第百二十八話
日曜に完結する予定です。
「何としても迎撃体勢を整えるのだッ!!」
ヒトラーからの演説からチャーチルは連日、空軍にそう叫んでいた。
「戦闘機も足りない、パイロットも足りない……これでどうしろと言うんだ……」
空軍司令部の参謀がポツリと呟いた。本土防衛のために戦闘機は揃いつつあったがドイツ空軍に比べたら少なかった。
「ゲーリング、今回は戦略爆撃に切り替えろ。前回のような都市部への爆撃はするだけで無駄だ」
「ハ、ハイルヒトラーッ!!」
ヒトラーからの厳命に空軍総司令官であるゲーリングは渋々ながら頷いた。ドイツ空軍はエースパイロットであるエーリッヒ・ハルトマン少佐やゲルハルト・バルクホルン少佐、ギュンター・ラル少佐、ハインツ・ベーア少佐、ハンス・マルセイユ少佐、アドルフ・ガーランド少将等、可能な限りのエースパイロットをイギリス爆撃のために集めた。(なお、爆撃機としてルーデルも呼ばれた)
協力するイタリア空軍もフランコ・ルッキーニ少佐等二百機の戦闘機をドイツに派遣した。
そして日本はというと、主な派遣は第三機動部隊であるが、基地航空部隊として陸海からエースパイロットを派遣。
陸軍からは加藤建夫大佐、檜少佐、黒江少佐、岩橋、穴吹、若松、南郷、小林、樫出が招集され、海軍からは岩本大尉、西澤大尉、坂井大尉、杉田、笹井中佐、管野、武藤、赤松、谷水、小町等のエースパイロットが派遣された。
使用する戦闘機は海軍の烈風九十機であり、爆撃機は三式襲撃機靖国一型と二型合わせて八四機である。
日本はこの派遣部隊を第一航空隊として向かわせたのである。
そしてアメリカはこのような状況を静観していた。まさに我、関せずである。
「そんな事より南米の足固めが優先だ」
ウォレスはそう言って引き続き南米への工作を指示した。関係者達は本土が荒らされるイギリスを思い浮かべながら静かに合掌したのであった。
一方、イギリス国民も不安に駆られていた。このままではイギリス本土は三国の航空部隊によって蹂躙される危険がある。
人々はチャーチル内閣に対して和平すべきだと言う声を徐々に上げていた。それに対してチャーチルはラジオを通して「イギリスはドイツの脅しなどに屈しはしない。むしろドイツはイギリス国民の不安を逆手にとって有利にしようとしているのだッ!!」と抗戦を呼び掛けた。
日本の派遣部隊はシンガポールで輸送船団が集結してから出発した。
「全く……面倒な事になったものだな」
「ですが隊長、ヨーロッパの空で暴れますよ」
輸送船の中で加藤大佐が呟くのを檜少佐がそう答えた。
「だが、それを持っていくのに一苦労するのだぞ?」
「それはそうですけど……」
笹井中佐の言葉に檜少佐は口をつぐむ。今回の派遣で整備兵等やガソリン、機銃弾も入れて輸送船団は高速輸送船が十四隻も集められたのだ。
「ま、これで終わりならいいじゃないですか。アメリカが反撃して来ないのも停戦を探っている状態だと言う噂もありますし」
管野大尉はそう言った。
「……そうであればいいんだがな……」
加藤大佐はそう呟いたのであった。
そして期日の六月一日となった。三国の航空部隊はフランスの各航空基地に駐屯していた。
「ドイツ軍から電文ですッ!! 攻撃隊を発進させよですッ!!」
「……よし、全機発進せよッ!!」
遣独第一航空隊司令官には草鹿任一中将が指揮していた。そして参謀長には山田定一中将が、参謀には小園大佐が就任している。
戦闘機の烈風から次々と発進していき手透きの整備員達は帽を振れをして攻撃隊の見送りをしている。更には近くの町の住民達も手を振っていた。
彼等はフランス人であり、最初に遣独航空隊が来た時は歓迎はしなかった。しかし、少しずつであるが交流を重ねていくと日本人への差別が無くなっていったのである。
「三国の攻撃隊が来るぞッ!!」
「回せ回せェッ!!」
海岸に設置された対空レーダーからもたらされた空軍基地は急いで迎撃隊を発進させていく。
機種のその多くはスピットファイヤーであるがハリケーンも多数混じっている。
「何としても奴等を叩き落とせェッ!!」
スピットファイヤー隊を率いる隊長は無線に向かって叫んだ。
その頃、角田中将の第三機動部隊は停泊していたブレストを出撃して攻撃隊を発艦させていた。
角田機動部隊はイギリスの海岸付近にあるレーダー施設と南部の港施設を爆撃する予定である。
「まさかヨーロッパまで来て航空戦をするとはな……」
「まぁ欧州戦の戦訓になりますからいい機会ではないですか」
「それもそうだな」
角田中将と大林参謀長はそのような事を話していた。そしてイギリス上空では猛烈な空戦が展開していた。
「三機目ェッ!!」
杉田飛曹長がハリケーンを撃ち落とした。彼の周囲にいる戦闘機は今のところ日の丸を付けた戦闘機が飛行している。
『靖国が爆撃を開始する。全機護衛せよ』
加藤大佐がそう指示を出した。靖国の部隊は爆撃進路に入っていた。
靖国の攻撃目標は航空機工場である。
「投下ァッ!!」
靖国の爆弾倉から次々と六十キロ爆弾が投下されていき、航空機工場を破壊していくのであった。
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