第六話
ヒロイン一人登場です。
「え? ライセンス生産は出来ないんですか?」
参謀本部に近い料亭で将樹は杉山大臣に聞いた。
「あぁ、どうやら一昨日の盧溝橋事件でアメリカが難色を示しているようだ」
盧溝橋事件は阻止出来なかった。
一応は盧溝橋付近にいた歩兵第一連隊は参謀本部からの撤収命令を受けて撤収準備をしていた。
しかし中国側から突然の小銃弾による発砲があった。
発砲は一発のみだったが、歩兵第一連隊隊長の牟田口大佐は自衛のために専守防衛で応戦を開始した。
戦闘は小規模だったため杉山大臣等の根回しにより日中開戦は回避された。
既に中国国内にいる日本人や部隊は全て満州に引き揚げている。
中国側は発砲に反論したが、日本軍の撤収に何も言わなかった。
この事件によりアメリカ側は難色を示したのだ。
「まさかこうなるとは……」
「どうするかね?」
「……一つ案はあります」
将樹は天井を見つめていたが杉山大臣に視線を向ける。
「中国の国民党と仲直りの証として武器の取引をするんです」
「何? 国民党とかね?」
杉山大臣が驚く。
「国民党はドイツやらアメリカやら武器を供給されています。勿論ブローニングもあるでしょう」
「だが何と取引をするのかね?」
「余っている三八式野砲です。中国には提供する代わりアメリカの機関銃をくれと言えば何とかなるでしょう」
「ふむ……やる価値はあるな。ではそれで行ってみよう」
この交渉は見事に当たった。
国民党も最初は欺瞞ではないかと疑っていたが、上海に日本国籍の輸送船四隻が到着すると中は百門の三八式野砲とその砲弾が搭載されていた。
これにより提供が真実だと悟った国民党は日本に対して六丁のブローニング十二.七ミリ機関銃とドイツのMG34機関銃七丁とその弾丸を提供した。
「……まさかMG34のオマケ付きがあるなんてな……」
将樹は報告を聞いてニヤリと笑う。
「早速徹底的に調査をしてコピーする予定だ」
「はい。後はドイツからの工作精密機械の到着ですね」
――ドイツ、とある工場――
「おいおい、この精密機械の輸出先はヤーパンじゃないか」
ドイツ人の工員が輸出先の紙を見ている。
「確か昨日も一昨日もだろ?」
近くにいた同僚が工員に訊ねる。
「あぁ、しかし何を考えてるのかね……」
工員はそう言って作業に取り掛かる。
「そういや所長が言ってたな。何でも欧米から取り寄せる精密機械はどれも壊れかけや中古の物らしいぞ? だから輸入をドイツに切り替えたとか」
「……中古の精密機械を使わされるヤーパンが目に浮かぶな」
「ま、ヤーパンが大量にカネを出してくれるみたいだから所長達も張り切ってるぐらいだからな」
工員達はそう言いながら作業を続けるのであった。
「連絡員ですか?」
「あぁそうだ」
参謀本部に近い料亭で将樹はそう言った。
「毎回、楠木君が来てくれるのはありがたいんだが海軍服を着ているからな。何かと目立つのだ」
「はぁ、それは仕方ないですが……」
「済まないな、入れ」
「失礼します」
障子が開き、一人の陸軍士官が部屋に入ってきた。
「陸軍少尉の桐野毅です。楠木少尉の事は杉山大臣から伺っています」
「こ、これはどうも」
桐野少尉が将樹に敬礼をし、将樹も返礼をする。
「これから桐野少尉に言えば桐野少尉が此方に伝えてくるようにしてある。海軍も変革をしないといけないからな」
「……お手数かけます」
その言葉を聞いた伏見宮が杉山大臣に頭を下げた。
「いやいや宮様のせいではありませんよ」
杉山大臣が少々慌てて弁解する。
「それでは私はそろそろおいとまします。ブローニングとMG34を調査したいですから」
杉山大臣はそう言って部屋を出た。
そしてそこで今日の会合は終わり、伏見宮も帰った。
「楠木少尉、よかったらうちに寄りませんか? 貴方の話も聞きたいですし」
「ご迷惑でなければ」
「決まりですね」
二人は苦笑する。
「ただいま帰ったぞ」
「む、兄上おかえりなさい……そちらは?」
二人を出迎えたのは女性だった。
「此方は俺の上司の楠木少尉だ」
「そうか。私は桐野桜花だ」
「……(何か上から目線ぽいけどまぁええや)楠木将樹です」
「兄上、食事は済ましたのか?」
「軽く食べたから少しだけでいい。後は酒だ」
「任された」
桜花はそう言って台所に向かって作業を始めた。
「さ、これで二人です。飲みましょう」
「はい。それと敬語はいいですよ」
「そうか、それは助かる」
桐野少尉は笑いながら日本酒をビンに注ぐ。
「楠木……やはり日本は焼け野原になるのか? 俺にはどうもピンと来ないが……」
「確実になります」
将樹は注がれた日本酒をイッキ飲みをした。
「どんな国も、アメリカと戦えば必ず負けます。例えナチスドイツでも……」
将樹は桐野の目を見てそう言った。
「……そうか。なら俺達が奮戦しないとな」
「はい」
「出来たぞ」
その時、桜花が食事を持ってきた……持ってきたんだが……。
「なぁ桐野さん。この多めのおかずは一体……」
円卓には大量のおかずが並べられていた。
「あぁ私も食べるからな」
「(桜花は大食いなんだ。しかも食べても太らない)」
桐野少尉がこっそりと耳打ちをする。
「(未来の女性が聞いたら睨まれそうやな……)」
将樹はそう思った。
「桐野さん。トイレ……やなくて厠は何処ですか?」
軽い食事を済ました将樹は桐野のトイレの場所を聞いた。
「そこの通路出たら直ぐだ」
顔を真っ赤にした桐野少尉はそう言って日本酒を飲む。
「少し飲み過ぎたなこりゃ……」
将樹はそうブツブツ言いながら厠?らしき扉を開けた。
「「………」」
将樹が開けたのは桜花の部屋だった。
しかも桜花は寝間着に着替えようとしていたところだった。
「〜〜〜ッ!?」
急激に桜花の顔が赤くなりだした。
「(これは俺、死んだな。まぁ御馳走様でした)」
「この……馬鹿者ォッ!!」
ドガァッ!!
「ふんぬらばッ!!」
桜花の回し蹴りが将樹に命中した。
「……大きかった……」
将樹はそう言い残して意識を失った。
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