第四十一話
「消火急げッ!!」
「零戦隊は何をしていたんだッ!!」
空母日進では必死の消火活動中だった。
日進は爆撃を余裕で回避をしていたが、雲を利用したドーントレス二機が、日進の隙をついて急降下爆撃を敢行した。
結果、日進は四百五十キロ爆弾二発が前部飛行甲板と後部飛行甲板に命中し、両飛行甲板は衝撃で捲れ上がっていた。
「しっかりしろ青木ッ!!」
前部飛行甲板の端の方で、古参である町田水兵長が新兵の青木二等水兵を抱き抱えていた。
「……ま…町田水兵長……」
青木二等水兵は右腕をあらぬ方向に曲げ、右腹に爆弾の破片が貫通、口からは血がぶくぶくと吹き出してしていた。
「しっかりしろ青木。傷は浅い」
町田水兵長は青木二等水兵に言う。
「……目が……霞んで……」
「何も喋るなッ!!」
青木二等水兵の言葉に町田はそう言った。
腹から腸を露出した青木二等水兵の命は消えようとしていた。
「おかあ……さん」
青木二等水兵はそう呟いて絶命した。
「青木ィッ!!」
町田水兵長の叫びが声が廊下に響いた。
米攻撃隊の戦果は空母千歳に爆弾二発を命中させて中破させただけだった。
翔鶴には爆弾どころかドーントレスが来なかった。
「……乗り切ったようだな」
翔鶴の艦橋で状況を見ていた山口多聞はそう呟いた。
「長官。第一次攻撃隊より入電です。スコールで敵空母の撃沈を逃したようです。代わりに重巡一、駆逐艦四隻を撃沈しました」
「むぅ、スコールか。それはやむを得ないな」
山口長官は悔しそうに言う。
「ですが、空母レキシントンには多数の爆弾が命中したようですので、ミッドウェーでは出てこないのではないですか?」
奥宮航空参謀は山口長官に尋ねた。
「いや分からんぞ奥宮。楠木君によれば、史実の珊瑚海戦で損傷したヨークタウンを僅かな日数で飛行甲板を直したらしい。……もしかしたら出てくるかもしれない」
既に聯合艦隊司令部や軍令部はミッドウェー作戦を了承して、艦艇の補給や修理をしていた。
「米海軍との第一次の決着をつけるのはミッドウェーだッ!!」
聯合艦隊司令部や軍令部はそう判断していた。
「申し訳ありません。少し楽観していたようです」
奥宮航空参謀は山口長官に頭を下げる。
「なに、仕方ない事だ」
山口長官はそう言って、視線を飛行甲板に向けた。
飛行甲板には空戦を終えた将樹の零戦が着艦をしていた。
「それでは第二次攻撃隊は帰還中ですか?」
「あぁ。スコールで敵空母が見えないから、爆弾と魚雷を投棄して帰還中だ」
将樹の言葉に奥宮航空参謀が答える。
「………引き分けと考えるべきかね?」
山口長官は将樹に尋ねた。
「………まだヨークタウンが無傷なので探しだして叩くべきだと思いますが、こう雲が多くては………」
第二機動艦隊の上空は雲で覆われていた。
「………とりあえずは敵空母を探す。奥宮、ショートランド島にいる水上機部隊も索敵に加わるように伝えろ」
「分かりました」
ショートランド島には第二十五航空戦隊の水上機基地が設けられていた。
「敵空母を探せッ!!」
それから二日間、第二機動艦隊は米機動部隊を捜索した。
――旗艦翔鶴――
「米機動部隊が逃げただと?」
「はい」
奥宮航空参謀からの報告に伊崎参謀長は驚いた。
「米機動部隊を発見したのはショートランド島の二式大艇からなんですが、発見した地点はインディスペンサブル諸島の沖合いで、進路はニューカレドニアに向かっています」
「……偽装ではないのか?」
「二式大艇からの報告では、米機動部隊は全速でニューカレドニアに向かっているらしいです」
「……長官、どうしますか?」
将樹は山口長官に尋ねた。
「……我々の目的はポートモレスビーの攻略だ。米機動部隊が逃げたのならこの戦は我々の勝ちだ」
山口長官の言葉が艦橋に響き渡る。
「索敵機は直ちに帰還せよ。楠木君、このままポートモレスビーへ進んだ方がいいかね?」
山口長官は将樹に聞いた。
「………オーストラリアのタウンズヴィルやケアンズを偵察しましょう。もしかしたら米軍の航空基地があるかもしれません」
「……分かった。奥宮、直ちに偵察機を出せ」
そして第二航空艦隊から新たな偵察機が発艦した。
行き先はタウンズヴィルとケアンズである。
そして偵察機はそれを発見したのである。
「見ろッ!! 敵の航空基地だッ!!」
彩雲に乗るパイロットはタウンズヴィルへの偵察で敵航空基地を発見した。
第二機動艦隊に彩雲は四機しかないが、四機ともタウンズヴィル、ケアンズへの偵察を出していた。
「写真に納めとけよ」
「分かってますよ」
パイロットの言葉に偵察員が呟く。
偵察員は写真器を持つと写真を撮り始めた。
「後方から敵機ッ!!」
その時、機銃手が叫んだ。
「逃げるぞッ!! 写真は撮ったか?」
「もうちょいです」
「くそ、少しだけ速度を出す」
彩雲は五百八十キロまで出して追ってくるP-40戦闘機を引き離していく。
「撮れましたッ!!」
偵察員が叫ぶ。
「よし、なら帰るぞ」
彩雲は翼を翻して悠々と第二機動艦隊へ帰還したのであった。
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