第五十六話
後半はブラックのコーヒーがいります。
――1942年十二月中旬――
小沢中将の第一機動艦隊と山口中将の第二機動艦隊はニューヘブリデス諸島とニューカレドニア攻略のための輸送船団を護衛しながらトラックを出撃していた。
更に増援には第一艦隊も出撃している。
「……まさかまだ司令長官をしているとはな、てっきりミッドウェー海戦後には厄介払いされるかと思っていたが……」
空母赤城の艦橋で小沢中将が呟いた。
「長官はまだ日本海軍には必要な存在ですよ」
小沢中将の傍らにいる古村参謀長がそう言う。
「まぁ長官職であるからには最後までやり遂げるがね」
小沢中将はそう言った。
「内藤航空参謀、パイロット達の様子はどうかね?」
小沢中将は内藤航空参謀に聞いた。
「は、久しぶりの出撃にパイロット達はまだかまだかとウズウズしているようで……」
内藤航空参謀はそう言って苦笑する。
「それに機種の更新も全て終了しています」
第一機動艦隊は、内地に長くいたので新型機の更新を全て終わらせていた。
艦爆隊は彗星、艦攻隊は天山と飛行訓練もしておりパイロット達は新型機が九九式艦爆や九七式艦攻等より高速化しているのを実感していた。
なお、第二機動艦隊はまだ天山の更新が終わっていない。
また、陸軍の九九式襲撃機を保有している部隊は彗星の性能に惚れて九九式襲撃機の後継機は彗星にする事が決定しており、既に二個襲撃部隊が更新を完了していた。
更に協調性をとるために海軍と陸軍の飛行隊は合同飛行訓練をしている。
海軍の飛行隊が教官となり、洋上飛行訓練や対艦攻撃訓練等を陸軍パイロットに教えていた。
このため、陸軍飛行隊は洋上作戦をしやすくなるのであった。
「血気盛んなのは良いが空回りはしてほしくないな」
「そうですな」
小沢中将の言葉に古村参謀長は苦笑した。
「小沢長官、そろそろ攻撃圏内に入ります」
海図を見ていた内藤航空参謀が報告する。
「うむ、敵からの接触はまだだな?」
「はい、まだカタリナ等の接触は無いです」
内藤航空参謀は頷く。
「……もう少し近づいて発艦させよう。無理にするのは良くない」
パイロットを心配する小沢長官の配慮であった。
「分かりました。取りあえずは発艦準備はさせておきます」
「うむ、それで頼む」
内藤航空参謀の具申に小沢長官は頷いた。
そして第一機動艦隊は更に二百キロ近づいてニューヘブリデス諸島への攻撃隊を発艦させたのである。
一方、第二機動艦隊はニューカレドニア攻略に向かっていた。
『電探に反応ありッ!!』
「……零戦を向かわせますか?」
伊崎参謀長が山口長官に聞いた。
「……一撃で片をつけれるカタリナならいいが、相手がB-17ならちと零戦に分が悪いな」
山口長官はそう言って上空を見た。
第二機動艦隊の上空には迎撃の零戦十八機が飛行していた。
「一個中隊を向かわせろ。カタリナなら落とせ。B-17でも落とせ」
「……結局は落とすんですね」
奥宮航空参謀が苦笑する。
直ぐに零戦九機が伝えられた空域に向かい迎撃した。
「迎撃の零戦隊からの報告ではB-17でした。落としはしましたが、時間が掛かり敵に平文ではありますが発信されました」
伊崎参謀長がそう報告する。
「……対空戦の用意をしていた方がいいな」
山口長官がポツリと呟いた。
「まだ攻撃隊の攻撃圏内じゃないですからねぇ」
将樹は海図を見ながらそう言う。
それから第二機動艦隊はニューカレドニアから三回程の双発機以上の攻撃隊から攻撃を受けた。
しかし第二機動艦隊は無傷であった。
護衛戦闘機の護衛無しでは攻撃隊もただ撃ち落とされていくだけである。
「よっと、着艦成功やな」
将樹は迎撃隊の一員として参加していた。
勿論これはパイロット達の疲労を蓄積させないようにクロエと共に迎撃隊に参加していたのだ。
「マサキは何機落とした?」
飛行帽を取り、メガネを掛けたクロエが将樹に聞いてきた。
「あぁB-25とB-24、A-20を一機ずつ。後はクロエとB-17を共同撃墜やな」
「くぅ、此方はA-20が二機とマサキとの共同撃墜……やるわね」
クロエがくいっとメガネを上げる。
「別に対した事はしてないんやけどな……ところでまた零戦にライカを持ち込んでいたんか?」
クロエの左手にはライカがあった。
「まぁねぇ♪ 撃墜写真がまた増えるわ」
クロエはよくライカを零戦に持ち込んで、敵戦闘機や爆撃機を空撮していた。
クロエ曰く「この写真があれば私が撃墜したと言う証拠になるからね」と言っていた。
なお、後の未来でのウィキで使われるアメリカ軍機の空撮写真の半分はクロエが撮影しているものであるがそれはまだ先の話である。
「俺も写真を見してくれへんか?」
「え? い、いや私の腕前はまだ低いからね。うん」
将樹の言葉にクロエは若干焦りながら自室に戻った。
「……何か俺はしたんか?」
残された将樹はそう呟いた。
――クロエの部屋――
宛がわれたクロエの部屋はどれも他の佐官室と同じような光景である。
「さて、また日本に帰ったら現像してもらおうかな」
クロエはフィルムを収めながら呟いた。
「フフ♪」
クロエは机の引き出しから数枚の写真を取り出す。
どれも写真には零戦に乗る将樹が写っていた。
「あまり見せられないのはこれがあるからねぇ」
クロエは苦笑する。
「にゃ♪」
クロエは将樹が写る写真にキスをする。
「今は写真でもいつかは……ね」
クロエはそう言って笑い、写真を引き出しに仕舞ったのである。
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