第五十八話
――1943年一月一日横須賀市――
『明けましておめでとうございます』
元旦の桐野家には将樹達四人がいた。
将樹と桐野少佐は袴を着て、桜花とクロエは着物を着ている。
「……少し胸回りがきついな」
「同じく……」
桜花とクロエは胸の辺りをムニュムニュと触る。
「……新年早々見させてもらいました……」
「同じく……」
将樹と桐野少佐は鼻を押さえていたりする。
「と、取りあえずメシを食べてから初詣に行くか」
桐野少佐はそう言った。
そして四人は御節を食べ始める。
「この蒲鉾は美味いな」
「ふぅん、これがお餅ねぇ」
「やっぱきな粉で食べる餅は美味い」
将樹がきな粉が付いた餅を食べている。
「甘いな将樹。やはりここは砂糖醤油に決まっているだろう」
桐野少佐がドヤ顔で砂糖醤油の餅を食べる。
「餅はきな粉や」
「いいや砂糖醤油だ」
ギランと二人が睨む。
「……私はきな粉だな」
「私もきな粉だねぇ」
桜花とクロエが将樹を応援する。まぁ二人は他の意図もあるが……。
「………」
「フ、桐野涙目ワロス」
色んな意味で勝利した将樹は嬉しそうにきな粉が付いた餅を食べる。
その横では桐野少佐か泣いていたりするが気にしない。
四人は朝食を食べると近所にある神社に来ていた。
「賽銭はどうするんだ?」
桐野少佐が将樹に聞いた。
「五円でええやろ」
「何で五円なの?」
クロエが将樹に聞いた。
「御縁がありますようにやな。ちなみに二人の金は俺が出すわ。かなりあるしな」
将樹が笑う。
ちなみに将樹は他の軍人同様に給料を貰っているが桐野家の下宿代以外はあまり使っていなかった。
会合へ行く時も、経費としていたのだ。将樹は申し訳ないと思うが山本達は「君達のために使いなさい」と言って将樹に支払いを求める事などはしなかったのだ。
「じゃあ俺の分も……」
「兄上は自分で出せ」
桐野少佐が便乗しようとしたが、桜花にバッサリと切られた。
パンパン。
四人は賽銭箱に五円を入れて手を合わせた。
「(彼女が欲しい、彼女が欲しい、彼女が欲しい、彼女が欲しい、彼女が欲しい、彼女が欲しいッ!!)」←桐野少佐。
「(将樹と一緒に……)」←桜花。
「(将樹と……フフフ♪)」←クロエ。
「(日本がアメリカに勝てるように……桜花達が幸せになれるように……)」←将樹。
四人はそれぞれの願いを願ったのであった。
さんが日が過ぎた一月四日、将樹達は新年初の会合をした。
「……今の段階では、占領地域も一旦は停止せねばならんな。輸送力の限界だ」
伏見宮が餅を食べながら世界地図を見ている。
ちなみに会合に集まった全員が御雑煮か餅を食べている。
占領地域は前回に占領したニューカレドニアとニューヘブリデスで一旦は終了とした。
「だが、ニューカレドニアを占領出来たのは良かった。ニューカレドニアにはニッケルがあるからな」
東條は御雑煮を食べながら頷いた。
「当面は占領地域の要塞化と、戦力の増強、高速輸送船と高速タンカーの建造ですね」
「それと商船学校の増設もある。船員が無ければ船は動かせん」
嶋田次官が呟く。
「海護も戦果は上げている。先月の敵潜水艦撃沈は九隻だ」
伏見宮は嬉しそうに言う。
「対潜哨戒機の配備はどうなっているのかね?」
山本首相が航空本部長の塚原中将に聞いた。
「東海ですが、対潜哨戒隊として編制した一個飛行隊二十機が試験的にトラックに配備しています。戦果ですが、敵潜水艦三隻を撃沈したようです」
「うむ。それなら心配はなさそうだな」
伏見宮が頷く。
「それと……ドイツとイタリアからマルタ島攻略支援要請が来ている」
山本首相の言葉に全員が顔の表情を変えた。
「南雲の南遣艦隊は今日、セイロン島に向かっているが……」
南遣艦隊の乗組員は疲れを癒して再びインド洋に向かっていたのだ。
「雲龍型の建造を早めるしかないな」
雲龍型空母は十六隻の計画であり、既に九隻が起工して三隻が竣工していた。
また、旗艦機能を強めた大鳳型空母四隻が建造しており、更に常用百二十機の信濃型超大型空母も四隻が起工予定をしている。
信濃型は大和型戦艦の船体を踏襲して一番艦の信濃が既に横須賀工廠で昭和十五年の一月から建造中であった。
勿論、信濃型の建造は時間が掛かるのは分かっているため、実際には二隻が起工して残りの二隻は計画上の段階であった。
「これだけ建造していてもアメリカには到底建造能力では勝てないからな」
アメリカに滞在経験がある山本首相は溜め息を吐いた。
「そう言えばオーストラリアに降伏勧告を出した件はどうなりましたか?」
将樹が蒲鉾を食べながら山本首相に聞いた。
「はっきりと言えば黙殺されたな。恐らくアメリカとイギリスの横槍だろうな」
「一応、ニューカレドニアには一個潜水隊が駐留している。それにトラックには第一機動艦隊と第二機動艦隊がいる。二個機動艦隊でシドニーやメルボルン、首都キャンベラを空襲してオーストラリアを降伏するしかないだろう。まさか直接上陸して占領するわけにはいかんからな」
堀長官がそう言う。
「その線でやるしかないだろうな。皆もそれで構わないな?」
伏見宮が全員を見ると、皆は頷き、対オーストラリア戦の戦略は決定した。
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