第百十九話
――オアフ島、聯合艦隊旗艦敷島――
「……長官、如何致しますか?」
通信紙を持ってきた通信参謀が堀長官に聞いた。
「……ロスアラモスに約三百機あまりの戦闘機か……いくら富嶽でもそれを突破して研究所を破壊するのは不可能に近いだろうな。特攻隊で無い限りな……」
「……では?」
「……不本意であるが仕方なかろう」
堀長官は椅子から立ち上がる。
「……全艦隊と富嶽隊に打電せよ。作戦は中止、直ちにハワイに帰還せよと伝えろ」
「……分かりました」
通信参謀は堀長官に頭を下げて退出した。
「……何たる事だッ!!」
バァンッ!! と堀長官は机を叩いた。
「……これが……これが定められた歴史だと言うのかッ!!」
堀長官はそう叫んだ。
――第二機動艦隊旗艦翔鶴――
「さ、作戦は中止ッ!?」
「……そうだ」
将樹の叫びに山口長官は頷いた。
「富嶽隊に何かあったのですか?」
「……どうやら強行偵察に向かった彩雲隊が敵戦闘機の迎撃を受けたらしい。彩雲隊がそれを偵察したらロスアラモスには彩雲隊が見つけただけで五ヶ所の滑走路があった」
「……予め備えていたというわけですか?」
「恐らくそうであろうな」
将樹の言葉に山口長官は頷いた。
「それにより堀長官は富嶽隊の危険を危惧して作戦中止を発令したそうだ」
「……悔しいですね」
将樹は右拳を握り締める。
「だがな楠木……シアトルのボーイング社工場は叩けたのだ。それに西海岸の軍事施設もだ、作戦の半分は成功したと言っていいだろう」
山口長官はそう言う。
「全艦回頭。真珠湾に帰還する」
第二機動艦隊は回頭して帰還を始めた。
「……無念だ。奴等の研究所を叩けば多くの非戦闘員の命が救われると言うのに……」
桐野少佐は残念そうに言う。
「なに、また次があるよ」
将樹はそう言って西海岸の方向を見つめた。
「待っておくおけよな。次こそは必ず殲滅させてやる……原爆も日本に落とさせてたまるか」
将樹は米本土に向かってそう誓ったのであった。
そして全ての艦隊はハワイへと向かった。
――ホワイトハウス――
「何ッ!? ジャップがサンディエゴとサンフランシスコとその金門橋を攻撃しているだとッ!!」
報告を聞いたルーズベルトは信じられない表情をしている。
「……奴等は……奴等はサタンの使いなのだろうか……くッ!!」
ルーズベルトは近頃痛み出した左胸を押さえる。ルーズベルトの疲労は既に限界を超えて溢れそうだった。
「た、大変ですプレジデントッ!! シアトルのボーイング社工場がジャップの爆撃を受けて工場は壊滅しましたッ!!」
「何ッ!?」
部下からの報告にルーズベルトは驚く。
「……まさか奴等の本命はシアトルとロスアラモスかッ!!」
そのための布石としてサンディエゴとサンフランシスコを陽動として爆撃したとルーズベルトは考えた。
「それでB-29は?」
「は、生産していたB-29は全て破壊され灰塵化となりました。工場の復旧は約一年後になるかと……」
「……何てことだ」
ルーズベルトはぐったりと椅子に座り込む。ルーズベルトの表情は既に暗くなっており冷や汗も出ており弱りきっていた。
「ですが、オザワとオオニシの機動艦隊は壊滅的状況です。これは痛み分けと言っていいかと……」
「馬鹿者ッ!! ボーイングの工場を破壊された時点で痛み分けではないッ!! これではジャップの地を焦土化する事が遅くなるのだぞッ!!」
部下の言葉にルーズベルトは吠える。
「…… まさかロスアラモスは既に……」
「大変ですプレジデントッ!! ロスアラモスが……」
そこへまた新たな部下が駆け込んできた。
「まさかロスアラモスは……ぐぅッ!?」
その時、ルーズベルトはまた左胸を押さえた。そしてルーズベルトがよろめく。
「プレジデントッ!?」
ルーズベルトは椅子から落ちた。
「プレジデントッ!!」
部下が慌ててルーズベルトを抱き起こす。
「プレジデントッ!!」
ルーズベルトの右手がゆっくりと床に落ちた。
そして閉じられたルーズベルトの目は再び開く事なかった。
アメリカ合衆国大統領フランクリン・D・ルーズベルトはその生涯を閉じた。
病名は心臓麻痺であった。
――ベルリン、総統官邸――
「何ッ!? アメリカのルーズベルトが死んだだと?」
「は、アメリカに潜入したスパイからの情報です」
ヒトラーの言葉に部下はアメリカの報告をする。
「あの男が死んだなら対米戦も少しは楽になるかもしれんな」
「それとスパイからの情報なんですが……」
「何だ? 申してみろ」
口を閉ざした部下に言う。ヒトラーに急かされた部下は意を決して口を開いた。
「実は……アメリカの西海岸をヤーパンが攻撃したらしいのです。更にパナマ運河も攻撃をして米軍に甚大な被害を与えたようです」
「……何だとぉ?」
ヒトラーの目がギョロリとひんむいたのであった。
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