第三十九話
祥鳳は直ぐに応急隊が消火活動をしていた。
「散水器を出せッ!!」
「はいッ!!」
祥鳳応急長の言葉に、応急隊員がバルブを開ける。
ザアァァァッ!!
炎上していた前部飛行甲板の格納庫に、散水器が水を撒き散らしていく。
これは将樹の意見によって作られた一式散水器である。
まぁ、よーするにスプリンクラーである。
使用するのは真水か、雨で蓄えた雨水である。
今のところ、一式散水器が配備されているのは戦艦と空母のみである。
それ以外はホースでの消火活動だった。
さて、飛行甲板の状況であるが、中部飛行甲板は爆弾の衝撃で吹き上がり、損傷は大きかった。
幸いにも、消火活動は順調だった。
史実に比べたらマシな方ではあるが。
「祥鳳に被害の状況を知らせろ」
井上は指示を出す。
既に敵攻撃隊はいなかった。
そして五分が過ぎた時、祥鳳から発光信号が来た。
「祥鳳から発光信号です。爆弾の命中は一発、至近弾二発です。応急修理をしていますが発艦は恐らく不能です。が、着艦は可能なようです」
参謀が井上に報告する。
「………となると、瑞鳳だけで踏ん張らねばならないか………」
南雲はそう呟いた。
「ですが、瑞鳳にはカタパルトがあるので何とかいけるでしょう」
この時、祥鳳と瑞鳳には試験的に新しく開発された油圧カタパルトが埋め込み式で設置されていた。
先程の、残りの三六機も発艦出来たのは油圧カタパルトのおかげだった。
しかし祥鳳の油圧カタパルトは爆弾の影響で破壊されて使用不可能だった。
「………取りあえずは乗り切ったか。頼むぞ山口」
前方の海面を見つめながら井上はそう言った。
一方、第二機動艦隊から発艦した第一次攻撃隊は米機動部隊を発見した。
「全軍突撃準備ッ!! あッ!?」
高橋はそう言うが、思わず叫んだ。
「どうしたんですか隊長?」
後ろにいた偵察員が高橋に聞いた。
「………チ、スコールだ。敵機動部隊の前方にスコールがいる」
高橋は思わず舌打ちをした。
「間に合うかは分からんが、全軍突撃せよッ!! それと機動艦隊に打電しろ」
高橋の命令を聞いた偵察員は直ぐにト連送を打ち、また第二機動艦隊宛の文を打った。
「行くぞォッ!!」
九九式艦爆隊は敵機動部隊上空に到達すると一斉に急降下を開始した。
―――第二機動艦隊旗艦翔鶴―――
「……本当に乗る気かね楠木君?」
「はい、発着艦の訓練は戦前の時にしていたので大丈夫です」
飛行服に着替えた将樹に山口長官は心配そうに言う。
「うむ、それなら構わないんだが……」
「未来を知る貴様には死んでほしくないからな」
伊崎参謀長が言う。
「無茶はしません。それに列機にはクロエがいますし」
「大丈夫ですよ山口長官。将樹は私がしっかりとお守りをしますので」
クロエはアハハと笑う。
「……俺は子どもなんか?」
「目をつけられた問題児じゃないかしら?」
『アッハハハッ!!』
クロエの言葉に艦橋にいた全員が笑う。
「………皆が俺を苛めてるぅ………」
将樹は床に『の』の字を書きながらブツブツ言っている。
『ウウゥゥゥゥゥーーーッ!!』
その時、空襲警報のサイレンが鳴った。
「回せ回せェッ!!」
その瞬間、将樹達は叫びながら艦橋をかけ降りて飛行甲板で既に待機していた零戦に走って乗り込む。
既に試運転を済ましていた零戦は一発でエンジンが掛かった。
将樹は準備完了してから発着指揮官に合図を送る。
発着艦指揮官は青い旗を振った。
そして将樹が乗る零戦はチョークが取られて零戦は飛行甲板を蹴って大空へと舞い上がる。
五隻の空母からも零戦が発艦していく。
零戦が発艦する理由は勿論敵機動艦隊からの攻撃隊が接近しているからである。
高橋少佐がト連送と同時に送った電文は敵の攻撃隊が第二機動艦隊へと向かっていくのを報告したのである。
高橋少佐からの電文を受け取った第二機動艦隊は直ちに上空警戒機の零戦を増やした。
将樹達が発艦する前に上空にいた零戦は二七機。
そして電探で発見した敵攻撃隊の第一迎撃隊として向かわせたのだ。
それと本来なら将樹とクロエは迎撃の任務は入らないのだが、二人の零戦パイロットが高熱と階段を踏み外して怪我をしてしまった。
この予備員として将樹とクロエが立候補したのである。
迎撃は一機でも多くあればいい。
将樹はそう思った。
山口長官達は難色を示したが、一応は実践(ノモンハンと東京空襲)を経験しているので無茶な事はしない事を約束に迎撃隊に加わったのである。
「さて、編隊を組んでいくか」
将樹ら第二迎撃隊は編隊を組む。
将樹の後方にはクロエが付く。
だが、敵攻撃隊はまだ七十キロ以上離れていた。
どうやって探知したのかというと、史実で活躍した三式一号電波探信儀三型を金剛、榛名、翔鶴、瑞鶴、蒼鶴に搭載していたのである。
この世界での呼称は零式一号電波探信儀三型である。
既に電探はこの零式一号電波探信儀三型で統一化する事が大本営で決定されて増産がされていた。
それは兎も角、敵攻撃隊を距離百五十キロの地点で探知出来たので十分な零戦が発艦する事が出来たのである。
第二迎撃隊の零戦は四五機だった。
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