツ軍が戦力を増やした……」
モスクワのクレムリンでソビエト連邦の書記長であるスターリンが呟いていた。
ドイツは北アフリカの部隊を東部戦線に投入していた。また司令官もロンメルを投入している辺り、ドイツは相当本気だと分かる。
「ヤポンスキーから満州を奪いたいのにこれでは……」
錬度も低くなっているソ連軍にスターリンは頭を抱えているのであった。
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