第百二十九話
「沿岸付近の対空レーダー基地は壊滅ッ!! 同じく沿岸砲台もですッ!!」
「南部の航空機工場がジャップの爆撃で破壊されていますッ!! それに奴らは大砲を爆撃機に搭載して地上を砲撃していますッ!!」
「……なんて事だ……」
空軍司令部はあまりの被害に頭を抱えた。特に航空機工場が爆撃されているのが悩みの種である。
「……ジェリーは前回の戦訓を活かしているようだな」
「司令官、ドイツ軍の戦闘機が多すぎて補充が追いつかないようです」
「……我々の周りには味方はいないようだ。神も我々を見捨てるようだな」
『………』
空軍司令官の言葉に司令部にいた者は何も言わなかった。不謹慎だとは思えなかった。
「……このままでは五日で本土防空隊は全滅するだろうな」
空軍司令官はそう呟いた。一方、チャーチルも被害の大きさに頭を抱えていた。
「……沿岸地域と工場地域、空軍基地を集中的に叩いてきたか……」
ロンドンへの被害は皆無であったが、その代償として本土防空隊の半数が撃墜されていた。
「このままでは……」
チャーチルは名案が浮かばなかった。最終手段はあった。だがそれを選択すれば大英帝国は列強から転がり落ちる可能性が十分にあった。
結局、チャーチルはそれを選ばず二、三日が経過した。本土防空隊は来襲してくる三国爆撃隊の迎撃に当たったが護衛戦闘機に阻まれて爆撃機を撃墜する事が出来ず逆に撃墜されていた。
本土防空隊の無能ぶりに国民は次第にドイツとの和平が出てきてしまいにはデモにまでなってきた。
初日の爆撃から五日後、イギリス空軍の戦闘機の補充はほぼ出来なくなり各地の航空基地では破損した戦闘機を分解して他の機体に修繕する共食いまでもが始まった。
此処に至って国民の不満が爆発。これを見た野党はチャーチルの退陣要求を行った。
これによって遂にチャーチルはドイツとの和平停戦を決意する事になった。チャーチルは停戦をドイツ側に伝えた後に退陣をして総辞職となったがこの間の爆撃は行われてはいない。
イギリスでチャーチルの退陣要求が出ている事を掴んだヒトラーがあえて爆撃を中止して出方を見ていたのだ。
なお、角田中将の第三機動部隊は初日の爆撃で沿岸地域を爆撃した後にドーバー海峡を突破して北海に出てイギリス海軍の本国艦隊を押さえていたのだ。
チャーチルの後に首相となったのはアンソニー・イーデンだった。
「……今回の和平停戦は、ほぼ我々の負けだ」
集まった大臣達の前でイーデンは開口一番にそう言った。大臣達は反論しない。それは皆も分かっていた。
「今は耐える時だ」
イーデンはそう言った。不思議とイーデンの言葉は重みがあった。
「ナチスは何時か崩れる。その時まで耐えるのだ。チャーチルはスケープゴートにされたのだよ」
皆は頷いた。
「ではドイツとの停戦交渉に入ろう。カニンガム、予想としてドイツは我々から海軍力を奪う可能性があると?」
「それは百%でしょう。建造費を安く押さえて我々から空母の半分は持っていくでしょう」
海軍代表としてアンドリュー・カニンガム提督がそう発言した。
「……それくらいが予想されるな。島国の我々からしては痛い損失だな」
「量ではなく質で対応するかもしれません」
「空母が残ったとしても艦載機だな。流石に複葉機の運用は勘弁だな」
「……あくまで手段ですが、日本と和平後にケイト(九七式艦攻)を輸出してもらって雷撃機を揃える案もあります」
「……それは日本との和平交渉後だな。今はドイツとの停戦交渉だ」
イーデンはそう言った。そして1945年七月一日、フランスのパリにてイギリスとドイツの停戦交渉が行われた。
ヒトラーはイギリスに対してヴィシーフランス政府の正当認証、中東等の利権を全てドイツに譲る事、インプラカブル級空母と建造中のオーディシャス級空母(建造費用等は全てイギリス持ち)の計四隻をドイツに譲る事等を主張した。
対するイーデンも予め予想されていたので二つ返事で頷いた。ヒトラーも分かっていたようで停戦交渉は約一時間で終了した。
なお、賠償金は請求しなかった。中東等の利権を手に入れ、中東の一部を直接占領していたのでそれで良しとしたのだ。
それから六日後の七月七日、イギリスは日本と和平交渉をした。
イギリス側はイーデン首相が、対する日本側は山本首相がベルサイユ宮殿にて交渉を行った。
日本側は賠償金の請求せず、アジアの植民地とその利権の放棄を要求。
イギリス側もドイツ同様に二つ返事で頷いた。そしてイギリスは日本に対して九七式艦攻の輸出を求めた。
この求めに山本は驚いたが、ドイツ側の出席者は予めドイツ側とも話し合われていたので問題はないと山本に言ってので山本も輸出を了承した。
後に輸出された九七式艦攻はエンジンをマーリンエンジンに取り換えたりしてイギリス軍の改造度が上がったりする。
そして和平交渉が成立してから五日後、今度はアメリカが動いたのである。
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