第十三話
――1940年三月十五日、東京――
「ソ連は冬戦争を終わらせたが、フィンランドに対する武器輸出は続けるのかね?」
料亭に集まった会合で東條が司会役の将樹に聞いた。
「続けるべきだと思います。まだ三八式野砲は改造型をも含めてまだありますからね」
将樹はそう言う。
日本はフィンランドに対して三八式野砲やその改造型、三八式歩兵銃、九六式艦上戦闘機、九七式戦闘機を格安で売却していた。
それらを積んだ輸送船はフィンランドに陸揚げして今度はドイツに向かい、ドイツから輸入する工作精密機械を受け取って日本に帰港している。
「九五式軽戦車改も売却しませんか? 既に九五式軽戦車改の後継車も開発中ですし」
九五式軽戦車改の後継車は史実の四十七ミリ戦車砲を搭載し、装甲は五五ミリ、速度は五十キロにした新型軽戦車を開発していた。
既に試作車が作られて、実験の最中である。
またエンジン開発のためにドイツから技師を派遣してもらい指導してもらっていた。
日本はドイツと1940年の一月に日独技術交換協定が結ばれており、ドイツから技師が各工場に来たりしていた。
「確かに……だがまだ新型軽戦車が制式採用されていないから少量ずつ売却するしかないだろう」
杉山がそう言った。
「それなら仕方ないですね。国内のインフラはどうですか?」
将樹は阿部内閣の商工大臣の伍堂卓雄に聞いた。
「東京〜大阪間の高速道路及び新幹線を建築しているが中々進まないな。高速道路は東京だけではなく、大阪からも作っているが時間が掛かる。今は東京〜横須賀間の高速道路を優先的に建築している」
物資の輸送を早くするために高速道路を建築しているが、中々進まないのである。
「高速道路建築に八九式中戦車の車体に鉄板を付けたブルドーザーはどうしたんですか?」
将樹は高速道路を作る前に早く開通するように中島元大臣に具申していた。
将樹の言葉を聞いた東條、杉山、伏見宮は申し訳なさそうにした。
「……済まない楠木君。実はブルドーザーは航空基地の拡張や工場、ドックの拡張で引っ張りだこにしているんだよ」
伏見宮が済まなさそうに言う。
「……それは仕方ないですね。なら九五式軽戦車の武装を外して鉄板を付けましょう。九五式軽戦車改ではなくて九五式軽戦車の方です」
九五式軽戦車改はフィンランドに輸出するが九五式軽戦車はまだ多数あったのだ。
「……それしかないだろう。直ぐに取り掛かるよう要請しておこう」
後に九五式軽戦車と八九式中戦車の車体は43年までブルドーザーのために製造されるのであった。
「最後に海軍ですが……大和型はどうなってますか?」
「……五一サンチ砲の生産の目処は既にたっている。大和と武蔵も艦の全長も延ばしている……しかし大和型を本当に公表するのかね?」
伏見宮は将樹にそう聞いた。
「はい、ただし真実は言いません。主砲は四六サンチ砲にしてアメリカを撹乱します」
「……つまり奴等に戦艦を建造させて空母の建造を遅れさせるわけだな?」
将樹の意図に気付いた山本長官が言う。
「正解です。今のアメリカは未だに大艦巨砲主義が大多数を占めるので大和型を公表すればショックを受けるでしょう。そして大和型を上回る戦艦を建造しようと思います」
「……中々の良案だな。宮様、どうでしょうか?」
山本長官が伏見宮に訊ねた。
「……やってみる価値はあるだろう。やってみるのだ」
伏見宮は許可を出した。
「ありがとうございます」
将樹は頭を下げた。
「新型戦闘機の開発はどうなっているのかね?」
「十二試艦戦は既に金星エンジンを搭載して試験飛行をしています。早ければ今年の六月には制式採用されます」
山本長官が十二試艦戦のデータを見せた。
「金星エンジンで推力式排気管を採用して、最大速度は五七三キロを出している。武器は機首には一式十二・七ミリ固定機関砲を元にした零式十二.七ミリ機関銃二門と主翼に九九式二〇ミリ二号機銃四型を二門搭載しているか……」
データを見た伏見宮が声に出して言う。
「零式十二.七ミリ機関銃にはマ弾も装備してますね」
将樹はデータを見て頷いた。
「生産も大量生産しやすいように陸海共同で使用する事が決まった。他にも局地戦闘機も陸軍が開発中の戦闘機に決まった」
この局地戦闘機は後の鍾馗である。
「あ、それとマリアナやトラック方面の陣地構築は進んでいますか?」
将樹は山本長官に聞いた。
「あぁ、既に構築は始めている。史実のマリアナみたいにしたくはないからな」
山本長官はそう言った。
マリアナ諸島やトラック諸島の島々は陣地構築に勤しんでいた。
「山本君、なるべく米軍に気付かれないように頼む。奴等が気付いたら何をするか分からんからな」
「分かっております」
伏見宮の言葉に山本長官は頷いた。
「ところで……海軍に特別入隊したヘルミンク少尉はどうなっているかね?」
『………』
杉山の言葉に伏見宮達は視線をずらして将樹を見た。
「……まぁ一応履歴通りのクラッシャーにはなっていませんが……よく軍服をはだけて彷徨いています……」
「……海軍は何をしているんだ……」
東條は溜め息を吐いた。
「ですがヘルミンク少尉の腕は一流です。先日もベテランパイロットが乗る二機の九六式艦上戦闘機を相手に勝ちましたから」
将樹はヘルミンク少尉を擁護する。
「……まぁいいだろう」
杉山はそう言った。
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